SaaStr AI Annual · サンマテオ(サンフランシスコ・ベイエリア)

SaaStr AI Annual 2027完全ガイド:日本のSaaS企業が参加する価値はあるか

Last updated: August 6, 2026

SaaStr AI Annual 2027は、2027年5月11日(火)〜12日(水)の2日間、サンフランシスコ・ベイエリアのSan Mateo County Event Centerで開催される、B2B SaaSとAIの経営層に特化したカンファレンスです。結論から言えば、営業・マーケティング組織をAI前提で組み替えようとしているSaaS企業の経営層と、米国での資金調達を視野に入れているスタートアップにとっては、費用対効果の高いイベントです。一方、製品を売り込む商談の場として使いたい企業や、技術的な実装を学びに行くエンジニア組織には向きません。この記事では、参加費の実勢価格、2026年に上位スポンサーの81%が入れ替わった事実、そして見たものをそのまま日本に持ち帰れない2つの壁まで、判断に必要な材料を提示します。

1万人超

来場者(主催者発表)

12,500人超

現地報告(2026年)

200本以上

セッション数

$499〜$1,500

参加パス

SaaStr AI Annualとは何のカンファレンスか

SaaStr AI Annualは、B2B SaaSの創業者・経営層・VCが集まるカンファレンスで、2027年で14回目を迎えます。主催のSaaStrはブログとコミュニティから始まったメディア事業者で、特定ベンダーの製品発表会ではありません。この一点が、このイベントの性格をほぼ説明します。

SaaStrはセッション動画、無料のAIワークショップ、無料の「Digital AI Day」を年間を通じて公開しています。つまりコンテンツ自体は買わなくても手に入ります。チケットが買っているのは、その場にいる人、マッチングの仕組み、そしてパーティーです。この構造を理解しないまま「セッションの内容」で費用対効果を判断すると、必ず割高に見えます。

トラックは7つで、AI×営業、マーケティング、投資(VC)、カスタマーサクセス、プロダクト、エンジニアリング、そしてVibe Codingです。主催者は2027年について、200本以上のタクティカルセッション、250名以上のスピーカー、3,000件以上のネットワーキングミーティング・AMA・ラウンドテーブル、そして年間200億ドル以上をAI領域のB2B企業に投じる300社以上のVCを掲げています。

この投資家密度が最大の特徴です。来場者1万人に対しVC 300社以上という比率は、同規模の他のカンファレンスにはありません。しかもSaaStrは「資金調達可能な企業」向けに正式なマッチングを運営しています。ユニコーン企業も200社以上が参加すると発表されています。

いつ・どこで開催されるのか

2027年5月11日(火)〜12日(水)の2日間、San Mateo County Event Center(カリフォルニア州サンマテオ)で開催されます。開催地は「サンフランシスコ・ベイエリア」と表記されますが、実際の会場はサンフランシスコ市内ではなくサンマテオです。

2027年は2日間で、前年より1日短くなります。 日本から渡航する企業にとっては無視できない変更です。フライトの長さは変わらないまま、現地で回収できる内容だけが圧縮されます。

開催年日程日数会場
2025年5月13〜15日3日間San Mateo County Event Center
2026年5月12〜14日3日間San Mateo County Event Center
2027年5月11〜12日2日間San Mateo County Event Center

会場までのアクセスは、米国の主要カンファレンスの中でも最も容易な部類です。サンマテオはサンフランシスコとシリコンバレーの中間、SFO空港から南へ約10マイルの位置にあり、サンフランシスコ市内より会場に近い立地です。

項目内容
直行便東京〜SFO:ANA・JAL・ユナイテッド航空。ユナイテッド1社で週約14便、所要10時間45分〜11時間25分。羽田・成田の両方から運航
空港から会場SFOから南へ約10マイル。市内に泊まるより会場に近い
5月の気候平均最高19°C・最低11°C、月間降水量0.48インチ(約12ミリ)、湿度69%
会場の性格48エーカーの郡営イベント会場。7棟に分かれ、棟間の移動は屋外

気候について1点。サンフランシスコ市内の6月ほど霧は出ませんが、日本の5月の感覚では肌寒く、棟から棟への移動は屋外です。羽織るものは必須と考えてください。

See itineraries

誰が主催しているのか

主催はSaaStr(SaaStr Inc.)、創業者はJason Lemkin氏です。SaaStrはB2B SaaS創業者向けのブログとコミュニティとして始まり、年次イベントはその物理的な表現です。サイトに掲げる約束は「We'll Teach You to Win In the Age of AI」(AI時代の勝ち方を教える)です。

Lemkin氏は中立的なホストではありません。自らコンテンツを書き、壇上に立ち、終了後の総括を公開し、自社を事例として提示します。イベント全体が彼の編集方針を帯びていて、この規模のカンファレンスとしては異例なほど発言が直接的です。

その姿勢が最もよく出ているのが、自社の組織改革を数字ごと公開している点です。SaaStrは10〜13名だったGTMチームを3名と20体以上のAIエージェントに置き換え、前年比140%の売上を報告しました。ツールコストは月額約$254、人件費に換算すれば年間およそ$50万〜80万に相当する体制です。この話は2026年に現地入りした日本人参加者2名、マツリカの中谷真史氏とimmedioの浜田英揮氏が、それぞれ独立に記録しています。

浜田氏はSDR部門の内訳をこう書いています。

SDRの領域では10人で行っていた業務を1人で行っており、9人分をカバーするAIは年間$5,000のコストで回せている

数字を信じるかどうかは別として、これがこのイベントの中心的な主張です。そして、次のセクションのスポンサー入れ替わりは、その主張の帰結として起きています。

なぜ「SaaStr AI」に改称し、出展社の何が入れ替わったのか

改称は2段階で進みました。2025年版は「SaaStr Annual + AI Summit 2025」、2026年版からは単に「SaaStr AI Annual」になり、親ブランドもSaaStr.AIとして展開されています。そして2026年、ゴールドからダイヤモンドまでの上位スポンサー78社のうち、前年から継続したのはわずか15社でした。

区分社数割合
2025年から継続15社19%
新規63社81%
2025年から離脱48社-

離脱した48社のうち40社(83%)がAI以前のB2B企業またはサービス企業で、AIネイティブ企業はわずか8社でした。Lemkin氏本人の総括はこうです。

the 'old B2B' share of our sponsor floor collapsed from majority to minority in a single year

出展フロアに占める「旧来型B2B」の割合が、1年で過半数から少数派に転落した、という意味です。入れ替わりで入ってきた側はReplit、Lovable、Harvey、Cohere、Vercelといった、いずれもAIファーストの企業です。

Lemkin氏が挙げる離脱の理由は、成長率が30%超から10〜15%へ鈍化したこと、マーケティング予算の削減、CMOの離任、アトリビューション期間が90日に短縮されたこと、そしてフィールドマーケティングそのものからの撤退です。彼の警告は業界全体に向けられています。

If your 2026 pipeline still looks like your 2023 pipeline, you have a problem you may not see yet

2026年のパイプラインが2023年のままなら、まだ気づいていない問題を抱えている、ということです。

日本の読者にとって、この数字には実務的な意味があります。日本語で読めるSaaStrの参加レポートは2023年版と2025年版が中心ですが、そこに書かれている出展フロアは、2026年に大半が入れ替わりました。過去のレポートを判断材料にすると、実際に見るものとずれます。

なお、主催者が自社の顧客離脱率を公開する例はほとんどありません。この透明性そのものが、SaaStrが公表する他の数字を、一般的なイベントのマーケティング資料より信用してよい理由になります。

どんな企業が参加・出展しているのか

参加者はB2B SaaSとAIの創業者、経営層、VCです。主催者の自己紹介はそのまま「Founders, VCs, and Execs in B2B + AI」で、2027年については来場者1万人以上、スポンサー150社以上、VC 300社以上、ユニコーン200社以上を掲げています。

来場者数については、数字が一致していないことを正直に書いておきます。

出所数字性格
SaaStr(2027年・2026年とも)10,000人以上主催者の公称。監査値ではありません
マツリカの現地報告(2026年)12,500人超、前年比132%現地の実測に基づく報告
ALL STAR SAAS FUNDの現地報告(2023年)12,500人現地の実測に基づく報告

2026年が12,500人で前年比132%なら、2025年は約9,500人という計算になります。SaaStrの「10,000人以上」は測定値というより、数年据え置きのマーケティング下限と読むのが妥当です。役職構成についても、SaaStrのサイトはVP以上68%、同社2024年版の振り返りは57%としています。どちらもSaaStr自身の数字です。

出展社は、2026年7月時点で2027年ページから26社が確認できています。

ティア企業
GoldReplit、Syllable
SilverLightfield
BronzeAurasell
ティア未表示Google Cloud、Salesforce、Vercel、Artisan、Rippling、OpenRouter、Vivun、Lovable、Revolut Business、Aircall、Relevance AI、Reevo、Glyphic、Papaya Global、Firebolt、Booking.com、Worldpay、G2、Airwallex、Orca Security、Backstory、HappyFox

このリストを読むだけで、前のセクションの入れ替わりが縮図として見えます。Salesforce、Google Cloud、G2、Booking.com、Worldpayといった既存勢の横に、Artisan、Aurasell、Lightfield、Reevo、Glyphic、Relevance AI、Vivun、OpenRouter、Lovable、ReplitといったAIネイティブのGTMツール群が厚く並んでいます。

登壇者は250名以上です。2027年の登壇予定として確認できているのは、SaaStrのJason Lemkin氏とChief AI OfficerのAmelia Lerutte氏に加え、StripeのMaia Josebachvili氏(CRO of AI)、AtlassianのSherif Mansour氏(Head of AI)、RipplingのLuke Prokopiak氏、CanvaのAnwar Haneef氏、WebflowのRachel Wolan氏(CPO)、VercelのJeanne DeWitt Grosser氏(COO)、OwnerのAdam Guild氏とKyle Norton氏、AnthropicのEleanor Dorfman氏、ReplitのAmjad Masad氏、DatabricksのArsalan Tavakoli氏です。役職名に注目してください。Stripeの「CRO of AI」もAtlassianの「Head of AI」も、3年前には存在しなかった役職です。登壇者リスト自体が、SaaStrが売っている組織変化の証拠になっています。

日本企業の出展・登壇の実績は確認できていません。日本パビリオンも日本語プログラムも、DatabricksのJEDAIのような日本語ユーザーコミュニティもありません。一方で参加は定着しており、書き手の顔ぶれが特徴的です。

組織内容
ALL STAR SAAS FUND日本のSaaS特化型VC。2023年から現地レポートを公開
IVRy2025年に参加し、日本語のウェビナーで報告
immedio(代表 浜田英揮氏)2026年に現地入りし、シリコンバレーと日本SaaSの詳細な比較を公開
マツリカ(中谷真史氏)2026年の営業テック中心の現地レポート。日本語で最も実務的な記録
Ascend2026年に経営陣4名で参加し、帰国後に日本語の報告会を開催

エンジニアではなく、SaaS企業の創業者・投資家・営業責任者が書いているという点が、他の米国カンファレンスの日本語レポートとの違いです。参加している層がそのまま反映されています。Ascendが1名の担当者ではなく経営陣4名を送ったという事実は、このイベントの正しい使い方を示しています。

会場では実際に何が起きるのか

2日間で200本以上のセッション、3,000件以上の1対1ミーティングやAMA、ラウンドテーブル、招待制のエグゼクティブサミット、そしてベイエリア各所でのパーティーが同時に走ります。展示フロアはすでにほぼ全社がAI製品を出しています。

2025年の日本語レポートは「ほぼ全ての企業ブースでAI機能を搭載したプロダクトが紹介されていました」と記録しています(ITreview)。2026年の変化を、マツリカの中谷真史氏はこう表現しました。

今年のSaaStrは、AIエージェントが『話題』から『実戦配備』に切り替わった年

同氏は営業組織における人とAIの関係について「人間とAIの主従関係が逆転し始めた」とも書いています。彼が現地で拾った空気の記録は、セッションタイトルより雄弁です。入口ではノベルティが配られ、上空には広告飛行機が旋回し(3日間で約230万円)、会場のWiFiパスワードは「HireAnAIBDR」(AIのBDRを雇え)でした。彼が展示フロアで確認したベンダーは、Monaco、Aurasell、Reevo、LightfieldといったAI CRM勢、AIセールス・チームメイトのVivun、Claude統合を見せたAnthropic、そしてAgentforceのSalesforceです。

ネットワーキングは仕組み化されています。2025年には「Who Do You Want to Meet」というAIマッチングプログラムが登場し、興味関心に応じて相手を推薦します。この方向性は以前から強まっていて、ALL STAR SAAS FUNDは2023年の時点で「参加者同士が直接話せるブレインデートや感想を共有できる会場専用のチャットツールなど、ネットワーキング要素が去年と比較してかなり増えている印象です」と書いています。

会期中には招待制のC-levelサミットも走ります。2024年版は4つ(CRO + CEO Poker Night、CMO Summit and Brunch、CCO Meet up、CFO Summit)で、各回300名上限、合計700名のC-level幹部が参加しました。参加者の所属企業は平均売上高$100M、9%が10億ドル規模の企業でした。2027年の顔ぶれはまだ確定していません。公式サイトはCMO / CRO / CCOの3つを、2026年7月に取得した主催者情報はCRO / Forward Deployed / CMOを挙げています。新設された「Forward Deployed Summit」は、AIネイティブ企業が採用しているフォワードデプロイド・エンジニアという職種そのものを冠しており、これもAIシフトの表れです。

スタートアップ向けにはAIデモピッチのコンペティションがあります。2025年はMosaic(元Tesla技術者による動画編集AI)が優勝し、同じ回では「STOP HIRING HUMANS」という挑発的なキャンペーンを打ったAI BDRのARTISANが注目を集めました。

基調講演の内容も紹介しておきます。Lemkin氏は2025年の登壇で、SaaSは2023年までの成長の時代から2024年以降の競争の時代へ移ったと述べ、従業員のおよそ20〜40%はAI時代に適応できない可能性があると警告しました。会場の前提は「これから検討する」ではなく「もう配備している」です。

参加・出展にいくらかかるのか

参加パスは自社のARR規模で価格が変わります。これは一般的なカンファレンスにはない仕組みです。年商2,000万ドル未満のスタートアップは概ね$499〜849、それ以上の企業とVCは概ね$699〜1,049、SaaStr自身が言及する定価の目安は$1,500前後です。

区分価格
Early Bird Ticket for Startups(ARR 2,000万ドル未満)US$849
Limited Edition: Summer Team Pack for StartupsUS$499
Limited Edition: Summer Team Pack for Big Cos and VCsUS$699
Early Bird Team Pack for Big Cos and VCsUS$1,049
定価の目安(SaaStr自身の表現)US$1,500前後

正直な注意が2つあります。ひとつ、最安の$499はチームパックの1名あたり単価であり、1名で購入できる価格ではありません。ふたつ、SaaStrの購入ページは価格をブラウザ側で描画するため、外部からは現在の価格表を取得できません。上の数字は2026年7月時点の取得値と、検索エンジンのインデックスに残った断片です。購入の直前に公式サイトで必ず確認してください。

無料または割引で入る経路も複数あります。SaaStrは意図的に多くのアクセスを配っています。

  • 250名分の無料パス。 「次世代の、これまで機会に恵まれてこなかったレベニューリーダー」向けの申請制で、全セッション、全ネットワーキング、CEO・VCマッチングを含む$1,500相当と説明されています
  • スポンサー経由のVIPパス。 2020年以降、対象スポンサーは顧客・見込み客に配れるパスを持っています(ディレクター以上が条件)。2024年の実績では上位12社が平均13名を招待した一方、その他の大半は2名しか使っていません。米国のSaaSベンダーと取引があるなら、そのスポンサー枠を尋ねる価値があります
  • 無料のAIワークショップとDigital AI Day が、SaaStrのサイトから常時提供されています

出展については、ブースの価格表がどこにも公開されていません。ティア名(Diamond、Platinum、Super Gold、Gold、Silver、Bronze)は各種資料に出てきますが、金額は非公開で、問い合わせ先はsponsors@saastrinc.comのみです。

その代わりにSaaStrが公開しているのが、スポンサーのROIデータです。ここまで自社のスポンサー成果を数字で出すイベントは他にほとんどありません。以下はSVP兼GMのAmelia Ibarra氏による振り返りで、2024年版の実績を記述したものです。

  • Super Goldスポンサーの平均獲得リードは470件(前年は249件)で、おおよそ2倍
  • リード数は「支出額とブースサイズに比例する」
  • アクティベーションを用意したスポンサーは60%多くリードを獲得し、対象スポンサーの70%が実施しました。ここでのアクティベーションとは既製のノベルティ配布ではなく、その場限りの体験や参加型の仕掛けを指します。挙げられている例はBooking.comのマネーマシン、Bill.comのカスタムLegoステーション、Google Cloudのカスタムボバです
  • 「Who Do You Want to Meet」経由で、開催前に平均50件以上、多い場合は100件超の追加オプトインリードが発生しました

同じ振り返りには、出展を検討する企業が読むべき但し書きも入っています。アンケートに答えたスポンサーの多くが、新規見込み客より既存顧客に会ったと記述しており、Ibarra氏自身が、新規パイプラインだけでなく顧客維持をイベントのKPIに加えることを勧めています。この率直さは、出展判断の前提を変えるだけの重みがあります。

参加費に渡航費と宿泊費を足した出張総額は、人数と為替で大きく変わります。貴社の条件での概算は、下のツールで数分で試算できます。

Calculate your costs

日本企業にとって行く価値はあるか

判断基準はひとつです。貴社がAIツールを「導入する」段階にいるのか、組織そのものを「組み替える」段階にいるのか。会場の前提は後者です。

行くべき企業。 SaaSまたはB2Bソフトウェアを提供していて、営業・マーケティング組織をAI前提で設計し直そうとしている企業の経営層です。そして米国での資金調達を視野に入れているスタートアップ。VC 300社以上と正式なマッチング、加えてデモピッチという組み合わせは、この規模のカンファレンスでは他にありません。派遣の単位も重要です。Ascendが経営陣4名で参加したように、これは担当者1名を送るイベントではなく、意思決定者をまとめて送るイベントです。

現地に行く理由として最も正確なのは、ALL STAR SAAS FUNDが2023年に書いた総括です。

質疑応答の内容や現地の起業家との会話から感じられる課題や雰囲気などは数多く存在することを痛感しました

セッション動画は公開されます。質疑と廊下の会話は公開されません。ここに$849を払う価値があるかどうかが、実質的な判断です。

行かなくてよい企業。 製品を売り込む商談の場として使いたい企業には向きません。SaaStrは展示会ではなく、経営層の学習とネットワーキングの場です。技術的な実装を学びたいエンジニア組織にも向きません(それはGTCやKubeConの領分です)。AI活用をまだ社内で検討している段階の企業も、2日間の内容に付いていくのは難しいはずです。

そして、見たものをそのまま持ち帰れない壁が2つあります。 マツリカの中谷真史氏が2026年の現地レポートで指摘した点で、英語のどの情報源にも書かれていません。

  1. 法規制の壁。 日本では企業の従業員の連絡先が個人情報として扱われるため、「ZoomInfo型のデータベースが法的に成立しない」。SaaStrのフロアに並ぶAI SDR・アウトバウンド系ツールの相当部分は、設計のままでは日本に持ち込めません
  2. 組織の壁。 解雇が難しく、成果連動報酬も一般的ではありません。人員をエージェントに置き換えて浮いた原資を成長投資に回す、という米国企業の投資判断が、そのままの形では成立しません

immedioの浜田英揮氏の見立ては、これに対する前向きな補足になります。彼は日本をまだ間に合う段階だとした上で、GTMレイヤーへのAI統合が最も急ぐべき差であり、インサイドセールスの自動化が日本企業にとって最も現実的な勝ち筋だと述べています。彼の組織論も引用に値します。

AI活用は中央集権型で行うのが基本。現場に委譲しすぎると事業成長に寄与しないところにAIが使われがち

この2つを合わせると、SaaStrに行く目的は「見て真似する」ではなく「進行方向を確認し、そのうち日本で法的・組織的に成立する部分を自分で切り分ける」になります。その前提で行くのであれば、2日間$849は安い部類です。

最後に情報源の偏りについても書いておきます。SaaStrに関する公開情報は、主催者、スポンサー、VC、そして製品を売るベンダーによるものがほとんどで、利害関係のない参加者による批判的なレビューはほとんど見つかりません。評判が悪くないのは事実ですが、それは「利害のない書き手が書いていない」ことの裏返しでもあります。判断は、この記事の数字と貴社の状況を突き合わせて行ってください。相談は下記からどうぞ。

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FAQ

SaaStr AI Annual 2027はいつ・どこで開催されますか?
2027年5月11日(火)〜12日(水)の2日間、カリフォルニア州サンマテオのSan Mateo County Event Centerで開催されます。2026年の3日間から1日短くなりました。会場はSFO空港から南へ約10マイルで、サンフランシスコ市内より近い立地です。
参加費はいくらですか?
自社のARR規模で価格が変わります。年商2,000万ドル未満のスタートアップは概ね$499〜849、それ以上の企業とVCは概ね$699〜1,049です。SaaStr自身は定価を$1,500前後と表現しています。最安の$499はチームパックの単価で、1名では購入できません。
日本からの直行便はありますか?
あります。東京〜サンフランシスコ(SFO)はANA、JAL、ユナイテッド航空が直行便を運航し、所要は10時間45分〜11時間25分です。羽田・成田の両方から便があり、ユナイテッド1社だけで週約14便です。SFOから会場までは南へ約10マイルの距離です。
日本企業も出展していますか?
出展・登壇の実績は確認できていません。参加は定着しており、ALL STAR SAAS FUND、IVRy、immedio、マツリカが日本語の参加レポートを公開し、Ascendは経営陣4名を派遣しています。日本パビリオンも日本語プログラムもありません。
英語ができなくても参加できますか?
通訳サービスも日本語セッションもありません。セッション、ネットワーキング、VCマッチングのすべてが英語です。このイベントの価値の大半は廊下の会話と1対1の面談にあるため、英語で議論できる人を送らないと費用に見合いません。
Dreamforceやre:Inventとどう違いますか?
規模が1桁小さく、対象がB2B SaaSの経営層とVCに絞られています。特定ベンダーの製品発表会ではなく、メディアとコミュニティを本業とするSaaStrが運営するイベントです。来場者1万人に対しVC 300社以上という投資家密度は、他の大型カンファレンスにない特徴です。
SaaStr AI Annual 2027完全ガイド:日本のSaaS企業が参加する価値はあるか