DEF CON · ラスベガス
DEF CON 35完全ガイド:日本企業のための参加判断
Last updated: August 6, 2026
DEF CON 35は、2027年8月5日(木)〜8日(日)に、ラスベガスのLas Vegas Convention Centerで開催される世界最大級のハッカーカンファレンスです。結論から言えば、セキュリティエンジニア、研究者、CTFプレイヤーを送る企業には投資に見合う場であり、商談相手を探す営業・事業開発の担当者には向きません。展示会ではないからです。スポンサーは1社もなく、来場者名簿も存在せず、バッジは当日に米ドル現金で買うのが伝統です。この記事では、費用と現金の準備、Villageという独特の構造、撮影とGoonの規則、入国審査で実際に起きたこと、そして日本チームのCTF実績まで、判断に必要な材料を提示します。
2.5〜3万人
参加者(推定)
30以上
Village数(2025年)
$520
当日現金(2026年)
0社
スポンサー数
DEF CONとは何のカンファレンスか
DEF CONは、1993年から毎年ラスベガスで開かれている、ハッカーのための参加型カンファレンスです。業界団体の展示会でもなく、ベンダーのユーザーカンファレンスでもありません。この違いが、費用から撮影規則まですべてを説明します。
出発点からして商業イベントではありませんでした。創設者のJeff Moss氏は公式FAQで、カナダのBBSネットワーク「Platinum Net」が閉鎖されるにあたっての解散パーティーとして企画したものの、主催者が先にいなくなってしまい、自分が参加していた他のネットワークの面々も呼ぶことにした、と説明しています。名称も同じ調子で、電話のダイヤルで3にあたる「DEF」と、軍事用語のDefense Condition、そして映画『ウォー・ゲーム』でラスベガスが核攻撃の標的に選ばれたことを掛けたものです。
規模は年間2.5万〜3万人ですが、体感は数字から想像するものと違います。DEF CON 32に参加したNFLabs.の報告が、日本の読者にとって最も効率のよい説明です。
会場の雰囲気は、日本のコミックマーケットやデザインフェスタに近いです。
(NFLabs.、DEF CON 32およびBSides Las Vegas参加レポート、2024年9月19日)
同じ週に開かれるRSA ConferenceやBlack Hat USAとの違いも、日本企業の手による記録があります。DEF CON 33に参加したNRIセキュアテクノロジーズとNDIASは、こう書いています。
大規模な企業ブースや研究結果等のしっかりとした講演があるRSA ConferenceやBlack Hatと比較すると、カジュアルなお祭り感が強いイベントになっています。
DEF CON自身は、来場者に対して期待する姿勢をもっと直截に述べています。
DEF CON is not a spectator sport!
観客として眺める場ではなく、自分で手を動かす場です。DEF CONは自らそう宣言しています。この一文を額面どおりに受け取れる人材を送れるかどうかが、参加判断の実質です。
いつ・どこで開催され、8月のラスベガスはどれほど暑いのか
2027年8月5日(木)〜8日(日)の4日間、Las Vegas Convention Centerで開催されます。日程と会場はDEF CONが2025年10月29日に公式サイトで発表済みで、2026年と2027年の2年分がまとめて告知されました。
Please join us at the Las Vegas Convention Center August 6-9 in 2026 and August 5-8 in 2027. Save the dates, friends.
木曜から日曜という並びですが、4日間が均等ではありません。公式のVillage FAQは、Villageの営業時間を金曜・土曜10:00〜18:00、日曜10:00〜15:00と定めています。つまり木曜は本格的な内容の日ではなく、日曜は15:00で終わります。日曜午後の帰国便を取っても失うものはほとんどありませんが、木曜の朝に着いても会場は静かなままです。
移動については、東京からラスベガスへの直行便がありません。2022年に単独で参加した日本人参加者は、サンフランシスコまで約11時間飛び、そこから国内線で乗り継いでいます。ロサンゼルスやシアトル経由も同様で、いずれにせよ乗り継ぎ1回を前提に予定を組んでください。
暑さは、日本の猛暑の延長線上で考えると誤ります。米国気象局ラスベガス支所が公表しているハリー・リード国際空港の1991〜2020年平年値は、DEF CON 35の会期と完全に重なる日付について次のとおりです。
| 日付 | 平年最高 | 平年最低 | 記録最高 |
|---|---|---|---|
| 8月5日 | 40.0°C | 27.8°C | 45.0°C |
| 8月6日 | 40.0°C | 27.8°C | 45.6°C |
| 8月7日 | 40.0°C | 27.8°C | 43.9°C |
| 8月8日 | 40.0°C | 27.8°C | 45.6°C |
読み取るべき点は2つあります。40.0°Cは異常値ではなく平年値であること。そして最低気温が27.8°Cなので、夜になっても気温が下がらないことです。22時に外へ出ても熱帯夜のままです。屋内は強く冷房が効いているため、実際に体を痛めるのは会場とホテルの間の移動と、屋外に伸びる列です。
See itineraries誰が主催しているのか
主催はDEF CON Communications, Inc.、率いるのは創設者のJeff Moss氏(通称The Dark Tangent、DT)です。同氏はBlack Hatの創設者でもあり、DEF CON 31の開会式にも本人が立っています。
運営構造で決定的に重要なのは、資金の出どころです。DEF CONはスポンサーを取りません。公式FAQの記述は、日本企業が想定する「協賛」の枠組みを最初から否定しています。
DEF CON charges one price regardless of your social status or affiliation. Please know that we depend on attendee income to pay the costs of the conference and don't have sponsors to help defray the expenses.
参加費だけで運営費を賄っている、という一文が、このイベントの性格をほぼすべて説明します。当社が調査した米国のカンファレンスはすべてスポンサー収入に支えられていますが、DEF CONだけは違います。だからこそ、報道機関にも政府機関にも同じ価格を請求し、企業の宣伝を断ることができます。
現場を動かしているのはGoonと呼ばれるボランティアスタッフです。安全管理、登壇者対応、ベンダールーム、ネットワーク運用まで担当します。応募制ではなく、既存のGoonの紹介で信頼の輪として広がってきた組織です。
透明性の水準も、一般的なカンファレンスとは異なります。DEF CON 25以降、会期中に発生した事案の件数を毎年Transparency Reportとして公開しており、そこには自組織のGoonを何人解任したかまで含まれます。加えて、法的手続きに関するWarrant Canary Reportまで公開しています。カンファレンスがカナリア文書を出す必要を感じている、という事実そのものが、この場の性格を示しています。
なお報道関係者も有料です。公式FAQは、青い髪の参加者を映す2分間の企画を考えている大手ネットワークは応募しなくてよい、と書いています。広報担当者や撮影クルーの派遣を考えている場合は、まず認められないと想定してください。
バッジはいくらで、なぜ現金なのか
DEF CON 34(2026年)の当日価格は現金で$520でした。DEF CON 35の価格は2026年8月時点で未発表です。値上がりは続いており、DEF CON 31(2023年)の$440から3年で約18%上がっています。2027年の予算は$550〜$600程度を見ておくのが安全です。
| 区分 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 当日・現金(2026年実績) | $520 | 公式サイトのバナー表示 |
| 事前オンライン登録 | $540〜$580 | 決済手数料$20込みの3段階。会期前に締め切られます |
| 割引 | なし | 学生・法人・政府・報道機関のいずれも同額です |
| 8歳未満の子ども | 無料 | 公式FAQ |
| 登壇者・Goon | 無料 | 働く側に回る人だけが免除されます |
事前登録の方が高い、という点は読み違えないでください。手間賃を払って現金の準備と行列を回避する仕組みであり、値引きではありません。公式FAQの価格表は前年のものが残っている可能性が高く、当日現金価格も$500と$520で食い違っています。DEF CON 35の正確な価格は、2027年の公式発表を待つ必要があります。
割引が一切ない理由も、DEF CONは明言しています。
Everyone pays the same: The government, the media, the 'well known hackers', the unknown script kiddies. The only discount is for Goons and speakers, who get to work without paying for the privilege.
現金主義の理由は、偏屈さではなく方針です。 DEF CON 31に参加したNVCのネットワークエバンジェリスト飯田竜司氏の説明が、日本の経理部門に見せるべき一文です。
実はDEF CON自体、どこかの企業や団体が主催している訳ではないのです。運営はボランティアで構成されています。ハッカーの祭典らしく、個人情報や決済情報を持ちたくないというポリシーからDEF CONの参加費用は現金でのみ購入することができます。
(飯田竜司氏、NVC、DEF CON 31参加レポート、2023年8月24日)
現金が必要なのはバッジだけではありません。DEF CON 33に参加したNRIセキュアとNDIASの報告によれば、物販も同様です。公式アプリHacker Trackerで在庫を確認し、列に並びながら商品を選んでQRコードを自分で生成し、売り場で提示するところまでは洗練された仕組みですが、支払いは現金です。
ただし、支払いは現金のみなので、その点には注意が必要です。
出張者1人あたり、バッジ代に加えて物販とチップ用の余裕を見て、$700〜$800程度の米ドル現金を持たせる想定になります。日本の法人カードはこの場面では役に立ちません。経費精算については、DEF CONが現金領収書のPDFを公式サイトで配布しているので、渡航前に社内の精算フローと突き合わせておいてください。
そして当日券には、価格以外のコストがあります。DEF CONは自らそれを機能として宣伝しています。
As always, online registration is not required. The cash-at-the-door price is just $500, and it comes with the bonus of our world-famous LineCon.
LineConはバッジの行列に付いた通称で、それ自体が社交の場になるほど長い、という自虐です。当日券で入る場合は、分単位ではなく時間単位で見積もってください。並ぶのが遅れると実害も出ます。DEF CON 31では、交換が遅れた飯田氏に配られたのはバックアップバッジと呼ばれる簡易版でした。DEF CON 33でも、当日現金で買った参加者は配送遅延のために紙のバッジを受け取っています。電子バッジ自体が目的の1つなら、初日の朝に並ぶ以外の選択肢はありません。
Calculate your costs会場では実際に何が起きるのか
会場の主役はVillageです。Villageは講演トラックでもブースでもなく、テーマ別に独立して運営されるミニカンファレンスで、それぞれが自前のスケジュール、ハンズオン設備、そして多くの場合は自前のCTFを持っています。DEF CON 33(2025年)では30を超えるVillageが開かれました。
DEF CON 33の実測値をNRIセキュアとNDIASの報告から挙げると、メイントラックは5本で100を超えるセッション、これとは別に各Villageが独自のセッションを持ちます。同年はCloud、IoT、Car Hacking、鍵開けを扱うPhysical Security、そして新設のMaritime Hacking(実物の船が展示されました)が並び、AIxCC(AI Cyber Challenge)Villageが2年連続で注目を集めました。
Villageが何であるべきかは、DEF CONが公式に定義しています。
Villages to be open to all attendees, provide hands on content, experiences, and exploration you can't find in a book or a video online.
実際の中身は、この定義どおりです。DEF CON 31では、IPカメラのメモリからハッシュ化されたパスワードを回収し、image.binを書き換えてroot権限を取るところまでを来場者が自分でやる卓が用意されていました。RFIDや無線のハッキング、手錠からの脱出を扱う卓もあり、Car Hacking VillageにはルールのもとでハッキングしてよいTeslaが置かれていました。初心者向けに紙のマニュアルが置かれた一角もあります。
人気の偏りも記録されています。飯田氏はRed Team Villageが入場制限をかけるほど混雑する一方で、Blue Team Villageが目に見えて空いていたことを印象的だったと書いています。防御側の実務者を送るなら、むしろ落ち着いて話ができるということでもあります。
長く続く名物としてWall of Sheepがあります。会場の公開ネットワーク上を平文のまま流れた認証情報を大画面に映し出す展示で、名指しで晒されることが目的ではなく、暗号化されていない通信がどう見えるかを実演する装置です。自社のノートPCの通信がここに映らない状態で会場に入れるかどうかは、渡航前の点検項目になります。
物販は、初日から売り切れが出ます。NRIセキュアの筆者は売り場まで1時間並び、その体験をアトラクション並みと表現しています。列では退屈しのぎにビーチボールが回ってきます。
最高位の栄誉はBlack Badgeです。特定のコンテストの優勝者に贈られ、以後DEF CONに生涯無料で入場できます。金では買えない通貨であり、CTFの優勝者が受け取ることもあります。
DEF CON CTFで日本のチームはどこまで来ているのか
まず用語を分けます。 DEF CONのCTFには、予選を勝ち抜いたチームだけが出場する世界決勝「DEF CON CTF Finals」と、各Villageが独自に運営するVillage CTFの2種類があります。ScanNetSecurityの説明が簡潔です。
CTFは、予選を勝ち抜いてきたチームが出場する決勝戦である「DEF CON CTF Finals」と、テーマごとに分かれたVillageの中で競うものがある。
この2つを混同した紹介は日本語圏に少なくありませんが、当の日本チーム自身が厳密に区別しています。
Finals本体の運営は外部組織に委託されており、その担い手も交代しています。2022年から2025年まではNautilus Instituteが、2026年からはBenevolent Bureau of Birdsが問題作成と運営を担当しています。過去問の傾向を追う場合は、この交代を前提に見る必要があります。
日本勢の歩みは、次のとおりです。
- binja がDEF CON 22(2014年)のFinalsに出場し、24チーム中8位。
- TokyoWesterns が2019年のFinalsに出場し、その年の唯一の日本チームと報じられています。
- Blue Water は国際混成チームで、GMOサイバーセキュリティbyイエラエとGMO Flatt Securityのエンジニアが参加しています。2023年と2025年のFinalsで2位に入り、DEF CON 34(2026年)のFinalsにも出場しました。日本のチームではなく、日本人が中核の一部を担う国際チームである点は、正確に伝える価値があります。
- GMOサイバーセキュリティbyイエラエ は、DEF CON 31(2023年)のVillage CTFでCloud Village CTF 1位、CMD+CTRL Cyber Range CTF 2位を獲得しました。
- cartagaitai(NDIAS)は、2025年に結成された自動車セキュリティ専門の有志チームで、DEF CON 33のCar Hacking Village CTFが初の対外戦でした。
GMOイエラエの牧田氏による総括が、この10年の変化を最もよく表しています。
10年ほど前は「DEF CON」で日本のチームが優勝することなんてほとんどなかったですし。今回はもっとも難易度の高い、いわゆる"本戦"ではなくVillageと呼ばれるカテゴリー内での優勝ですが、それでも今回1位と2位を獲れたのはすごく大きな意義がありますし、すごくうれしかったですね。
(GMOサイバーセキュリティbyイエラエ、DEF CON 31出場インタビュー、2024年1月24日)
当人たちは、これが本戦ではなくVillageでの優勝であることを明示しています。ここを盛らないことが、この記事の信用に直結します。
なぜ日本の企業がCTFに人と金を出すのか。 同じインタビューに、稟議で通る形の理由が入っています。コロナ禍で大会に出られなくなり、営業資料に載せる実績が2019年で止まってしまった。そこで社内でチームを組み、「CTFで勝つ」をその年の会社目標の1つに掲げた、という経緯です。競技結果は営業資料であり、採用広報の材料でもあります。GMOサイバーセキュリティbyイエラエとGMO Flatt Securityは合計200名超のホワイトハッカーを擁し、そこから選抜したチームを送り出しています。
最後に、日本語圏でよく混同される点を整理しておきます。Maple Mallard Magistratesはカナダ(ブリティッシュコロンビア大学系)、dcuaはウクライナ、TWN48は台湾のチームです。 日本のチームとして紹介されている記述を見かけても、そのまま社内資料に転記しないでください。
日本企業はスポンサーや出展ができるのか
DEF CON本体のスポンサーはできません。金額の問題ではなく、そもそも枠が存在しません。 公式のSponsor FAQは、質問に対して次のように答えています。
The short answer is you can't, at least not directly. DEF CON is what you make it, and we want to be made by the attendee community.
日本のB2B企業が米国イベントで通常取る手段、つまりブースを買い、トラックに協賛し、ランヤードにロゴを載せる、という一式は、ここではどれも使えません。
代わりに公式に用意されている経路は4つです。
| 経路 | 内容 |
|---|---|
| Villageを支援する | Villageは独立採算で運営されており、直接の支援を受け付けます |
| コンテストに賞品を出す、コンテストを作る | 年次のCall for Contestsを通じて申請します |
| パーティーを開く | 公認パーティーは全バッジ保持者に開かれている必要があります |
| ベンダーテーブルを申請する | 審査制です。DEF CONは「単なる宣伝ブースは承認しない」と明言しています |
この経路が実際に機能することは、日本企業が証明済みです。NDIAS(NRIセキュア グループ)は2025年のDEF CON 33でCar Hacking Villageにスポンサーとして参加し、自社の教材をもとに車載インフォテインメントを実際にハッキングするワークショップをブースで実施しました。同Villageには6つのブース、CTFエリア、そしてCTFの標的そのものであるRIVIAN車両2台が置かれていました。GMOサイバーセキュリティbyイエラエも、DEF CON 34でAerospace Villageにブースを構えています。
ただし守るべき制約が明確にあります。すべて公式Sponsor FAQに書かれているもので、日本のマーケティング部門が計画を立てる前に読むべき内容です。
- DEF CONのスポンサーであると示唆してはいけません。 公式の例示では「CyberCorp Goat Herder's Meetup at DEF CON」は可、「DEF CON's CyberCorp Goat Herder's Meetup」は不可です。
- 広告は控えめに。 廊下に3.6メートルの垂れ幕を出すような行為を参加者は嫌う、と明記されています。
- Villageの中にブースやテーブルを買うことはできません。 Villageに割り当てられた面積はコンテンツのためのものだからです。
- 内容が営業提案になってはいけません。 売り込みめいた講演を並べれば、そのVillageの評判を危険に晒すことになる、と警告されています。
- 物販にはネバダ州の売上税手続きが必要で、税は会期末に現地で小切手により納付します(現金は不可)。
そして、Villageに関する要件のなかで、日本企業が最も慎重に訳すべき一文がこれです。
Is not a job fair or stealth marketing exercise.
Villageは採用ブースでもステルスマーケティングの場でもない、と定義段階で禁じられています。他の米国カンファレンスでは同等のスペースがまさにその用途で使われることを考えると、ここは発想を切り替える必要があります。
会場で守るべきルールは何か
最も誤解が多いのは撮影です。DEF CONは「撮影禁止」ではありません。 公式の撮影ポリシー(最終更新2026年7月28日)は、もっと細かく条件を定めています。
| 対象 | 可否 |
|---|---|
| 会場、サイネージ、公共の場 | 撮影できます |
| ステージ上の登壇者・出場者 | 撮影できます |
| CTFルーム | 写る本人の同意が必要です |
| 群衆の撮影 | 強く非推奨。撮る場合は事前に周囲へ声をかけ、写りたくない人が避けられるようにします |
| 廊下、列、たむろしている人、無作為の撮影 | 本人の同意なしには許可されません |
運営スタッフは撮影した写真の削除を求めることができます。Villageによっては全体ポリシーより厳しい規則を敷いている場合もあります。
2026年から明文化された新しい禁止事項が1つあり、これは身なりのよい出張者ほど引っかかります。
Meta style glasses with recording capabilities are prohibited at DEF CON. Surreptitious filming is an invasion of privacy, and will be treated as a CoC violation. There is no exception for recording glasses with prescription lenses.
録画機能付きのスマートグラスは、度付きレンズであっても例外なく持ち込めません。視力矯正が必要な方は、録画機能のない眼鏡を必ず用意してください。撮る側の作法についてもDEF CONは指示しており、意図が明確になるようスマートフォンなど誰が見てもわかる機材を使い、フレームに入る顔からは積極的に許可を取るように、としています。帰国後の出張報告書に写真が必要なら、会場サイネージとステージ上の写真だけで構成する前提で計画してください。
行動面で最も重要なルールは、Goonの指示に従うことです。公式FAQは理由まで含めて説明しています。
If any goon tells you to move, please do so immediately as there may be safety issues they are attempting to address.
安全上の問題に対処している可能性があるので、Goonに移動を指示されたら直ちに従う、ということです。交渉の余地はありません。DEF CONはGoonとホテルの警備員が別組織であることも注意しており、ホテル側を怒らせないのが賢明だと付け加えています。
行動規範(Code of Conduct)の立て付けも独特です。過激な意見は歓迎され、高い懐疑心が期待される場である一方、他の参加者への侮辱や嫌がらせは容認されない、と定めています。見た目ではなく、頭の中と振る舞いが問われる、という文言です。
法務面の警告も、DEF CONは冗談めかしつつ本気で書いています。
Please be aware that if you engage in illegal activities there is a large contingency of feds that attend DEF CON.
連邦捜査機関の職員が多数参加しています。冗談で口にしたことが冗談として扱われる保証はありません。
ネットワークについては、「何にも繋ぐな」という日本語圏で広まった助言は正確ではありません。 DEF CONは性格の違う2つのネットワークを運用しています。1つはDEF CON 18以降WPA2で暗号化された保護ネットワークで、認証情報は受付で配布され、運営自身が「我々も自分の携帯を繋ぐ」と書いています。もう1つは伝統的なオープンネットワークで、こちらは何が起きても運営は関知しません。オープン側に繋ぐなら、クリーンな状態でフルパッチのOSを持ち込むこと、というのがDEF CON自身の助言です。保護ネットワークを使う、が正しい運用です。
ただし、警戒の水準は日常業務とは別物です。DEF CON 33のNRIセキュア/NDIASの報告に、注意喚起の文章よりも雄弁な一節があります。会場にはステッカーを貼るボードがあり、そこにはQRコードになったステッカーも混ざっていました。
筆者は怖いので読み込むことはできませんでした。
セキュリティの専門家が、セキュリティカンファレンスの会場で、怖くてQRコードを読み取れない。これが会場の空気です。
安全面のリスク評価が必要な場合、DEF CONは自ら数字を公開しています。DEF CON 33(2025年、4日間)では、警備本部と通報ホットラインの合算で、身体的暴行5件、性的暴行10件、暴言・暴力の予告15件、窃盗3件、医療対応9件、撮影ポリシー違反3件、出入禁止5件が記録されました。2.5万〜3万人が4日間集まる場での絶対数としては小さく、そもそもこの種の数字を公開しているカンファレンスがほとんどありません。DEF CONが他より危険なのではなく、他より情報を出している、というのが正しい読み方です。
日本のCODE BLUEやSECCONと何が違うのか
違いは質ではなく規模と性格です。CODE BLUEは選抜されたカンファレンス、DEF CONはエコシステムです。 両方を経験した日本の研究者の言葉が、最も公平な答えになっています。
CODE BLUEなど他のカンファレンスでもこうしたスペースはありますが、DEF CONでの規模は圧倒的です。
(NRIセキュアテクノロジーズ、DEF CON 33現地レポート、2025年9月24日)
CODE BLUEにもVillageに相当する空間はあります。違うのは密度です。数字で見ると性格の差がはっきりします。CODE BLUE 2025(第13回、本会議11月18日〜19日)は552件のCFP応募から29セッションを採択しており、採択率はおよそ5%です。運営はこれをBlack Hat USA 2025のおよそ8%と対比して説明しています。一方のSECCONは、SECCON Beginners CTF 2025に880チームが参加しています。国内の競技人口も裾野も、決して薄くありません。
年に1回しか海外出張の予算がないチームにとって、この選択は「国内の厳選されたキュレーション」対「海外の圧倒的な手を動かす機会」の比較になります。両者は代替品ではありません。研究発表を聴きたいならCODE BLUEで足ります。触りに行くならDEF CONです。
Black Hat USAとはどう違うのか
別の会社が、別の会場で、連続した日程で開催する、別のイベントです。 混同されがちですが、共通しているのは創設者がJeff Moss氏である点と、開催地がラスベガスである点だけです。
| DEF CON | Black Hat USA | |
|---|---|---|
| 主催 | DEF CON Communications, Inc. | Informa(商業カンファレンス事業者) |
| 会場 | Las Vegas Convention Center | Mandalay Bay Convention Center |
| 最安の参加費 | $520(2026年・当日現金) | $1,399(2026年実績) |
| スポンサー | なし | 有償スポンサーとブース出展あり |
| 出展 | 本体には出展枠がありません | 企業展示が中心的な収益源です |
| 性格 | 参加型、ハンズオン、コミュニティ運営 | 査読付き研究発表と有償トレーニング |
日程は連続します。慣例としてBlack Hat USAの最終日がDEF CONの初日にあたるため、DEF CON 35が8月5日開幕である以上、Black Hat USA 2027は7月末から8月5日にかけての開催になると推定できます(2026年8月時点でBlack Hat側は未発表です)。同じ週にBSides Las Vegasも重なるため、この期間は業界で「ハッカー・サマー・キャンプ」と呼ばれます。1回の渡航で複数のイベントを回る計画は現実的ですが、そのぶん滞在は1週間を超えます。
役割で選んでください。 査読を通った研究発表を聴き、有償トレーニングを受け、企業ブースで商談するならBlack Hatです。詳しくはBlack Hat USA 2027のガイドにまとめています。手を動かし、CTFに出て、ハードウェアを触るならDEF CONです。
日本企業にとって行く価値はあるか
判断の分かれ目は1つです。送る人が、見に行くのか、手を動かしに行くのかです。
行くべき企業。 セキュリティの実務者、脆弱性研究者、CTFプレイヤーを抱える企業です。ペネトレーションテストやセキュリティ診断を事業にしている企業であれば、CTFの結果がそのまま営業資料と採用広報の材料になります。GMOサイバーセキュリティbyイエラエが「CTFで勝つ」を年間目標に掲げた理由がまさにこれで、稟議書に書ける投資対効果の形をしています。自動車、IoT、クラウド、航空宇宙といった特定領域を持つ企業も向いています。該当するVillageに人を送れば、その領域の実務者と1日中同じ部屋にいられるからです。
行かなくてよい企業。 商談相手を探している営業・事業開発の担当者です。展示会場が存在せず、ベンダーテーブルは審査制で、Villageは採用や宣伝の場になることを明文で禁じられています。名刺を集めに行く場としては設計されていません。DEF CON自身の言葉が、この線引きをそのまま述べています。
If you do not have any technical interests, DEF CON is probably not for you.
技術的な関心がないなら、DEF CONはおそらく向いていません。これは謙遜ではなく、実際に外れた人が退屈する構造になっています。
段階を踏みたい企業へ。 DEF CONはラスベガス以外でも開催されるようになりました。DEF CON Singaporeが2026年4月28日〜30日にMarina Bay Sandsで開かれています。飛行時間が短く、日本企業が出張先として理解している都市であり、初回の露出としてはラスベガスより明らかに扱いやすい選択肢です。ただし規模と雰囲気が本家とどこまで同じかは検証できていないため、あくまで入り口としての位置づけになります。
最後に、費用面の現実だけ繰り返します。バッジ$520前後に加え、現金の準備、乗り継ぎ1回の渡航費、8月ラスベガスの高騰した宿泊費、そして日曜15:00で終わる会期。1人あたりの総額は他の米国カンファレンスと大きく変わりませんが、得られるものの性質がまったく違います。 貴社の人員構成と目的に照らした参加判断のご相談は、下記からどうぞ。
Talk to usFAQ
- DEF CON 35の参加費はいくらですか?
- 2027年分は未発表です。2026年のDEF CON 34は当日現金で$520でした。事前オンライン登録は決済手数料込みで$540〜$580と案内されており、当日現金より高くつきます。学生・法人・政府・報道機関のいずれにも割引はありません。
- クレジットカードは使えますか?
- 当日のバッジ購入と物販は現金のみです。カードが使えるのは事前オンライン登録だけです。運営が個人情報と決済情報を持たない方針を取っているためで、経費精算向けには現金領収書のPDFが公開されます。
- 会場で写真は撮れますか?
- 会場や登壇中の話者は撮影できます。群衆、廊下、列、個人は本人の同意なしに撮影できません。CTFルームは同意が必須です。録画機能付きのスマートグラスは度付きレンズでも持ち込み禁止で、違反すると行動規範違反として扱われます。
- 日本企業はスポンサーや出展ができますか?
- DEF CON本体のスポンサーはできません。可能なのはVillageへの支援、コンテストへの賞品提供、全バッジ保持者に開かれたパーティーの開催、審査を通ったベンダーテーブルの4つです。NDIASは2025年にCar Hacking Villageを支援しました。
- 英語ができなくても参加できますか?
- セッションはすべて英語で、同時通訳はありません。ただし2022年に単独参加した日本人参加者は、英語でのやり取りは「意外とどうにかなりました」と書いています。ハンズオン中心のVillageでは、語学力より手を動かす力が問われます。
- 8月のラスベガスはどのくらい暑いですか?
- 平年の最高気温40.0°C、最低気温27.8°Cです(米国気象局、1991〜2020年平年値)。夜間も27°Cを下回りません。過去の記録は45.6°C。屋内は強く冷房が効いているため、実際に問題になるのは移動と屋外の列です。