IBM Think · ボストン

IBM Think 2027完全ガイド:日本企業のための参加判断

最終更新:2026年8月6日

IBM Think 2027は、2027年6月7日〜10日に米国ボストンで開催されるIBMの旗艦カンファレンスです。結論から言えば、IBMのビジネスパートナーである日本のSIer・リセラー、そしてIBM Z、watsonx、Red Hatを基幹システムで使う大企業のIT責任者には行く価値があります。逆に、IBMと取引のない企業が市場観測や製品比較のために行く場ではありません。ここは中立の展示会ではなく、来場4,600人(2026年実績、主催者発表)の全員がIBMの戦略を聞きに来る、経営層向けのベンダーイベントだからです。この記事では、2027年について確定している事実と2026年・2025年の実績を分けたうえで、参加費、日本からの参加実態、そして「出展枠は存在しない」という事実まで並べます。

4,600人

来場者(2026年実績)

約250人

日本からの参加(2026年)

$1,899

参加費(2026年実績)

85か国

参加国(2026年実績)

IBM Thinkとは何のカンファレンスか

IBM Thinkは、IBMが年に1回開く自社最大のカンファレンスで、基調講演・製品発表・パートナー交流を4日間に束ねた場です。第1回は2018年3月のラスベガス開催で、それまで別々に開かれていたInterConnect、World of Watson、Edgeなどの自社イベントを統合し、30,000人超を集める巨大イベントとして始まりました。

現在の姿はまったく違います。2025年は4,402人、2026年は主催者発表で4,600人。規模が縮んだのではなく、対象を絞り直した結果です。技術者向けのハンズオンやラボはIBM TechXchange(2026年は10月26日〜29日、アトランタ開催)に分離され、Thinkは「C-level、事業部門、シニアITリーダー向け」と公式FAQが明言する経営層イベントになりました。同伴者の入場は不可、参加は21歳以上、服装はビジネスカジュアルです。

2026年のテーマは、AIファースト企業、ハイブリッドクラウド、量子コンピューティングの3本柱でした。現地の空気は、13名で参加した日本情報通信(NI+C)の土橋氏の記録が端的です。

会場はどこを見渡しても「AI」の文字があり、AIがいかに企業の変革を牽引する重要なテクノロジーであるかを、実感した4日間でした。

もう1つ、性格を正確に掴むための事実があります。基調講演の来場者側の登壇者は、Elevance Health、Cleveland Clinic、Royal Bank of Canada、Nationwide Building Societyといった、いずれもIBMの大口顧客の経営幹部です。壇上も客席もIBMエコシステムの内側で構成されています。

2027年はいつ・どこで開催されるのか

2027年6月7日(月)〜10日(木)、ボストンで開催されます。2027年について公表されているのはこの日程と都市だけです。市内のどの会場かは未発表で、参加登録も2026年8月6日時点で開いていません。2026年の登録が前年12月2日に開始された実績から、2027年も年末前後の開始と見るのが妥当ですが、これは推測です。

会場の推移には流れがあります。2024年〜2025年はバックベイ地区のHynes Convention Center、2026年は規模拡大に伴いシーポート地区のThomas M. Menino Convention & Expo Center(MCEC、旧BCEC)に移りました。IDグループの現地レポートは「今年は参加者数の増加に伴い、より大きな会場へと移して開催されており、その規模の拡大が印象的でした」と記録しています。2027年もMCECが有力ですが、確定情報ではありません。

日本企業にとって見逃せないのが開催月の変更です。Think 2025(5月5日〜8日)もThink 2026(5月4日〜7日)もゴールデンウィークと丸かぶりでした。それでも日本から約250人が参加しており、IDグループのレポートは「開催時期がゴールデンウィーク中だったことを考えると、その参加規模は特に注目に値します」と書いています。2027年の6月開催は、ボストン開催になって以来初めてGWと重ならない日程です。社内調整の難度は明らかに下がります。

項目内容
直行便JALの成田(NRT)〜ボストン・ローガン空港(BOS)線が唯一。所要約13時間
羽田・他社羽田発の直行便なし。ANA、ユナイテッド航空もボストン直行便なし
空港から会場エリアローガン空港からシーポート地区へはMBTAシルバーラインが空港発は無料。タクシーなら10分弱
6月上旬の気候日中の最高25°C前後、朝晩16°C前後。月間降水量は約100mm
ホテル公式ホテルは参加登録後にAttendee Portal経由で予約。会場3マイル圏内、シャトルなし
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誰が主催しているのか

主催はIBM自身です。RSA ConferenceのようにイベントLLCが独立しているわけでも、業界団体が招集しているわけでもありません。議題はIBMの戦略発表そのものであり、それがこのイベントの価値でもあり限界でもあります。運営実務(登録、ホテル、ゲスト対応)はイベント会社GPJに委託されていますが、招待と中身はIBMが握っています。

登壇の中心は会長兼CEOのArvind Krishna氏です。2026年の開幕基調講演のタイトルは「Win the enterprise AI race」。同氏はAIによる企業変革をまだ「Day Zero(0日目)」と位置づけ、AIを前提に事業を組み直す「AIファースト」への転換を説きました。姿勢を一言で示したのが週刊BCNが記録したこの発言です。

We want to be open, hybrid, sovereign, responsible.(私たちは、オープンで、ハイブリッドで、主権を持ち、責任ある存在でありたい)

主催者がIBMであることは、イベントの設計にそのまま表れています。第一に、技術者はTechXchangeへという分業。IBM自身が「Thinkは次を定義する場、TechXchangeはそれを実装する場」と公式サイトで説明しています。第二に、地域展開。Think on Tourとしてマドリード、シンガポール、ムンバイ、ロンドンなどを巡回し、東京は2026年9月開催、ただし招待制のみという位置づけです。第三に、C-suite限定の招待制プログラムSenior Leadership Exchangeが本体の中に別枠で存在します。ボストンに行かずに済む道は一応あるものの、日本で誰でも申し込める形にはなっていません。

どんな企業・人が参加しているのか

参加者は経営層とIT部門の責任者に絞られています。公式FAQの想定参加者は「C-level、事業部門、シニアITリーダー」で、2026年実績は85か国から4,600人(主催者発表)。現地の報告では「5,000人超」という数字も出ており(NI+C、週刊BCN)、公表値との差はバッジ種別の範囲と見られますが確認できていません。本記事では主催者発表の4,600人を基準にします。

日本からの参加は数字がはっきりしています。2025年は234人(パートナー企業126人、ユーザー企業108人)、2026年は約250人。4,600人の5%超が日本からという計算で、これは当サイトが扱う米国カンファレンスの中でも際立って高い比率です。週刊BCNは現地からこう伝えています。

グローバルから5000人以上が参加した今回のイベントで、日本からも250人を超えるユーザーやパートナーらが集まった。

ただし、その中身に注意してください。日本語で参加レポートを公開しているのは、日本情報通信(13名参加)、エヌアイシー・パートナーズ、ソルパック(IBM Champions在籍)、iWorld(JBCCグループ)、IDグループと、確認できた限りすべてIBMパートナー企業です。IBMと取引のない日本企業の参加記録は見つかりませんでした。日本IBMの村田将輝副社長・川上結子常務も現地で取材対応しており、日本のパートナー・顧客向けのネットワーキング機会も公式に用意されています。日本人が孤立するイベントではありません。IBMエコシステムの外の企業に居場所がないだけです。

スポンサーは2026年に49社。AWS、Microsoft、Google Cloud、Oracle、Salesforceといった競合他社が並ぶ点は、ハイブリッド戦略を掲げるIBMらしい構成です。コンサルティング勢(Accenture、Deloitte、EY、KPMG、McKinsey、BCG)と流通(Arrow、Ingram Micro、TD Synnex)が厚く、日本関連ではSMSデータテックとStraker Japanが名を連ねています(当社DB、確度85)。

会場では実際に何が起きるのか

4日間の中身は、基調講演での製品発表、体験型の展示フロア、そしてパートナー交流の3つです。2025年の構成では初日がPartner Plus Day(パートナー限定セッション)、2日目以降が本体という2部構成でした。

2026年の発表は具体的で、日本の稟議書に書ける数字が揃っています。ソフトウェア開発ライフサイクル全体を支援するAIエージェント「IBM Bob」のグローバル展開(IBM発表では社内8万人超が利用し平均45%の生産性向上)、規制産業向けにデータ主権を担保する「IBM Sovereign Core」の一般提供開始、約110億ドルで2026年3月に買収完了したConfluentによるリアルタイムデータ基盤、複数AIエージェントを統制するwatsonx Orchestrateの強化、そして2029年までに誤り耐性量子コンピュータ(FTQC)を提供するロードマップです。量子については、病院の顧客が分子間相互作用の解析を従来比100倍に高速化した事例が紹介されました(IDグループのレポートより)。

導入効果の訴求もIBMイベントらしい振り切り方です。IBM自身の日本語レポートには、14人のJava開発者で9か月かかる見積もりだったレガシーコードのモダナイズをBobが3日で終えたというBlue Pearl社CEOの証言が載っています。IBM経由の発表値である点は割り引いて読むべきですが、発表の熱量の水準は伝わるはずです。

現場の空気を最もよく伝えるのは、エヌアイシー・パートナーズの海野氏が拾った会場の言葉です。

会場で何度も耳にしたのが、「PoC(概念実証)は好きではない」「技術だけでは不十分」という言葉でした。

展示フロアには本物のF1カーと特大の立体Bob像が置かれ、カフェではBobのラテアートが出る。夜はDJと生バンド入りのレセプションで各国の参加者と交流する。この振り幅も含めて、勉強会ではなく祭典です。そして持ち帰るものについて、NI+Cの土橋氏はこう締めています。

「AIの導入を検討する」というフェーズはとうに終わり、「いかにしてAIをビジネスの核に組み込むか」という実行フェーズへ世界が猛スピードで移行している

参加・出展にいくらかかるのか

2027年の料金は未発表です。基準になる2026年実績は次のとおりで、構造は極めてシンプルでした。

パス(2026年実績)価格備考
標準$1,899一本価格。早期割引の段階制なし
政府・公共部門$849官公庁・軍・教育機関のメールアドレスと本人確認が必要

登録は2025年12月2日開始、キャンセルは開催約1か月前(2026年は4月3日)まで全額返金でした。パスの社内付け替えも同日までは無料です。RSA Conferenceのような$149の展示のみパスは存在せず、部分参加の選択肢はありません。

出展については明確に書いておきます。一般公募の出展枠はありません。IBMの自社イベントなので、会場に自社ブースを出せるのは交渉制のスポンサーだけで、公開された料金表はなく、当社DBにもブース価格の記録はゼロです(2026年スポンサー49社)。「Thinkに出展して米国市場に売り込む」という計画は、IBMとのパートナー関係を先に築かない限り成立しません。売り込みたい企業にとっての現実的な選択肢は、開かれた出展枠のある別の展示会です。

渡航費を含めた総額は、直行便がJAL成田線のみという制約と6月のボストンのホテル相場次第で変わります。貴社の人数と日程での概算は、下のツールで試算してください。

費用を試算する

日本企業にとって行く価値はあるか

判断基準は1つだけです。貴社がIBMエコシステムの内側にいるかどうか。内側にいるなら費用対効果は高く、外側にいるなら$1,899と渡航費に見合うものはほぼ何もありません。

行くべき企業。 第一に、IBM製品を扱う日本のSIer・リセラー・ディストリビューターです。初日のPartner Plus Dayは文字どおりパートナーのための日で、日本勢はすでに毎年250人規模の「代表団」を形成しています。エヌアイシー・パートナーズの海野氏のように日本のパートナーが現地パネルに登壇する例もあり、聞くだけの場ではなくなっています。第二に、IBM Z、watsonx、Red Hatを基幹に据える事業会社のIT責任者・CIOです。メインフレームのモダナイズ計画や、AIエージェントのガバナンス設計は、製品ロードマップを幹部から直接聞けるかどうかで精度が変わります。2026年の発表(Bob Premium Package for Z、Sovereign Core)は、まさにその層に向けたものでした。

行かなくてよい企業。 まず、IBMと取引がなく、今後も予定のない企業です。ここで得られる情報はIBMの戦略であって、市場の中立な見取り図ではありません。ベンダー横断で市場を観測したいなら、独立系イベントのほうが目的に合います。次に、出展して売り込みたい企業。前述のとおり出展枠自体が存在しません。そして、ハンズオンで技術を習得したいエンジニア。IBM自身がその目的にはTechXchange(10月、アトランタ)を指定しています。最後に、「まず様子を見たい」層には、招待が取れるならThink on Tour Tokyo(2026年9月、招待制)という低コストの入口があります。ただし招待制である以上、これもIBMとの関係が前提です。

費用面の目安も置いておきます。参加費$1,899は、AWS re:Inventの標準パス$2,499(2026年)やRSA ConferenceのAll Access($2,195〜$2,995、2026年)より安く、4日間の経営層イベントとしては標準的な水準です。差が出るのは渡航で、成田発JAL直行便の一択という制約は、羽田発直行便が3社あるサンフランシスコ系イベントより明確に不便です。

最後に、このイベントの本質を突いた一文を置きます。IDグループのレポートの結びです。

レガシーシステムと強く結びついた企業が、ここまで積極的に新興技術へ向かっていることは、ある意味で驚きでもあります。

日本企業の基幹システムとIBMの結びつきは深く、だからこそ日本からの参加比率は世界でも突出しています。貴社がその輪の中にいるなら、2027年は6月開催になりGWの制約も消えました。行く判断も、行かない判断も、貴社の状況を踏まえて下記からご相談ください。

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よくある質問

IBM Think 2027はいつ・どこで開催されますか?
2027年6月7日〜10日、米国マサチューセッツ州ボストンで開催されます。公式サイトが日程と都市を発表済みですが、市内のどの会場かは2026年8月時点で未発表です。2026年はシーポート地区のThomas M. Menino Convention & Expo Center(旧BCEC)でした。
IBM Thinkの参加費はいくらですか?
2027年の料金は未発表です。2026年実績では標準価格が$1,899の一本で、早期割引の段階制はありませんでした。政府・公共部門向けは$849です。2026年の登録は前年12月2日に開始されたので、2027年も年末前後の開始が目安になります。
日本からは何人くらい参加していますか?
2025年は総参加4,402人のうち日本から234人(パートナー企業126人、ユーザー企業108人)、2026年は約250人でした。来場者全体の5%超が日本からという、米国テックカンファレンスとしては際立って高い比率です。参加企業はほぼすべてIBMパートナーです。
日本からボストンへの直行便はありますか?
JALの成田〜ボストン線が唯一の直行便で、所要約13時間です。羽田発の直行便はなく、ANAとユナイテッド航空も直行便を持ちません。成田発が取れない場合は米国内か羽田での乗り継ぎになります。
IBM Thinkに出展(ブース設置)はできますか?
一般公募の出展枠はありません。IBM自社イベントのため、会場に立てるのは交渉制のスポンサーのみで、料金表も公開されていません。2026年のスポンサーは49社で、AWSやMicrosoftなどの大手と、SMSデータテックなど少数の日本関連企業が含まれます。
エンジニアはThinkとTechXchangeのどちらに行くべきですか?
ハンズオンが目的ならIBM TechXchange(2026年は10月26日〜29日、アトランタ)です。ラボや技術認定はそちらに集約されており、Thinkは経営層・IT部門長向けの戦略イベントと明確に分業されています。IBM自身がそう位置づけています。
IBM Think 2027完全ガイド:日本企業のための参加判断