AI+ Expo · ワシントンD.C.
AI+ Expo 2027完全ガイド:日本企業のための参加・出展判断(ワシントンD.C.)
最終更新:2026年8月6日
AI+ Expo 2027は、2027年5月24日〜25日にワシントンD.C.のWalter E. Washington Convention Centerで開催される、AIと国家安全保障・国家競争力をテーマにした米国最大級のイベントです。主催は元Google CEOのエリック・シュミット氏が設立したシンクタンクSCSPで、参加は無料、ブースは$2,200からという、米国の大型テックイベントとしては異例の設計です。結論から言えば、防衛・デュアルユース(軍民両用)技術で米国の政府エコシステムに接点を作りたい日本企業には行く価値があり、商用AIプロダクトの商談やリード獲得が目的なら向いていません。来場者データに買い手の内訳が存在しない一方、登壇者は閣僚・政府機関トップ級が並ぶという、普通の展示会とは別物の場だからです。この記事では、2027年について確定している事実と過去回の実績を分けたうえで、費用、日本との接点、そして輸出管理まで含めた出展の注意点を並べます。
1.8万人超
登録者数(主催者公表)
200社超
出展(2026年実績)
無料
参加費
$2,200
最小ブース(2027年)
AI+ Expoとは何のカンファレンスか
AI+ Expoは、AIそのものの技術カンファレンスではなく、AIを国家競争力と安全保障の文脈で扱う政策×産業イベントです。第1回(2024年)の正式名称は「AI Expo for National Competitiveness」、つまり「国家競争力のためのAI博覧会」でした。米中技術競争で米国と同盟国が優位を保つ、という主催者の問題意識がイベント名そのものに書かれていた、と理解するのが正確です。
規模の推移は次のとおりです。2024年5月7日〜8日の第1回は開催前発表で出展160社超、国立研究所の報告では「数千人の登録者」を集めました。2025年6月2日〜4日の第2回は主催者発表で参加者15,000人超。2026年5月7日〜9日の第3回は講演者600人超、セッション300本超、出展200社超、スポンサー30社超でした。2027年の公式サイトは登録者18,000人超を掲げています。いずれも登録者ベースの数字であり、実際の来場者数は一度も公表されていません。無料イベントの登録者数は有料イベントの来場者数と同じ尺度では読めない、という点は押さえておいてください。
第1回を取材した独立ジャーナリストのJack Poulson氏は、このイベントを「ワシントンD.C.に集まった米テック企業の集積として史上最大」と評しました。同氏が記録した壇上の発言に、この場の空気が凝縮されています。
If we lose the debate, we will not be able to deploy any army in the West, ever.
Palantir CEOのアレックス・カープ氏が、AIの軍事利用をめぐる世論との「論争」に負ければ西側は軍を展開できなくなる、と述べたものです。日本の展示会の感覚で「AI EXPO」という名前から想像する場とは、まったく別のものだと考えてください。なお、東京ビッグサイトの「AI・人工知能EXPO」とは名前が似ているだけの無関係なイベントです。
2027年はいつ・どこで開催されるのか
2027年5月24日(月)〜25日(火)の2日間、ワシントンD.C.のWalter E. Washington Convention Centerで開催されます。4回目の開催です。注意すべき変化が1つあります。2026年までの3日間から、2027年は2日間に短縮されました。公式サイト自身が「D.C.での集中した2日間」と表現しており、会期は絞られる設計です。
2027年について公表されているのは、日程、会場、出展料金、参加無料の方針までです。講演者、セッション、併催イベントの詳細は2026年8月6日時点で未発表で、公式サイトのスケジュールページはまだ2026年版のままです。本記事でこれ以降に出てくる数字は、断りのない限り過去回の実績値です。
日本からの渡航は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 直行便 | 羽田(HND)からワシントン・ダレス国際空港(IAD)へ、ANAとユナイテッド航空が運航 |
| 所要時間 | 約13〜14時間。ANAの羽田〜ワシントンD.C.線は2026年7月に就航40周年を迎えた老舗路線です |
| 注意 | 市内に近いレーガン・ナショナル空港(DCA)への日本直行便はありません |
| 会場アクセス | 会場はダウンタウンのMt. Vernon Square。地下鉄Mt Vernon Sq 7th St-Convention Center駅(グリーン・イエロー線)が最寄りです |
| 5月下旬の気候 | 日中25〜27°C前後。湿度が上がり始め、午後に雷雨が来る時期です |
| 入国 | ESTAが必要です(通常の米国出張と同じ) |
誰が主催しているのか
主催のSCSP(Special Competitive Studies Project、特別競争研究プロジェクト)は、バージニア州アーリントンにある民間財団です。設立の経緯がこのイベントの性格をそのまま説明します。米議会が設置したAI国家安全保障委員会(NSCAI)が2021年10月1日に解散すると、委員長を務めた元Google CEOのエリック・シュミット氏がその4日後にSCSPを立ち上げ、NSCAIのスタッフの多くがそのまま移籍しました。CEOのYlli Bajraktari氏はNSCAIの事務局長だった人物です。運営資金はシュミット家の私的財団(The Eric & Wendy Schmidt Fund for Strategic Innovation)が支え、スタッフは約52名です。
つまりAI+ Expoは、解散した政府委員会の政策アジェンダを民間財団が引き継ぎ、それを産業界と政府を動員する年次イベントに翻訳したものです。営利イベント会社の展示会ではありません。それを最もよく示すのが料金設計です。参加は無料、政府機関のブースも無料、学術・非営利にも無料枠があります。主催者が売っているのは床面積ではなく、「政府・軍・産業・同盟国が一堂に会した」という事実そのものです。
併催イベントとして、国家安全保障の上級者向け戦略サミットが毎年並走します。2024年と2025年は「Ash Carter Exchange」(元国防長官アシュトン・カーター氏を記念)、2026年は「The Exchange」の名称で「America at 300:Force of the Future」をテーマに開催されました。展示フロアの無料バッジとは別枠の位置づけで、参加形態の詳細は公表されていません。
どんな企業・組織が参加・出展しているのか
出展フロアの顔ぶれは、米国のテック・防衛・政府がほぼ全部入りです。過去3回の実績から挙げると、防衛テック系ではPalantir(大型ブース)、Lockheed Martin、Rhombus Power。ビッグテック系ではGoogle(2026年は公式パートナー)、Microsoft、NVIDIA、AMD、OpenAI(2026年にマルチモーダルのライブデモ)。ロボティクスではBoston DynamicsのSpot、ヒューマノイドのNyloとAmeca。半導体・インフラではGroq。そして政府側は、国防総省のイノベーション組織DIUが陸軍・海軍・AFWERX・海軍研究局などを束ねて共同ブースを構え(2025年、ブース#522)、エネルギー省傘下のローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)やパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)も出展しています。政府機関が来賓ではなく出展者としてフロアに立つのが、このイベントの構造的な特徴です。
来場者側はまったく別の顔をしています。公式の来場者像は「技術者、学生、投資家、政策立案者、あらゆるレベルの政府関係者」であり、無料登録のため学生や求職者(キャリア専用ステージがあります)から活動家、一般市民までが混ざります。役職別・購買権限別の来場者データは存在しません。壇上は閣僚級、フロアは無料登録の混合層という二層構造を前提に、誰に会いに行くのかを事前に設計する必要があります。
日本企業について、確認できた事実は次のとおりです。まず、日本企業のブース出展は2024〜2026年のいずれの回についても確認できませんでした。JETROのジャパンパビリオンや公的な共同出展枠もありません。一方で、日本との接点は2026年に明確に生まれています。在米日本国大使館の主催で「Japan - U.S. AI Business Bridge」というセッションが開かれ、山田重夫駐米大使が開会挨拶を行い、キミット米商務次官(国際貿易担当)が基調講演、ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzも関与して、フィジカルAIにおける日米連携が議論されました。参加した元米空軍中将のLeonard Kosinski氏は、日本語でこう書いています。
このたび、AI+ Expoの「Japan - U.S. AI Business Bridge」セッションに参加する機会をいただき、多くの示唆に富むお話に大変刺激を受けました。
著名なパネリストによるディスカッションでは、日本と米国の産業発展を加速させる上で、フィジカルAIが果たす重要な役割について強調されました。
また、笹川平和財団米国(Sasakawa USA)の日米同盟チームが2025年の回を視察しています。政府・政策側の日本関係者はすでに動いている一方、日本企業のブースはまだ1つも確認できない、というのが現在地です。
会場では実際に何が起きるのか
会場は基調講演ステージ、パネル、デモ、ワークショップ、キャリアステージ、そして展示フロアで構成されます。2026年の実績では講演者600人超、セッション300本超、公式デモ40件、特別イベント50件でした。壇上の顔ぶれが実力の証明です。2026年にはエリック・シュミット氏に加え、ライト・エネルギー長官、アイザックマンNASA長官、アトキンスSEC委員長、マッカーシー前下院議長、Google Public SectorのDahut CEO、NVIDIA共同創業者のマラコウスキー氏、Google DeepMindのコーリ氏らが登壇しました。アトキンスSEC委員長の基調講演を日本語で紹介した株式会社自動処理の調査レポートから、規制側の姿勢を示す一節を引きます。
私たちの仕事は、プレーのルールを定め、試合を裁く審判を務めることであって、勝つチームを選ぶことではないのです。
フロアのデモは、ロボット犬、ヒューマノイド、ドローンレース用アリーナといった体験型が中心で、AIを「見せる」ことに徹しています。
もう1つ、日本の展示会では起きないことが起きます。政治です。2025年の回では、親パレスチナの抗議者がエリック・シュミット氏の登壇やPalantir幹部のパネルを中断させて退場となり、Palantirは自社ブースを取材していたWIRED誌の記者に警察を呼ぶと通告し、ジャーナリスト3名が一時会場から排除される事態になりました。会期最終日には少なくとも1つの講演で手荷物検査が義務化されています。WIRED誌の記事は、イベント自体については「参加無料で、ジャーナリストを含め一般に公開されている」と明記しており、開放性と政治的緊張が同居する場だと考えてください。出展する場合、ブーススタッフには「抗議や取材への対応は本社広報へ」という一線をあらかじめ引いておくべきです。
参加・出展にいくらかかるのか
参加は無料です。過去の全開催回で参加登録は無料で、2027年も公式サイトは無料登録を明示しています(登録開始時期は未発表)。有料パスや商談用の上位チケットは存在しません。
出展料金は2027年版が公式サイトに公開済みで、実質的な締切は2026年10月1日の早期価格の期限です。
| ブース | 早期(2026年10月1日まで) | 通常(10月1日以降) |
|---|---|---|
| 5×10(スタートアップ枠) | $2,200 | 記載なし |
| 10×10(100平方フィート) | $4,000 | $5,500 |
| 20×20(400平方フィート) | $16,000 | $22,000 |
| 30×30(900平方フィート) | $36,000 | $49,500 |
単価は早期$40/平方フィート、通常$55/平方フィートの定額制です。政府機関は無料、学術機関・非営利団体には先着の無料枠があります。ブースに何が含まれるか(備品、電源、出展者バッジ数)は公開されておらず、主催者(events@scsp.ai)への確認が必要です。
この価格は米国の大型イベントとしては突出して安い水準です。たとえばRSA Conferenceの2020年版資料では10×10ブースが$14,000でした。AI+ Expoの早期価格$4,000はその3分の1以下です。安さの理由は前述の主催者の性格にあり、裏を返せば、ブース料金の安さは商談の見込み客の密度を保証しません。渡航費は羽田〜ダレスの往復航空券が時期により約18万円から(2026年8月時点の最安値検索、変動します)、これに2日間の会期に合わせた宿泊が載ります。会期中のホテル相場を示せる出典は見つからなかったため、本記事では総額の目安を提示しません。貴社の人数と日程での概算は、下のツールで試算してください。
費用を試算する防衛・政府色の強い場に、日本企業が出て問題ないのか
結論はこうです。参加するだけなら特別な手続きは何もいりません。展示フロアは無料の一般公開で、セキュリティクリアランスや国籍の要件は公表されていません。日本の会社員が情報収集に行くことは、通常の米国出張と同じ扱いで完結します。
気を付けるべきは出展する側に回る場合です。確認すべきことを順に挙げます。
- 持ち込む技術の該非判定。来場者に米政府・軍関係者と外国政府関係者が多数含まれる場で自社技術をデモ・説明することは、外為法上の「技術の提供」に該当し得ます。展示物、デモ機、技術資料について、リスト規制とキャッチオール規制の該非判定を出発前に済ませ、安全保障貿易管理の担当部門を最初から巻き込んでください。
- 米国製の部品・ソフトを含む製品は、米国輸出管理規則(EAR)の再輸出規制の対象になり得ます。防衛用途の商談に発展させるつもりなら、なおさら事前整理が必要です。
- クリアランスが必要なセッションの有無は公開情報では確認できません。展示フロアと公開セッションは無料バッジで足りますが、併催のThe Exchangeのような上級者向けプログラムは別枠で、参加形態は主催者に確認する必要があります。
- 政治的な場であることの織り込み。前述のとおり抗議活動や取材をめぐる摩擦が実際に起きています。また、イベント全体が米中競争を前提に設計されているため、中国事業の比重が大きい企業は、出展が対外的にどう読まれるかを広報・渉外と握ってから決めるべきです。
これらは「出展をやめる理由」ではなく、「準備の項目」です。同種の配慮は防衛装備品の展示会では標準的な実務であり、AI+ Expoはそれらよりはるかに開かれた場です。
日本企業にとって行く価値はあるか
判断基準は1つです。貴社が米国の政府・防衛・経済安全保障のエコシステムに、これから接点を作る意思があるかどうか。あるなら、これほど費用対効果の高い入口は他にありません。ないなら、行っても得るものは講演の視聴体験にとどまります。
行くべき企業。 第一に、デュアルユース性のある技術を持つ日本企業です。ロボティクス、自律システム、センサー、半導体・量子、宇宙、サイバーセキュリティ。2027年のトラック構成(国家安全保障技術、自律システム、量子・マイクロエレクトロニクス、ロボティクスなど)は、日本の製造業・部品産業の強みとまっすぐ重なります。しかも競合となる日本企業のブースは過去3回で1つも確認されておらず、早期価格なら$2,200〜$4,000で試せます。「日本代表」の席が空いたまま、参入費用が最も安い時期にあるというのが率直な評価です。第二に、ワシントン事務所や渉外・政策担当を持つ企業です。閣僚・政府機関トップ級の発言を2日間で浴びられる場として、情報収集の効率は極めて高く、参加は無料です。2026年に在米日本国大使館のセッションが始まったことで、日本企業が名刺を出す文脈もできつつあります。
行かなくてよい企業。 商用AIプロダクトのリード獲得や即商談が目的の企業です。来場者の購買権限データは存在せず、無料登録の混合層が相手では、営業パイプラインの計算が立ちません。米政府調達を狙うにしても、ブースを出せば受注につながる場ではなく、SAM登録や各種認証といった別の長いプロセスの入口に立つだけです。そして、政治的な摩擦の可能性がある場に社名を置きたくない企業。この3つに当てはまるなら、CESやハイパースケーラー系カンファレンスに予算を回すほうが合理的です。
最後に整理します。AI+ Expoは、費用の壁が最も低く、政治の色が最も濃い米国大型イベントです。無料で偵察に行けて、$2,200で旗を立てられて、ただし売上はすぐには返ってこない。この構造を理解したうえで2〜3年の関係構築として設計できる企業にとってだけ、行く価値があります。日本語の参加レポートは2026年8月時点で1本も見つかりませんでした。つまり、貴社が行けば、それ自体が日本の同業他社に対する情報優位になります。貴社の状況を踏まえた参加・出展の判断は、下記からご相談ください。
ご相談はこちらよくある質問
- AI+ Expo 2027はいつ・どこで開催されますか?
- 2027年5月24日(月)〜25日(火)の2日間、ワシントンD.C.のWalter E. Washington Convention Centerで開催されます。4回目の開催です。2026年までは3日間でしたが、2027年は2日間に短縮されました。東京の「AI・人工知能EXPO」とは別のイベントです。
- AI+ Expoの参加費はいくらですか?
- 無料です。過去の全開催回で参加登録は無料で、報道関係者を含め一般に公開されてきました。2027年の参加登録の開始時期は2026年8月時点で未発表です。
- 出展費用はいくらですか?
- 2026年10月1日までの早期申込で1平方フィートあたり$40、以降は$55です。10×10ブースは早期$4,000、通常$5,500。スタートアップ向けの5×10ブースは$2,200です。政府機関は無料、学術機関と非営利団体には数量限定の無料枠があります。
- 参加にセキュリティクリアランスは必要ですか?
- 不要です。展示フロアは無料登録で誰でも入場でき、クリアランスや国籍の要件は公表されていません。ただし2025年には一部講演で手荷物検査が導入されるなど警備は強化傾向にあり、併催の戦略サミットThe Exchangeは別枠の位置づけです。
- 日本企業も出展していますか?
- ブース出展の実例は2024〜2026年のいずれの回についても確認できませんでした。一方、2026年には在米日本国大使館が主催する「Japan - U.S. AI Business Bridge」セッションが行われ、山田重夫駐米大使が登壇しています。JETROのジャパンパビリオンはありません。
- 日本からワシントンD.C.への直行便はありますか?
- あります。羽田からワシントン・ダレス国際空港(IAD)へANAとユナイテッド航空が直行便を運航しており、所要は約13〜14時間です。レーガン・ナショナル空港(DCA)への日本からの直行便はありません。