Black Hat USA · ラスベガス

Black Hat USA 2027完全ガイド:日本企業のための参加・登壇判断

Last updated: August 6, 2026

Black Hat USAは、毎年8月にラスベガスのMandalay Bay Convention Centerで開催される、世界最大級のセキュリティカンファレンスです。2027年の日程は2026年8月6日時点で未発表ですが、公表済みのDEF CON 35の日程から7月31日〜8月5日と推定できます。このイベントの構造は、ほかの展示会とは向きが逆です。ブースを買って出るのではなく、査読を通って登壇する場であり、Briefingsの採択率は約8%、2025年に登壇した日本人は3人でした。最も安い入場パスでも$1,399で、これは当社が調査した米国カンファレンスのなかで最も高い入場料です。この記事では、2026年実績の参加費、8月のラスベガスの暑さ、そして日本人研究者が実際に採択されるまでの道のりを提示します。

約2万人

参加者(2025年実績)

約8%

Briefings採択率

3人

日本人登壇者(2025年)

$1,399

最安の参加パス

Black Hat USAとは何のカンファレンスか

Black Hat USAは、1997年にJeff Moss氏が創設した、セキュリティ研究の発表と実務トレーニングのためのカンファレンスです。中心にあるのはBriefingsと呼ばれる50分の査読付き研究発表で、ベンダーの製品発表の場ではありません。NI&Cの山本仁一氏は2024年の参加報告で、この性格を「ベンダー中立的な環境で最新の研究成果やエクスプロイトを共有」する場だと説明しています。

構成は4つに分かれます。2025年に参加したMBSDの岩崎利己氏の説明が簡潔です。

Black Hatには大別して以下の要素があります。Trainings、Briefings、Arsenal、Business Hallです。

規模は数年間ほぼ横ばいです。2018年が17,000人超(IIJの記録)、2024年が20,000人・117カ国・出展400社(NI&Cの報告)、2025年が現地参加約2万人(日経xTECH)、2026年は主催者が「20,000人超」と告知しました。

創設の経緯が、いまの性格をそのまま説明します。Moss氏はすでにDEF CONというハッカーカンファレンスを持っており、Black Hatはそこで発表される研究を、企業や政府の人間が経費で参加できる形で見せるために作られました。第1回は1997年7月7日〜10日、DEF CON 5の直前です。企業が経費精算できるハッカーカンファレンスという設計が、30年後のいまも残っています。

そして、ほかの展示会との決定的な違いがここにあります。多くの展示会は、費用を払えば出展できます。Black Hatの中核であるBriefingsの枠は、査読でしか手に入りません。

2027年はいつ・どこで開催されるのか

2027年の日程は未発表です。 2026年8月6日時点で、公式のUpcoming Eventsページに Black Hat USA 2027 の項目はありません。掲載されているのは USA 2026、SecTor 2026、Black Hat India 2026、Black Hat MEA 2026、Black Hat Europe 2026、そして日程未定の Black Hat Asia 2027 だけです。日程も、価格も、CFPの締切も出ていません。

それでも、2027年の出張枠を先に押さえる根拠はあります。

  • DEF CON 35は2027年8月5日〜8日、Las Vegas Convention Centerと公式に発表済みです
  • Black HatとDEF CONは1997年から連続して開催されており、実務上はBlack Hatの最終日がDEF CONの初日になります。2026年はBlack Hatが8月1日〜6日、DEF CON 34が8月6日〜9日でした。
  • この規則を当てはめると、Black Hat USA 2027は2027年7月31日(土)〜8月5日(木)が最有力です。

これは推定であり、公式発表ではありません。 航空券を確定する根拠には使えません。一方で、8月のラスベガスは宿泊の需要が高く、正式発表を待ってから動くとホテルの選択肢がほとんど残りません。推定日程で仮押さえし、発表後に確定するのが現実的な進め方です。

会場はMandalay Bay Convention Centerです。近年の開催はすべてここで、2026年も「Mandalay Bayに戻る」という告知でした。開催月は8月でほぼ一貫しています(第1回の1997年のみ7月開催でした)。

2026年の6日間の構成は次のとおりで、2027年も同じ形になる可能性が高いものの、これも確定情報ではありません。

区分2026年の日程
Trainings8月1日(土)〜4日(火)、4日間
Summit Day8月4日(火)
Business Hall8月4日(火)〜6日(木)
Briefings(本会議)8月5日(水)〜6日(木)、2日間

誰が主催しているのか

主催はInforma PLC傘下の「Black Hat, by Informa」です。Informa PLCは英国イングランド・ウェールズ登記の企業で、会社番号は8860726、登記住所は5 Howick Place, London SW1P 1WGです。1997年に個人が創設したカンファレンスが、2度の売却を経て英国の大手B2Bメディア・イベント企業の資産になっています。

時期出来事
1997年Jeff Moss氏が創設。第1回は7月7日〜10日、ラスベガス。DEF CON 5の直前
2005年CMP Media(UBM傘下)に売却。報じられた金額は1億1,390万ドル
2011年Moss氏がBlack Hat Conference Chairに就任。同年ICANNのCSOにも就任
2018年6月InformaがUBM買収に伴いBlack Hatを取得
2025年InformaのFestivals部門に移管。登録システムがinformafestivals.comにあるのはこのため

ここが日本企業にとって重要なところです。 2度の売却を経ても、Briefingsは独立したReview Boardの査読を通っており、採択率は約8%のままです。Informaが収益化しているのはBusiness HallとTrainingsで、Briefingsの登壇枠は売られていません。金額でメインステージの枠を買う仕組みは、パス構成のどこにも見当たりません。つまり、資本力で米国の大手ベンダーに劣る日本企業でも、研究の中身だけで同じ舞台に立てます。

Review Boardは公開されており、2026年のサイトで確認できるメンバーにはSherri Davidoff氏、Lidia Giuliano氏、Jason Haddix氏、Anant Shrivastava氏が含まれます。日本の研究者が論文を投稿する相手は、Informaではなくこのボードです。

創設者のJeff Moss氏についても一つ整理しておきます。同氏はDEF CON(1993年創設)とBlack Hat(1997年創設)の両方を作った人物です。Black Hatは売却済みで、DEF CONは現在も本人のものです。 2つのイベントが毎年8月に連続して開催されるのは、この経緯によります。同じ組織が運営していると誤解されやすい点なので、押さえておいてください。

会場では実際に何が起きるのか

6日間の中身は4つの要素に分かれ、それぞれ別のパスと別の料金体系を持っています。

  1. Trainings。 1日、2日、4日のハンズオン有料コースで、会期の前半に置かれます(2026年は8月1日〜4日)。2026年のカタログには、経験を積んだCISO向けのブートキャンプや、AI・LLMセキュリティを扱うコースが並びました。4日間コースの一つには$500相当のハードウェアキット(PLC本体と部品一式)が価格に含まれています。
  2. Briefings。 50分の査読付き研究発表で、2026年は8月5日〜6日の2日間だけです。このカンファレンスの評判はここから来ています。
  3. Arsenal。 ツールを書いた研究者本人によるオープンソースツールのデモで、Business Hall内に置かれます。NI&Cの山本氏はこれを「セキュリティアナリスト向けの武器庫(Arsenal)」と訳しました。ベンダーフロアに対する、フリーソフトウェア側の対抗軸です。
  4. Business Hall。 400社超が出展します。会場はBayside A、B、C、Dで、2026年の営業時間は火曜16:00〜19:00(Welcome Reception)、水曜9:00〜18:00(Booth Crawl 16:00〜17:00)、木曜9:00〜16:00でした。50分のベンダー主導セッションであるPulse Stages、Community Lounge、2026年に新設されたCyber Districtもここに置かれます。

主催者がスポンサー向けに出している数字では、Business Hallの平均滞在時間は6時間超です。Briefingsは2日しかないのにHallは3日開いているため、週の余白がここに流れ込みます。同じ資料では出展者の91%が来場者の質に満足し、来場者の83%がイベント後にスポンサーと接触する予定だとしています。いずれも開催前に公表された営業用の数字で、事後の実績報告ではない点は割り引いて読んでください。

DEF CONは同時開催ではありません

DEF CON 35は2027年8月5日〜8日、Las Vegas Convention Centerで開催されます。Black Hatの会場から約6km離れた別の会場で、運営組織も別です。バッジは共通ではありません。ただしBlack HatのBriefingsパスとTrainingパスにはDEF CONの事前購入オプションが付いており、Black Hat自身がDEF CON専用の案内ページを持っています。

Black Hat USADEF CON
主催Informa PLCJeff Moss / DEF CON Communications
会場Mandalay Bay Convention CenterLas Vegas Convention Center
参加費$1,399〜$3,399超。法人向けで請求書払いが可能従来は当日現金、はるかに安価
展示400社超のBusiness Hall同種の商業展示フロアはない
参加者CISO、エンジニア、ベンダー、報道、政府研究者、ハッカー、愛好家
CPEクレジットあり主眼ではない

同じ週にBSides Las Vegasも開かれ、3つをまとめて「Hacker Summer Camp」と呼びます。NI&Cの山本仁一氏は2024年にBlack Hat USA 2024とDEF CON 32を同じ出張で回っており、日本から片道十数時間かけて人を送るなら、これが効率的な組み方です。

参加にいくらかかるのか

2027年の価格は未発表です。以下はすべて2026年の実績で、これが2027年を見積もる最も確かな材料になります。

パス価格含まれるもの
Business Pass$1,399Business Hall、基調講演、Arsenal
Summit Pass$2,499選択したSummit、および上記
Briefings Pass$3,399(現地価格)Briefings 2日間、上記、録画視聴、CPE、DEF CON事前購入オプション
Briefings + Summit$4,499公式表記は「Best value」
Academic$1,999Briefingsのみ。2026年は7月3日で締切
グループ(6〜14名)1人$2,999一括登録・一括支払いが条件
グループ(15名以上)1人$2,899同上
Trainings1コース$3,000〜$5,000超別料金。コース単位で設定

Briefingsの価格には注意してください。 2026年の公式サイトは、同じ登録ページの3か所で3つの異なる金額を出しています。現地価格の見出しが$3,399、グループ登録表の基準額が$3,199、バンドル説明のなかでは$3,100です。どれもblackhat.com上の記載で、この食い違いは解消されていません。単一の正しい価格を前提に稟議を組まず、登録画面に出た金額で確定してください。

Trainingsの価格はコースごとに設定され、スケジュールページには載りません。二次情報では2日または4日のコースで$3,000〜$5,000超、2024年時点の別の情報では$4,000〜$4,500とされています。Black Hat自身の告知で確認できた2026年の特定コースは$4,100(7月19日までの価格)でした。

TrainingsとBriefingsの両方に出る日本人エンジニアは、登録費だけで$7,000〜$9,500程度になります。 航空券と8月のラスベガスの宿泊費は、これとは別に積み上がります。

円建ての感覚を持つには、IIJの2018年の記録が役に立ちます。当時、Briefingsが2日間でおよそ24万〜30万円、Trainingが1日あたり12万〜20万円でした。8年前の水準ですが、桁感の目安にはなります。

無料のパスは存在しません。 最も安い入り口が$1,399のBusiness Passで、これは当社が調査した米国カンファレンスのなかで最も高い入場料です。事前登録すれば入場が無料になるFABTECHのような産業展示会とは、収益構造そのものが違います。Black Hatは来場者から取り、産業展示会は出展者から取ります。

出展・スポンサーの費用

公開されていません。 公式のスポンサーページは、すべて問い合わせフォームに誘導します。手がかりになるのは二次情報だけです。

  • Exhibitor / Silverティアが$30,000〜$60,000、Gold / Platinumが$75,000〜$150,000(展示会情報サイトによる推計)
  • Rapid7が2015年に当時の資料を読んで書いた記事では、最上位が約$150,000、最小枠が約$30,000でスタッフパス10枚込み
  • 2013年のスポンサー資料はいまもオンラインにあり、1泊$15,000のホテルルームドロップ(1晩3件まで)といった追加メニューが載っています

いずれも11年前後の古さで、現在の価格の裏付けにはなりません。実額を知るには問い合わせるしかない、というのが正直な結論です。

そして、日本企業向けの支援は存在しません。 JETROのジャパンパビリオンも、団体出展枠も、政府の補助ルートも、どの資料にも見つかりませんでした。出展するなら、Informaと直接、商業レートで契約することになります。

渡航費、宿泊費、参加費を合わせた出張総額は、人数と為替で大きく変わります。貴社の条件での概算は、下のツールで試算できます。

Calculate your costs

日本からラスベガスへはどう行くのか

日本とラスベガスを結ぶ直行便はありません。8月に運航しているノンストップ便は、日本のどの空港からも存在しません。乗り継ぎが前提です。

検索の落とし穴も同じです。集約サイトが成田〜ラスベガスの「直行便」を表示することがありますが、これはアメリカン航空がJALと共同でCES(毎年1月開催)に合わせて臨時運航する、10日ほどの季節便です。Black Hatは8月で、この便は飛びません。

経路は2つに絞られます。

1. 米国内で乗り継ぐ。 ロサンゼルス(LAX)、サンフランシスコ(SFO)、シアトル(SEA)、ダラス(DFW)、ホノルル(HNL)が候補です。入国審査と預け荷物の受け取りは、ラスベガスではなく最初に降りた米国の空港で行います。LAXでの国際線から国内線への乗り継ぎは最低2時間が目安で、入国審査は平均40分、混雑時は90分を超えます。

2. 仁川(ICN)で乗り継ぐ。 大韓航空が仁川〜ラスベガス間に通年・毎日運航のノンストップ便を持っています(所要約11時間45分〜13時間30分)。この経路の実務的な利点は、米国の入国審査がラスベガスになることです。LAXよりはるかに小さな空港で、行列も短くなります。

ドアツードアの所要時間は、どちらの経路でも13〜17時間超を見込んでください。

8月のラスベガスの暑さは、別枠で考えてください

平均最高気温は39°C(102〜103°F)、平均最低気温は26°C(78°F)です。日中43〜47°C(110〜117°F)に達する日もあります。年間で最も暑い月で、砂漠性の乾燥した暑さです。

実務上の帰結は3つあります。午後にストリップのホテル間を歩いて移動するのは避けてください。水分補給は任意ではありません。そして体調を崩す最大の要因は、屋外の39°Cと強く冷房の効いたボールルームを1日に何度も往復することです。

FFRI Securityの松尾和輝氏は、2025年の登壇報告のなかでこれを2度書いています。

ラスベガスで病気になったら本当に地獄です。

海外のカンファレンスは健康ならば楽しい出張ですが、体調不良の場合はトラウマレベルの体験になります。

当社が調査したカンファレンスの現地報告のなかで、最も強い警告です。書いたのは観光客ではなく、実際にBriefingsの壇上に立った研究者です。

See itineraries

日本人はどれくらい参加・登壇しているのか

少ないです。2025年のBlack Hat USAで登壇した日本人は3人で、現地参加者は約2万人でした(日経xTECH)。

参加者側も同じ規模感です。MBSDの岩崎利己氏は2025年にTrainingsを受講し、自分のコホートについてこう書いています。

この少ない参加人数の中で、日本人参加者が私を含め4人いらっしゃいました。

登壇と講師の側で確認できた日本人は次のとおりです。

  • 松尾和輝(FFRI Security 基盤技術研究部)。Briefings登壇、2024年と2025年の2年連続。2025年の発表は「Shade BIOS: Unleashing the Full Stealth of UEFI Malware」
  • 鈴木博志(IIJ)。2018年、日本人として初のBlack Hat USA Training講師。4日間コース「Practical Incident Response With Digital Forensics and Malware Analysis」、受講33名
  • 中島明日香(セキュリティ研究者)。14歳でBlack Hat登壇を目標に定め、約15年後に達成
  • NTTデータ。社員の論文がBlack Hat Asia 2026のBriefingsに採択

ベンダー側で上位に食い込んでいるのは1社だけです。TrendAI(トレンドマイクロのAIブランド)は2026年のStrategic Partner、つまり最上位のApex Partnerに次ぐ第2ティアのスポンサーです。東京に本社を置く企業が、米国最大級のセキュリティカンファレンスの上位スポンサー枠にいる唯一の例で、同じブランドはRSAC 2026にも出ていました。なお、Business Hallの出展者名簿は本記事の調査では確認していないため、これ以外に日本企業が出展しているかどうかは不明です。

英語については、2つの世代の答えが並んでいるのが興味深いところです。2018年に講師を務めた鈴木氏は「言葉の壁にひるまず、ぜひ様々な方にこうした挑戦を行ってほしい」と書きました。2025年に参加した岩崎氏は「英語も、AIや翻訳技術の進化によって気にならないレベルにまで来ています」と書いています。7年で前提が変わりました。ただし聞く側と話す側は別です。登壇や講師を目指すなら、質疑応答はその場の英語で受けることになります。

Briefingsに登壇するにはどうすればいいのか

Briefingsの採択率は、2024年の募集で約8%でした。日経xTECHはこれを狭き門と表現しています。投稿先は独立したReview Boardで、スポンサー枠から登壇する経路はありません。研究の中身だけが評価されます。

では実際にどれくらいの時間がかかるのか。FFRI Securityの松尾和輝氏が2025年に登壇するまでの経緯が、日本語で読める最も具体的な記録です。

研究のアイデアは修士課程のときに生まれ、2023年8月から12月まで取り組み、そこで一度中断しています

本研究は、私が修士 2 年の 2023 年 8 月 ~ 2023 年 12 月の間で取り組んでいたのですが、実現できそうになく一度中断しました。

再開は2024年12月です。CFPへの投稿が2025年3月下旬、登壇が2025年8月。再開から壇上まで約8ヶ月、最初のアイデアから数えると2年、途中に1度の断念を挟んでいます。

諦めかけた地点についても、本人が率直に書いています。

私であれば、このタイミングで原理的に無理だと判断し、諦めていたと思います。

採択される研究がどういう問いから始まるかも、彼の言葉が示しています。

BIOS という一番権限の高いレイヤーまで感染できたのに、何故またカーネルやユーザーランドという弱い権限の所にシェルコード等を配置して悪性挙動を行うのだろうか

もう一つの経路がTrainingsの講師です。2018年に日本人として初めて選ばれたIIJの鈴木博志氏は、動機をこう書いています。

日本のセキュリティ技術や事案対応能力が世界でもトップクラスであることを証明したかった

彼は日本のエンジニアがこの役割に向いていると考え、100を超える演習からなる4日間のコースを組み立てました。受講後も自力で練習を続けられるよう、使うツールはすべてフリーかつオープンソースに絞っています。定員30名に対して受講者は33名、米国、欧州、中東、アジアから集まり、日本からも複数名が参加しました。

彼が記事の最後に置いた一言が、この記事で一番伝えたいことでもあります。

世界との距離は意外に近い

日本企業にとって行く価値はあるか

判断の分かれ目は、貴社がBlack Hatに何を持っていくかです。ブースを持っていくなら、費用に対して得るものは薄いです。研究を持っていくなら、これ以上の場所はありません。

登壇を狙うべき企業。 独自のセキュリティ研究を持つ日本のベンダーと研究部門です。査読は研究の中身だけを見ます。スポンサー枠から登壇する経路がないということは、裏を返せば、営業予算で米国大手に負けている企業でも研究で勝てるということです。FFRI Securityは1人の研究者で2年連続の登壇を実現しました。採択率8%は確かに低いものの、抽選ではありません。

Trainings講師を狙うべき企業。 インシデント対応、フォレンジック、マルウェア解析のように、日本国内で実務経験が厚く積み上がっている領域を持つ企業です。鈴木氏の2018年のコースは、この領域の日本の実力が世界に通用することを示しました。なお2018年以降に日本人が講師を務めた事例は、本記事の調査では確認できていません。確認できなかっただけで存在しないとは限りませんが、少なくとも空いている枠には見えます。

学びに行くべき企業。 実務スキルを上げたいエンジニアを抱える企業にとって、Trainingsは有効な投資です。MBSDの岩崎氏は入社2年目でTrainingsに参加し、難読化とEvasionについて持ち帰った理解を具体的に書き残しています。

新しい手法をゼロから研究するよりも、既存の検出を回避するために難読化を深く理解し適用することが価値が高い

Evasionとは「検知されない」ではなく「攻撃実行からインシデント発生までの時間を延長し、ゴール達成のチャンスを最大化するもの」

彼はObfuscation Competitionで「MOST UNIQUE code」に選ばれ、チャレンジコインとトレーニングバウチャーを持ち帰りました。入社2年目のエンジニアが結果を出せる場です。

出展を見送るべき企業。 日本のセキュリティベンダーの大半がここに入ります。理由は3つあります。第1に、公開価格がなく、$30,000〜$150,000という二次情報の帯しか手がかりがありません。第2に、日本企業向けの支援が何もありません。ジャパンパビリオンも、団体出展枠も、補助制度も存在しないので、Informaと単独で商談することになります。第3に、上位スポンサーの顔ぶれがCisco、Microsoft、Google Cloud Security、Wiz、SentinelOne、Tenableといった製品ベンダーとハイパースケーラーで占められており、SIerもコンサルティング会社も業界団体も入っていません。この来場者が探しているものと、日本のSIerが売っているものは、そもそもずれています。

買いに行くだけの企業。 $1,399のBusiness Passで400社超を3日間かけて回れます。主催者が示す平均滞在6時間超という数字は、来場者が実際にここで時間を使っていることを示しています。ただし$1,399は入場無料の産業展示会とは前提が違い、渡航費を足すと1人あたりの単価は相当高くつきます。製品の比較検討だけが目的なら、国内の展示会やオンラインの製品評価で足りることが多いはずです。

日程の扱い方。 2027年の日程は未発表です。DEF CON 35(2027年8月5日〜8日)から推定すると7月31日〜8月5日ですが、あくまで推定です。正式発表を待ってからホテルを取ると、8月のラスベガスでは選択肢がほとんど残りません。推定日程で仮押さえし、発表後に確定させるのが実務的な進め方です。

登壇を狙うのか、学びに行くのか、買いに行くのか。目的によって必要な予算も期間も変わります。貴社の状況を踏まえた参加・登壇判断の相談は、下記からどうぞ。

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FAQ

Black Hat USA 2027の開催日はいつですか?
2026年8月6日時点で未発表です。ただしDEF CON 35が2027年8月5日〜8日と公表されており、Black Hatの最終日がDEF CONの初日になる慣例から、2027年7月31日〜8月5日と推定できます。これは推定であり、公式発表ではありません。
参加費はいくらですか?
最も安いBusiness Passで$1,399です(2026年実績)。Briefings Passが$3,399、Summit Passが$2,499。Trainingsは1コース$3,000〜$5,000超で別料金です。TrainingsとBriefingsの両方に出ると、登録費だけで$7,000〜$9,500程度になります。
日本人はどれくらい登壇していますか?
2025年のBlack Hat USAで登壇した日本人は3人です。参加者約2万人に対する数字です。Briefingsの採択率は2024年の募集で約8%でした。講師側では、IIJの鈴木博志氏が2018年に日本人初のTraining講師に選ばれています。
ブース出展はできますか?
できますが、日本企業向けの支援はありません。JETROのジャパンパビリオンも団体出展枠も存在せず、Informaと直接契約します。スポンサー価格は非公開で、二次情報では最小枠$30,000、最上位$150,000程度とされています。
英語ができなくても参加できますか?
セッションはすべて英語です。2025年に参加したMBSDの岩崎利己氏は「英語も、AIや翻訳技術の進化によって気にならないレベルにまで来ています」と書いています。ただし登壇や講師を目指す場合、質疑応答はその場の英語で対応することになります。
8月のラスベガスはどのくらい暑いですか?
平均最高気温39°C、平均最低気温26°Cです。日中43〜47°Cに達する日もあり、砂漠性の乾燥した暑さです。屋外の徒歩移動は避けてください。2025年に登壇したFFRIの松尾和輝氏は「ラスベガスで病気になったら本当に地獄です」と書いています。
Black Hat USA 2027完全ガイド:日本企業のための参加・登壇判断