Microsoft Ignite · サンフランシスコ

Microsoft Ignite 2026完全ガイド:日本企業のための参加・出展判断

Last updated: August 6, 2026

Microsoft Ignite 2026は、2026年11月17日〜20日にサンフランシスコのMoscone Centerで開催される、Microsoftが自社製品について自社で開く年次カンファレンスです。結論から言えば、Microsoftのパートナー制度の中にいる企業と、AzureやMicrosoft 365を全社基盤として運用している事業会社にとっては、渡航費に見合うイベントです。逆に、発表内容を把握したいだけなら行く理由はありません。オンラインのDigital passは無料で、12月には日本マイクロソフトが同じ内容を日本語で再演します。この記事では、参加費と出展費用の実額、2025年に日本から参加した600人が現地で得たもの、そして日本語での公式サポートまで、判断に必要な材料を並べます。

2万人

現地来場者(2025年実績)

600人

日本からの参加者(2025年)

20万人超

オンライン参加(2025年)

$1,625〜$2,325

参加パス

Microsoft Igniteとは何のカンファレンスか

Microsoft Ignite(マイクロソフト・イグナイト)は、Microsoftが自社製品について自社で開催する年次カンファレンスです。業界団体の展示会ではなく、中立の主催者もいません。この一点が、参加して得られるものと得られないものをほぼ決めます。Igniteは「Microsoftが顧客に次に何をさせようとしているか」を知る場であって、市場を横断的に見渡す場ではありません。

前身は1993年にオーランドで始まったTechEdです。2014年のヒューストン開催を最後にこの名前は引退し、2015年にシカゴでMicrosoft Igniteとして再出発しました。二つの名前を通算すれば30年以上続いているカンファレンスです。

もう一つ、会場の空気を決めている構造変化があります。2024年、Microsoftはパートナー向けの独立イベントだったMicrosoft InspireをIgniteに統合しました。以来、会場には性格の違う二つの聴衆が同居しています。製品を学びに来たIT技術者と、Microsoftと組んで売りに来たパートナー企業のビジネス責任者です。基調講演とは別にPartner Keynoteが組まれているのは、この統合の名残りです。

規模は急速に膨らんでいます。

開催年開催地現地参加者オンライン参加者
2023年シアトル約5,000人約10万人
2024年シカゴ14,000人超20万人超の登録
2025年サンフランシスコ2万人20万人超

現地参加者は2年で約4倍になりました。コロナ期のオンライン専用開催のあと、Microsoftが対面開催を意図的に再拡大させている途中だと読むのが妥当です。なお2万人という数字は日本の参加者レポートが伝えた発表値で、Microsoftが事前にスポンサーへ示した想定は17,000人でした。監査された公式数値は存在しないため、この規模感は幅を持って見てください。

2025年のテーマは「Frontier Firm」、AIエージェントを後付けではなく事業の中に組み込んだ組織、という概念でした。ブース出展側として現地にいたNTT DATAの寺井氏は、Microsoftのメッセージをこう要約しています。「今回の Ignite を通して Microsoft が最も強く打ち出していたテーマは、『AI エージェントを前提にした企業の新しいスタンダードをつくる』という点だったように思います。」2026年の公式説明も「frontier AI and cloud advancements」で、この路線の続きになると見るべきです。

Microsoft IgniteとMicrosoft Buildは何が違うのか

Igniteは11月開催でIT専門職・パートナー・ビジネス責任者向け、Buildは春開催で開発者向けです。同じMicrosoftの主催ですが、聴衆も、扱う話の抽象度も違います。公式FAQはIgniteの対象を「IT professionals, developers, partners, and business leaders」と定義しており、開発者だけの場ではありません。

日本企業から見た場合、選択肢はこの二つだけではありません。渡航しない道が二つあります。

イベント時期・場所主な対象日本企業にとっての位置づけ
Microsoft Ignite11月・サンフランシスコIT専門職、開発者、パートナー、ビジネス責任者渡航が必要。パートナー制度の改定を最初に知る場
Microsoft Build開発者開発者向けプラットフォーム発表の場
Microsoft AI Tour巡回開催、東京を含む幅広い渡航せずに参加できる国内の代替
Best of Microsoft Recap Days Japan12月・日本幅広いIgniteの発表を日本語で再演する後追いイベント

この表の下二行は、出張の稟議を書く前に見ておく価値があります。「発表を聞くため」という理由づけは、東京で日本語で同じ内容が聞ける以上、通りにくいからです。渡航を正当化するなら、現地でしか得られないもの、つまりパートナー制度の解釈、Microsoftのエンジニアとの直接対話、ハンズオンlabの座席を理由にする必要があります。

いつ・どこで開催されるのか

2026年11月17日(火)〜20日(金)の4日間、サンフランシスコのMoscone Center(SouthとWest)で開催されます。11月16日(月)にオプションのpre-dayがあり、オンライン配信は11月17日〜19日です。

初日の基調講演だけは会場が違います。MosconeではなくChase Center、NBAゴールデンステート・ウォリアーズの本拠地で行われます。SB C&Sの熊谷哲人氏は2025年の現地から「収容人数として約18,000人超もの規模であるサンフランシスコのチェイス・センターという大規模多目的アリーナにて行われました」と報告しています。公式アジェンダはシャトルの利用を案内したうえで、開始前に余裕をもって着けるよう時間を多めに見るよう促しています。

2026年は、対面開催の時代に入ってから初めて同じ都市が2年続く年です。2015年のシカゴ以降、開催地はアトランタ、オーランド(3回)、シアトル、シカゴとほぼ毎年動いてきました。会場も時期も昨年と同じということは、2025年参加者が書き残した現地情報がそのまま使えるということでもあります。

項目内容
直行便羽田・成田〜SFO:JAL、ANA、ユナイテッド航空、ZIPAIR。所要約9〜10時間
空港から会場BARTでPowell Street駅まで約28分、$9〜12、10分間隔
入国手続きESTA(ビザ免除プログラム)。2026年1月1日から$40.27、有効期間2年
11月の気候最高約18°C、最低約10°C。雨季の入りで、1日あたりの降水確率は約19%

基調講演がシャトル移動と屋外での待機を伴う点は、11月のサンフランシスコでは服装に直結します。重ね着と折りたたみ傘を前提に荷造りしてください。

See itineraries

誰が主催しているのか

主催はMicrosoftで、壇上に立つのもほぼ全員がMicrosoftの役員です。公式サイトのfeatured speakerに社外の名前は一人も載っていません。CEOのSatya Nadella氏が筆頭に、コマーシャルビジネス部門CEOのJudson Althoff氏が二番目に掲載されています。

ここに一つ、日本企業が出張理由を書くときに知っておくべき事実があります。2025年、Nadella氏はIgniteの基調講演に登壇しませんでした。SB C&Sの熊谷氏は現地からこう報告しています。「今回のIgniteではSatya Nadella氏の登壇はなく、コマーシャルビジネス部門CEOであるJudson Althoff氏によるモデレートによって全体が進行される形となりました。」Qiitaに参加記を投稿したyasuoyasuo氏の感想はもっと率直です。「個人的にはサティア・ナデラさんを拝めなかったのは非常に残念でした。」

2026年は両氏とも公式サイトのfeatured speakerに掲載されています。ただしMicrosoftが2026年6月に送った登録案内メールが名前を挙げた10名の役員に、Nadella氏は含まれていませんでした。掲載は基調講演への登壇を約束するものではありません。社内向けの説明で「Nadellaを見に行く」と書くのは避けてください。

登壇の仕組みも押さえておく価値があります。Igniteに公募の講演枠はなく、社外の登壇はスポンサー特典として販売されています。IBMが自社サイトで説明しているところでは、$500,000のCatalystティアに講演2枠と10分のデモ、顧客用ミーティングルーム2室が含まれます。Igniteの壇上は勝ち取るものではなく、買うものです。

収益構造も同じ設計で説明がつきます。参加チケット、出展とスポンサー枠、そしてMicrosoft自身の商談です。会期中のアジェンダにはMeeting Centerが置かれ、Microsoftの幹部が顧客と商談する場になっています。無料のDigital passも収益の一部で、基調講演を20万人規模の製品発表会に変える装置として機能しています。

どんな企業が参加・出展しているのか

出展社数はMicrosoftが公表していません。2026年の公式スポンサーディレクトリは登録受付段階の現在も空で、外部の集計サービスは有料の会員向けにデータを閉じています。分かっているのは、聴衆の構成と、個別に確認できた出展社です。

まず聴衆の国籍です。2025年のスポンサー向け資料が示す地域構成は次のとおりです。

地域参加者全体に占める割合現地参加者に占める割合
米国37%66%
西欧23%19%
東欧・アフリカ10%3%
中南米6%3%
カナダ5%5%
アジア5%5%
オセアニア3%1%

会場にいる3人に2人は米国人です。日本からの参加者は2025年で600人、2万人の会場の約3%にあたります(NTT東日本のたかひろ氏が報告した数字で、Microsoft自身は日本人参加者数を公表していません)。アジア全体で現地参加の5%、およそ1,000人という計算になるため、日本はアジア最大の代表団である可能性が高い一方、会場全体では明確な少数派です。日本企業のブースに日本語だけで立つという設計は成り立ちません。

業種は金融サービス21%、ITサービス13%、製造11%、小売・消費財11%、テクノロジー11%、公共部門8%です(2024年実績)。Microsoftのスポンサー向け資料が掲げる職種はCEO・社長・創業者、C-level/SVP/CVP、CIO、CTO、IT担当バイスプレジデントと並びますが、同じ資料の内訳は技術者10,000人超、パートナー企業のビジネス責任者6,000人超、上級役員700人超です。226,000人の登録者に対して上級役員が700人という比率は、「CIOに会うため」に$255,000のブースを買う前に見ておくべき数字です。

2025年に個別に確認できた出展社は以下のとおりです。

企業内容
CapgeminiCatalystスポンサー。NVIDIAのブース内でも登壇
IBMCatalystスポンサー。講演2枠、10分のデモ、顧客用ミーティングルーム2室
NVIDIAブース#939
Azure DatabricksVisionaryスポンサー、ブース#5410
Presidioブース#5260
Accentureスマートマニュファクチャリングのセッションに登壇
NTT DATAブース出展、AIエージェントのデモ

顔ぶれから見える構図は明快です。グローバルSIer、半導体とインフラのベンダー、データとセキュリティのISV、そして北米のリセラーとマネージドサービス事業者。スタートアップの床ではなく、パートナーチャネルの床です。

日本企業では、NTT DATAが唯一のブース出展社として確認できました。同社の寺井氏は自身の役割を「NTT DATA の取り組みを来場者に紹介するブース展示員としての役割を担いながら、エージェント技術の今後の方向性を把握し、技術の最新動向や業界ニーズを直接収集することを目的に行ってきました」と書いています。NEC ソリューションイノベータも参加し、参加報告を公開しています。出展はせず参加してレポートを出した企業には、SB C&S、NRI、NTT東日本、QES(3名派遣)、AP Communications、オルターブースがあります。

オルターブースの姿勢は、規模の小さい日本企業にとって最も参考になります。同社の木本氏は「弊社オルターブースもMicrosoftのパートナー企業として毎年3名ほどのエンジニアが参加しています」と書き、目的を「主に新技術導入検討や人材育成」と説明しています。福岡の企業が毎年3名を送り続けているという事実は、この規模でも継続的な投資として成立することを示しています。

一方で、日本企業が慣れている出展の型は使えません。IgniteにJETROのパビリオンも、自治体のパビリオンも、業界団体の共同出展枠もありません。CESやハノーバーメッセの団体出展モデルは、単独ベンダーのカンファレンスであるIgniteには存在しないと考えてください。

会場では実際に何が起きるのか

4日間の中身は、基調講演、セッション、ハンズオンlab、認定試験、そして展示フロア(Hub)です。ただしHubが開くのは火曜から木曜の3日間だけで、金曜は午前のみの半日です。出展者が床に立てるのは4日ではなく3日、参加者にとって最終日は帰国便と重なりやすい半日、というのが日程の実態です。

  1. 11月16日(月)、pre-day。 バッジとノベルティの受け取りが9:00〜19:00、pre-dayのセッションとlabが12:00〜17:00(太平洋時間)。
  2. 11月17日(火)。 8:00に朝食、Chase Centerへのシャトル、基調講演10:00〜12:00、13:00にHubオープン。夜はウェルカムレセプションとPartner Keynote。
  3. 11月18日(水)。 9:00からセッション、lab、認定試験。Hubとミーティングセンターが稼働し、夜はCelebration。
  4. 11月19日(木)。 セッション、lab、認定試験。Hubはこの日が最終日で、夜はLate Night Labs。
  5. 11月20日(金)。 半日。セッション、lab、そして現地で認定試験を受ける最後の機会。

金曜の実態は、AP Communicationsの井田一貴氏の記述が正確です。「DAY4 は午前中のみとなり、会場も Moscone West のみが開かれておりました。」

基調講演は長く、そして評価が割れます。2025年は150分で、Tony Redmond氏は「After 150 minutes of non-stop high-tech razzamatazz at the Chase Center in San Francisco...roughly an hour longer than it should have lasted」と切り捨て、「Overall, the keynote included just too many demos, most of which attracted desultory levels of applause」とも書いています。一方で演出そのものは複数の日本人参加者が評価しており、NTT東日本のたかひろ氏は「当日の各発表は、円形の会場の周りに配置された舞台を活用した動きのある演出でした」、yasuoyasuo氏は「見やすい会場配置と演出で体験は良かったです」と記録しています。半日仕事として予定を組み、内容そのものは最終日のJapan Wrap-up Sessionで日本語で整理し直すのが現実的です。

現地で本当に希少なのはハンズオンlabの座席です。井田氏は「lab は参加枠が埋まっている場合もあり、現地で参加できないこともありました」と書き、yasuoyasuo氏は「残念ながら環境の不備で参加者皆ハンズオンはうまく実行できなかった」という当日のトラブルまで報告しています。ここで、井田氏が現地で気づいた回避策が効きます。「ハンズオン形式の lab で提供されている内容が GitHub の公開リポジトリとして公開されていることに気付けたことだと思います。」教材が公開されている以上、日本に残った同僚が同じ内容を後から実行できます。座席を取れなかった場合も、渡航しなかった同僚への共有も、この一点で解決します。

認定試験については、2025年は現地参加者にMicrosoft認定1つとGitHub認定1つが無料で提供されました。2026年のアジェンダにも認定試験は3日間にわたって載っていますが、無料である旨はまだ明記されていません。

そして日本企業にとって最も過小評価されているのが、日本語での公式サポートです。米国のカンファレンスとしては異例に手厚く、二つのプログラムがあります。

Japan Wrap-up Session(セッションコードBRK405)。 最終日に日本語で行われる、全体の総括セッションです。井田氏の評価は明快です。「日本から参加している方々にとっての目玉は Japan Wrap-up Session でした!数多のセッションの中から整理された内容を日本語で共有してもらえるセッションです。」内容についても「Ignite 全体の内容が網羅されているため、この時に初めて知る内容も多かったり、抽象度の高い Opening Keynote の内容なども整理された形で再共有いただけたようで、非常に有益なセッションだったと聞きました」と書いています。抽象度の高い基調講演を日本語で噛み砕いてもらえる場だと考えてください。

Japan Networking Lunch。 日本マイクロソフトの担当者や、他の日本企業の現地参加者と話せるプログラムです。ここには申し込みの罠があります。井田氏いわく「こちらは Ignite とは別で申し込みが必要なプログラムで、人気も高いため早めに申し込みをしないと参加できない場合もあったようです。」Igniteの参加登録とは別枠なので、渡航が決まった時点で情報を追ってください。得られるものは井田氏の記述が具体的です。「事業会社の方が取り組んでいることや課題となっていること、同業他社の方と共通で抱えている悩みなどを話しました。普段の業務内だと中々他社の話を聴く機会がないため新鮮でした。」

ただし日本語で完結するわけではありません。廊下の立ち話も、ブースでの会話も英語です。井田氏はそれを前向きに書いています。「普段と異なる環境だからこそ、少し勇気を出して現地の技術者と英語で対話してみるなど、普段避けてしまう行動も勢いでとりやすいかもと感じました。」

参加・出展にいくらかかるのか

参加パスは$2,325、展示フロア中心のHub-only passは$1,625、オンラインは無料です。出展は最小構成の$28,000から始まります。

区分価格内容
Conference pass$2,325Moscone Center全体の対面プログラムとデジタル版へのフルアクセス。昼食・軽食・飲み物込み
Hub-only pass$1,625Hubが開く11月17日〜19日のみ。ブース、Moscone Southでの昼食、シアターセッション
pre-day pass(追加購入)$325Conference passへの追加。販売は開催が近づいてから
Digital pass無料基調講演とセッションのオンライン視聴。渡航不要

価格は据え置きです。2025年のスポンサー向け資料は「Price stability with no major increases this year」と明記しており、2026年のConference passも2025年と同じ$2,325です。早期割引を待つ理由も、値上げ前に駆け込む理由もありません。

出展費用は2025年のスポンサー募集資料が最も確度の高い情報です。6つのティアがあります。

ティアブースサイズ価格主な内容
Vanguard40'×40'$1,000,000パートナー製作ブース、Chase Centerのラグジュアリースイート、専用ミーティングルーム、参加パス20枚、登壇者パス5枚
Catalyst30'×30'$500,000パートナー製作ブース、Chase Centerスイートの追加購入権、参加パス12枚、登壇者パス4枚
Gamechanger20'×20'$255,000パートナー製作ブース、専用ミーティングルーム、参加パス6枚、登壇者パス1枚
Visionary10'×20'$160,000Microsoft提供のターンキーブース、参加パス4枚、登壇者パス1枚
Showcase10'×10'$45,000Microsoft提供のターンキーブース、参加パス2枚
Exhibitor5'×5'$28,000Microsoft提供のターンキーブース、参加パス2枚

物理的な存在感を持つ最低ラインは、5フィート角のポッドで$28,000。来場者に認知される10フィート角のブースで$45,000です。これはブース枠だけの金額で、造作、スタッフの渡航費、什器の輸送費は別に積む必要があります。しかもHubが開くのは3日間です。

2026年の出展価格は未公表です。参加パスが据え置かれていることから2025年と同水準を前提に計画を組むことはできますが、確定した金額は公式の出展問い合わせでしか取れません。上の表は計画用の目安として使ってください。

冠スポンサー枠も別建てで存在します。2025年はコレクタブルウォーターボトルが$250,000(1社限定)、公式バックパックが$80,000(3社限定)、ホテルのキーカードが$25,000(2社限定)でした。ここで効いてくるのが申込期限で、2025年は8月1日から9月20日、開催の2〜3ヶ月前に締め切られています。10月に社内検討を始めた日本企業は、この枠にはもう間に合いません。

宿泊費が読みにくい項目です。Igniteの公式ホテルブロックの料金は公表されておらず、2025年はキーカードのスポンサー枠と併せてMarriott Marquis、W Hotel、Hilton Union Squareの名前が挙がっていることから、公式ブロックはMoscone周辺からUnion Squareにかけてあると見られます。相場感の参考として、同じMoscone周辺で2025年9月のDreamforce週は1泊の中央値が$569、通常週は$305で、87%の上乗せでした。2ヶ月以上前の予約なら中央値$483、直前予約は$587です。これは別のカンファレンスの数字なので、Igniteの料金ではなく「Moscone週にサンフランシスコの宿泊料金全体がどう動くか」の目安として見てください。

渡航費・宿泊費・参加費を合わせた出張総額は、為替と派遣人数で大きく変わります。貴社の条件での概算は、下のツールで数分で試算できます。

Calculate your costs

日本企業にとって行く価値はあるか

判断の分かれ目は一つです。貴社がMicrosoftのパートナー制度の中にいるか、Microsoftの基盤の上で事業を回しているかどうかです。

行くべき企業。 Microsoft AI Cloud Partner Programに参加していて、バッジやdesignationが翌年のco-sellのポジションを左右する企業です。2025年のIgniteでMicrosoftは、Frontier Partnerバッジ、Frontier Distributor designation、Support Services designation、Digital Sovereignty specializationを一度に発表しました。制度改定は自社の売り方を直接変えるため、後から記事で読むのと、その場で担当者に確認できるのとでは意味が違います。福岡のオルターブースが毎年3名のエンジニアを送り続けているのは、この構造があるからです。

もう一群は、AzureとMicrosoft 365を全社基盤として運用していて、AIエージェント前提の組織再設計を検討している事業会社の情報システム部門です。「Frontier Firm」は製品発表というより運用モデルの提案で、その是非を経営に説明する材料が要ります。yasuoyasuo氏が2025年に書いた評価は、その材料として今も有効です。「これまでもMicrosoftの戦略はベンダーロックインと言われることも多くありましたが、一定のオープン性を志向しながら、継続的な運用も見据えた中での全体最適を志向したソリューション群は、現実的な選択肢となっていく場面が増えていく気がします。ただし個別ソリューションの複雑さもかなり高まっているので、導入管理側のスキルはこれまで以上に専門性が必要になることは間違いありません。」この種の判断は、アーカイブ視聴からは出てきません。

行かなくてよい企業。 発表内容を把握することが目的の企業です。Digital passは無料で、2025年は20万人以上がオンラインで視聴しました。ハンズオンlabの教材はGitHubの公開リポジトリに置かれています。12月には日本マイクロソフトが「Best of Microsoft Recap Days Japan」で同じ発表を日本語で再演します。参加費$2,325に往復航空券と現地4泊を足した金額を「発表を知るため」だけに払う理由はありません。

もう一群は、Microsoftエコシステムに接続しない製品を売る企業です。現地の3人に2人は米国人で、来場者の中心はMicrosoft製品の担当者とパートナー企業の営業です。貴社の顧客がそこにいないなら、同じ予算で業界特化の展示会に行くほうが成果は出ます。日本市場向けの商談機会を期待するのも筋が悪く、日本からの参加者は600人、会場全体の3%です。

出展を検討すべき企業。 MicrosoftエコシステムのISVとSIerです。ただし出展の設計は予算より先に決めてください。$28,000の最小枠は5フィート角のポッドで、通りがかりの認知を取れる10フィート角は$45,000。専用ミーティングルームやChase Centerのスイートが付くのは$255,000から上のティアです。そしてIgniteには公募の登壇枠がありません。壇上は買うもので、$500,000のCatalystティアに講演2枠と10分のデモが含まれます。予算が届かない場合の現実的な手は、他社のブース内で話すことです。2025年はCapgeminiがNVIDIAのブース#939で登壇しました。

出展の手応えについて、日本企業からの一次情報はNTT DATAの寺井氏の記録だけです。「現地では、世界各国・多様な業種の参加者と対話することで、AIエージェントに対する具体的な技術ニーズ、現場での運用上の課題、ガバナンスやセキュリティへの高い関心といったリアルな声を得ることができました。」商談件数ではなく、要件の解像度を上げることが出展の実利だという読み方になります。この目的なら$45,000のブースでも成立しますが、リード獲得数を目標に置くなら期待値を下げるべきです。

最後に、反対意見も並べておきます。長年Microsoftを追ってきたTony Redmond氏は2025年の現地体験を踏まえ、「the overall experience made me think that I'll give Ignite a miss for another few years」と書いています。日本語のレポートが一様に肯定的なのは、会社の費用で行った出張の報告という性格も影響しているはずです。両方を読んでから決めるのが健全です。

貴社の状況を踏まえた参加・出展判断のご相談は、下記からどうぞ。

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FAQ

Microsoft Ignite 2026はいつ・どこで開催されますか?
2026年11月17日〜20日、サンフランシスコのMoscone Centerで開催されます。前日の11月16日にオプションのpre-dayがあり、オンライン配信は11月17日〜19日です。初日の基調講演のみChase Centerで行われ、Mosconeからシャトルが出ます。
参加費はいくらですか?
Conference passが$2,325、展示フロア中心のHub-only passが$1,625です。pre-day passは$325の追加購入で、オンラインのDigital passは無料です。2025年から価格は据え置かれています。
英語ができなくても参加できますか?
セッションは英語ですが、日本語の公式プログラムがあります。最終日のJapan Wrap-up Session(セッションコードBRK405)が全体を日本語で総括します。Japan Networking LunchはIgniteとは別に申し込みが必要で、早期に締め切られる場合があります。
Microsoft IgniteとMicrosoft Buildの違いは何ですか?
Igniteは11月開催で、IT専門職・パートナー・ビジネス責任者が主な対象です。Buildは春開催の開発者向けカンファレンスです。2024年にパートナー向けのMicrosoft InspireがIgniteに統合されたため、現在のIgniteは技術者とパートナー企業の営業が同居する場になっています。
出展にはいくらかかりますか?
2025年の公開価格では、最小の5フィート角ブースが$28,000、10フィート角が$45,000です。上位はGamechangerが$255,000、Catalystが$500,000、Vanguardが$1,000,000でした。2026年の出展価格は未公表です。
日本企業も出展していますか?
しています。2025年はNTT DATAがブースを出展し、AIエージェントのデモを実施しました。NEC Solution Innovatorsも参加しています。ただしJETROや自治体のパビリオンのような団体出展の枠はなく、出展は各社単独です。
Microsoft Ignite 2026完全ガイド:日本企業のための参加・出展判断