TIDES USA · ボストン
TIDES USA 2027完全ガイド:日本企業のための出展・参加判断
最終更新:2026年8月23日

TIDES USA 2027は、2027年4月26日〜29日に米国ボストンのHynes Convention Centerで開催される、核酸医薬(オリゴヌクレオチド)とペプチド医薬に絞った専門会議です。結論から書きます。ペプチドやオリゴの受託製造、モノマー・試薬・リンカーの供給、この化学向けの分離・分析装置を手がける日本企業にとっては、北米で最も投資対効果の高い一週間になり得ます。2026年の最上位スポンサーはNitto Avecia(日東電工グループ)とAsymchem(中国)の2社で、この会議の頂点はアジアの受託製造が押さえています。ただし前提を先に共有します。これは展示会ではありません。2026年の出展社は157社、実売ブース面積は合計21,480平方フィートで、大型展示会のホール一つにも届きません。そしてCDMO、CMO、CRO、サプライヤー、ベンダーおよび営業関連職は、公開されているIndustry料金では登録できないと明記されています。
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TIDES USA 2027 イベント概要資料
EXPA編集資料 · 2027年版 · 0.8 MB
157社
出展社(2026年フロアプラン)
21,480 sq ft
実売ブース面積(2026年)
1,700人超
来場者(2023年・主催者公表)
3,599ドル〜
参加費(Industry・早期割引)
TIDES USAとは何のカンファレンスか
核酸医薬とペプチド医薬という2つのモダリティに限定して、探索から製造・品質管理(CMC)までを扱う年次の専門会議です。正式名称はTIDES USA: Oligonucleotide & Peptide Therapeutics、主催はInforma Connectです。展示ホールは併設されていますが、会議が主で、ホールが従という構成になっています。
検索の前に一つだけ。「tides」は英語で潮汐を意味するため、そのまま検索すると米国海洋大気庁の潮汐表が並びます。社内で共有するときは「TIDES 核酸医薬」「TIDES ペプチド」のように必ず限定語を添えてください。
本会議は6つのトラックが並行して走ります。
| トラック | 扱う領域 |
|---|---|
| Oligonucleotide Chemistry, Manufacturing & Controls | 核酸医薬のCMC |
| Oligonucleotide Discovery, Preclinical and Clinical | 核酸医薬の探索・前臨床・臨床 |
| Peptide Chemistry, Manufacturing & Controls | ペプチドのCMC |
| Peptide Discovery, Preclinical and Clinical | ペプチドの探索・前臨床・臨床 |
| Delivery of Macromolecules | 高分子のデリバリー技術 |
| mRNA Therapeutics/Vaccines & Genome Editing | mRNAとゲノム編集 |
なお主催者自身の表記は揺れています。公式サイトのカウンターは「5 Tracks」と表示する一方、同じページの本文は「six concurrent tracks」と書き、登録フォームでは6つのトラックが選択できます。実際に選べるのは6トラックです。
日程の骨格は4日間で固定されています。初日(4月26日)がワークショップ日で、午前4本・午後4本の計8本から各1本を選ぶ形です。2日目から4日目が本会議で、展示ホールは2日目の午後に開場します。
20年で3倍になった、それでもなお小さい会議
規模の推移は次のとおりです。
| 開催回 | 会期 | 都市・会場 | 規模 |
|---|---|---|---|
| TIDES 2007 | 5月 | 米国 | 700人超、当時の最多記録 |
| TIDES 2008 | 5月 | 米国 | 700人、出展75社、28セッション |
| TIDES USA 2023 | 5月7日〜10日 | サンディエゴ | 1,700人超・500社超(主催者公表、当時の最多) |
| TIDES USA 2024 | 5月14日〜17日 | ボストン(Hynes) | 未公表 |
| TIDES USA 2025 | 5月19日〜22日 | サンディエゴ | 1,900人超(第三者掲載) |
| TIDES USA 2026 | 5月11日〜14日 | ボストン(Hynes) | 出展157社、スポンサー等178団体 |
| TIDES USA 2027 | 4月26日〜29日 | ボストン(Hynes) | 2,000人超(主催者の見込み値) |
読み取るべき点が3つあります。
第一に、20年で参加者は約3倍になりましたが、展示会の尺度では依然として小さい会議です。 1,700人という数字は、日本の読者が「北米最大級」という宣伝文句から想像する規模とはかなり違います。比較の軸は展示会ではなく学会に置いてください。
第二に、名前が分野の変化を映しています。 2008年時点の名称は「TIDES: Oligonucleotide and Peptide Technology and Product Development」で、主催はIBC Life Sciencesでした。Informaが同社を吸収し、Knect365ブランドを経て現在のInforma Connectに至ります。名称の「Technology」が「Therapeutics」に変わったのは、この分野が要素技術から承認医薬品の産業に移ったからです。
第三に、2027年は2つの慣例を同時に破ります。 開催都市はボストンとサンディエゴを1年おきに往復してきましたが、2026年に続いて2027年もボストンです。そして会期が5月中旬から4月下旬へ約2週間前倒しになりました。前年の日程感覚で渡航手配を組むと確実にずれます。
いつ・どこで開催されるのか
2027年4月26日(月)〜29日(木)の4日間、ボストンのHynes Convention Center(900 Boylston Street, Boston MA 02115)で開催されます。日程と開催都市の両方が、前年までの並びから外れます。 2023年から2026年までの4回はすべて5月開催で、直近の2026年は5月11日〜14日でした。2027年はそこから約2週間前倒しの4月下旬です。都市も、ボストンとサンディエゴを1年おきに往復してきた並びが崩れ、2026年に続いて2027年もボストンになりました。前年の日程と都市を前提に出張計画や予算年度を組むと、確実にずれます。
会場のHynes Convention Centerは、マサチューセッツ州コンベンションセンター公社が所有・運営する施設です。展示面積176,480平方フィート、会議室38室、91,000平方フィートの会議スペース、24,544平方フィートのボールルームを備えます。現在の建物は1988年竣工で、設計はKallmann, McKinnell & Woodです。
日本からの出張者にとって効くのは、規模よりも接続性です。Hynesは商業施設Prudential Centerと物理的につながっており、Sheraton Bostonとは直結、Marriott Copley PlaceとWestin Copley PlaceはCopley Place経由、ColonnadeはPrudentialの地下鉄駅経由で、いずれも屋根の下で行き来できます。4月下旬のボストンでこれは実利です。会場自身は施設を「a compact, collegial environment in the heart of the city」と表現しており、2026年に実際に売れたブースの構成ともよく一致しています。
渡航と気候
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 直行便 | 日本航空JL008(アメリカン航空AA5922とのコードシェア)、成田〜ボストン。11:30成田発、同日11:20ボストン着 |
| 所要 | ブロックタイムでおよそ12時間45分〜13時間 |
| 羽田発 | 直行便なし。ボストン線は成田路線です |
| 空港から会場 | ローガン空港からHynesまで4.6マイル。Back Bay Logan Expressのシャトルが空港発は無料、空港行きは3ドル |
| 市内交通 | 地下鉄グリーンラインに「Hynes Convention Center」駅があります |
気候は判断を誤りやすいところです。ボストンの4月は平均最高気温が摂氏13度(56F)、平均最低気温が摂氏5度(41F)、月間降水量が3.7インチです。月内では日ごとの最高気温が摂氏11度前後から16度前後へ上がっていくため、26日〜29日は4月の中では暖かい側に入りますが、それでもコートは必要です。5月開催だった前年までの感覚で荷造りをしないでください。

誰が主催しているのか
主催はInforma Connect、ロンドン証券取引所FTSE 100構成銘柄であるInforma PLCのイベント部門です。サイトのフッターにはInforma Connect Limited(イングランド・ウェールズ登記番号01835199、登記住所5 Howick Place, London SW1P 1WG)と記載されています。社内的にはInforma Connect Life Sciencesという部門が担当し、顧客窓口はニューヨークの電話番号です。
収益構造は3本です。日本企業が知っておくべきなのは3本目です。
- 参加費。2,099ドルから4,999ドルの幅があります。ただし登録資格のルールにより、CDMOやサプライヤーといった供給側の企業はこの公開価格では登録できません。
- スポンサーシップと出展。価格は一切非公開で、担当者が個別に販売します。2026年は163団体が商業ティアを購入しました。
- 通年のメディア商品。ニュースレターとウェブ広告、コンテンツプログラム、ウェビナー、動画インタビュー、そしてリストレンタルまで販売しています。スポンサー向けには「Lead Insights」というリードのスコアリング用ダッシュボードが提供されます。
3本目の意味は率直に書きます。貴社のブースで取得されたバッジスキャンは、主催者にとって商品化された資産です。個人情報の取り扱いを社内で説明する必要がある場合、この構造を前提に契約条件を確認してください。
窓口は用途ごとに分かれています。スポンサーシップは社名の頭文字で担当が変わり、記号と英字A〜FがJennifer Wickett氏、G〜ZがMichael Moriarty氏です。3名以上の団体登録はTayla Thomas氏とGeorge Barber氏が窓口です。セルフサービスでブースを買う導線は存在しません。
TIDESは3地域のシリーズです
| イベント | 次回 | 規模 |
|---|---|---|
| TIDES USA | 2027年4月26日〜29日、ボストン | 2,000人超(見込み) |
| TIDES Asia | 2027年2月24日〜26日、グランドニッコー東京 台場 | 375人以上、講演60人以上、スポンサー40社以上、2トラック |
| TIDES Europe | 2026年11月3日〜5日、アムステルダム | 2019年アムステルダム開催で550人以上 |
ここに一つ、日本の読者にとって示唆的な事実があります。TIDES Asiaには日本語サイトがあり、TIDES USAにはありません。主催者は日本の顧客の存在を認識したうえで、日本語対応を東京開催のイベントに限定しています。
どんな企業が参加・出展しているのか
構図は明快です。席に座っているのは自社に治療薬パイプラインを持つ製薬・バイオ企業の開発者で、ホールに立っているのは受託製造企業とサプライヤーです。そしてこの境界を、主催者は登録の時点で審査によって維持しています。推測ではなく、登録規約にそう書かれています。
来場者数は、尺度を混ぜないことが重要です。
| 数字 | 値 | 何を数えたものか |
|---|---|---|
| 2023年 | 1,700人超・500社超 | 主催者が会期後に公表した実績値。最後の確定値 |
| 2025年 | 1,900人超 | 第三者のイベント掲載サイトの記載 |
| 2026年・2027年 | 2,000人超 | 主催者の会期前マーケティング数値 |
2,000人という数字を実績として扱わないでください。 2026年の会期後レポートは入力フォームの先にあり、公開ページに人数は載っていません。稟議に使える最後の実測値は2023年の1,700人超・500社超です。この2つを割ると1社あたり約3.2人となり、団体割引が3名から始まる理由もそこにあります。
スポンサーの顔ぶれは、アジアの受託製造が上位を占めています
2026年のスポンサーページには178団体が掲載され、うち163団体が商業ティアです。
| ティア | 社数 | 主な社名 |
|---|---|---|
| Diamond | 2 | Asymchem(中国)、Nitto Avecia(日本) |
| Platinum | 1 | Agilent Technologies |
| Event Partners | 4 | Axolabs、Hongene Biotech、PolyPeptide Group、WuXi TIDES |
| Gold | 5 | Bachem、Codexis、Samyang、ST Pharm、Sumitomo |
| Silver | 12 | Asahi Kasei Bioprocess、Aldevron、AmbioPharm、BioSpring、CordenPharma、Cytiva ほか |
| Bronze | 28 | Ajinomoto Bio-Pharma Services、Nagase、Catalent、Ionis Pharmaceuticals、Thermo Fisher ほか |
| Associate | 111 | Shimadzu、Nippon Shokubai、Inabata America ほか |
上2段を注意して読んでください。最上位のDiamond 2枠は中国と日本の受託製造企業が占め、GoldとSilverの上位は韓国・日本・スイスのCDMOが並びます。この会議で最も大きな金額を払っているのは、欧米の製薬企業ではなくアジアの製造業です。
政府系機関は1団体もいません。JETROのパビリオンも、都道府県の共同出展も、いかなる国のナショナルパビリオンも存在しません。日本企業は単独で、商業ベースでブースを買っています。
確認できた日系出展社
2026年のフロアプランに掲載された157社のうち、11社が日本資本です。全体の約7%にあたります。
| 出展社 | 2026年のスポンサーティア | ブース |
|---|---|---|
| Nitto Avecia(日東電工) | Diamond(最上位) | 307、600平方フィート |
| Sumitomo Chemical | Gold | 221、400平方フィート |
| Asahi Kasei Bioprocess | Silver | 115、400平方フィート |
| Ajinomoto Bio-Pharma Services | Bronze | あり |
| Nagase(長瀬産業) | Bronze | あり |
| Shimadzu Scientific Instruments | Associate | あり |
| Nippon Shokubai(日本触媒) | Associate | あり |
| Inabata America(稲畑産業) | Associate | あり |
| Tosoh Bioscience | フロアプラン掲載 | あり |
| YMC America | フロアプラン掲載 | あり |
| Yamasa(ヤマサ醤油) | フロアプラン掲載 | あり |
会場で最も大きい12区画のうち3つが日本企業でした。 この会議において日本企業は不在でもなければ、形だけの参加でもありません。
ブースを買わずに登壇する、という日本流
出展社リストに載らない日本の参加も同じくらい重要です。
- PeptiDream(川崎)。代表取締役社長CEOのPatrick C. Reid博士が、2027年の基調講演者として早期に確定して発表されています。2026年8月23日時点で2027年の講演者ページに名前がある2人のうちの1人です。
- PeptiStar(PeptiDreamグループ、大阪)。2024年、2025年、2026年と3年連続で登壇していますが、ブースは出していません。
- Fujimoto Chemicalsは2024年にポスター発表、Arcalisは2026年の参加を日本語のニュースリリースで告知、FUJIFILM Wakoは2024年の発表を自社ライブラリに掲載しています。
ここから読み取れる方針は明確です。TIDESでは、演台のほうがブースより安く、かつ格上のチャネルになり得ます。日本のCDMOはそれを繰り返し使っています。
日本触媒が株主に書いた、出展の成果
出展の費用対効果について、日本語で最も具体的に書かれている一次資料は、日本触媒の統合報告書「Report 2024」のライフサイエンス欄です。同社はTIDES USA 2026にAssociateスポンサー兼出展社として参加しています。
中分子医薬に携わる世界各国の企業が一堂に会する展示会「TIDES」への出展では、高純度なサンプルや分離・同定・定量などの分析力が高く評価されました。米国や欧州の企業からは、グラムではなくキログラム単位の原薬製造設備に対するニーズが高いため、ワールドワイドな事業展開を加速させるべく、大型設備の導入等も検討しています。
注目すべきは、報告されている成果が引き合い件数ではなく設備投資の判断だという点です。 展示ホールで得たのは「欧米の顧客が求めているのはグラムではなくキログラムのスケールだ」という認識であり、それが大型設備の検討につながっています。工場を建てる前に、西側市場が期待する規模を確かめる。これがこの会議に行く最も正直な理由です。
同社は同じページで年間の出展先も並べています。
TIDES ASIA /京都 CPHI Japan /東京 インファーマジャパン/東京 TIDES USA /米・ボストン TIDES Europe /独・ハンブルク BioJapan /横浜
国内3展示会に、TIDESの3地域すべてを足したものが、この分野の標準的な巡回ルートです。 TIDES USAは遠征ではなく、既知の周回コースの1区間だと考えてください。
会場では実際に何が起きるのか
日程の大半はセッションで、ブースに人が来る時間は限られています。 4日間のうち、展示ホールに専有的にトラフィックが向く時間は、2日目のグランドオープニング(1時間)と同日夕方のネットワーキングレセプション(90分)、そして各日のコーヒーブレイクだけです。合計しても2時間半ほどで、それ以外の時間、参加者は6トラックのどこかの部屋にいます。

だからこそ、有料の登壇枠が実質的な主戦場になります。
| 形式 | 時間帯 | 並列数 |
|---|---|---|
| Breakfast Spotlight Presentation | 7:30〜8:00 | 3本 |
| Spotlight Presentation Luncheon | 12:05〜12:35 | 最大6本 |
| ポスター発表(Industry区分の追加オプション) | 会期中 | 150ドル |
朝7時半のスポンサーセッションは形骸化していないか。この点は実際の参加者の記録が答えになります。TIDES USA 2025をサンディエゴで4日間追った日本人参加者は、初日に最初に選んだセッションとしてPeptiStarの7時半の枠を挙げ、こう書いています。
◆ 製造プロセス革新に挑む PeptiStar(7:30AM – 8:00AM) 登壇者:廣之 優太 氏(PeptiStar) PeptiStarは、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド製造の高度化に向け、以下の3つの技術革新を発表 [...] 新規凍結乾燥プロセス:従来比で74%の時間短縮を達成
同じ参加者は、Alnylam社のManoharan氏による基調講演の様子を次のように記録しています。
聴衆が会を大ホールを埋め尽くし、質疑応答も熱を帯びていました。(原文ママ)
朝7時半でも人は来ます。日本のCDMOがこの枠を2年続けて使ったのは、それが理由です。
議論の中身は、GLP-1と製造スケールに寄っています
同じ参加者は、ボストンで開催されたTIDES USA 2026について、4日間を通した印象をこう総括しています。
「TIDES USA 2026」の3日間を通じて肌で感じたのは、核酸・ペプチド医薬品が、基礎研究の壁を叩く時代を完全に終え、「人類の巨大な医療課題(肥満、アルツハイマー病、各種ガンなど)を、大規模かつ安全に解決するための実装フェーズ」に突入したという事実です。
そのうえで、フロアで最も熱を帯びた論点を名指ししています。
今年のTIDES USAで最も熱を帯びていた議論の一つが「製造スケールの限界突破」です。肥満や心血管疾患など数千万人が対象となる巨大市場において、従来の固相合成への依存は、物理的にも環境負荷(莫大な有機溶媒廃棄物:PMI)の面でも限界に達しています。
Novo Nordiskの発表として報告されている内容は、この会議のCDMO出展社の顔ぶれを説明する商業的な背景そのものです。
同社は、将来の年間「数十トン規模」のAPI(原薬)需要に対し、現在のアセトニトリルの供給量やカラムサイズでは対応不可能であると明言。解決策として、完全な液相合成や、究極のグリーンケミストリーである「水系での酵素合成」への移行が急務であると訴えました。
そして日本企業の発表が、数字とともに名指しで取り上げられています。
ダウンストリームの劇的効率化(PeptiStar社):日本発のPeptiStar社は、連続クロマトグラフィー(MCSGP)を導入し、純度を維持したまま回収率を43%から87%へ倍増。さらに正浸透・膜蒸留による非加熱濃縮と、ミキサー型凍結乾燥システムを統合することで、凍結乾燥時間を213時間から56時間へと劇的に短縮。工場の年間生産能力を約3倍に高めるブレークスルーを発表しました。
回収率が43%から87%へ、凍結乾燥が213時間から56時間へ。 日本のCDMOが北米最大級のこの分野の会議で演台に立ち、この水準の数字が記録される。「うちのような会社が行って、誰かが聞いてくれるのか」という問いへの具体的な答えがこれです。
2027年の基調講演のタイトルも同じ方向を向いています。冒頭は「Retatrutide: A Breakthrough Triagonist Uniting Molecular Design and Sustainable Manufacturing」で、これはEli Lillyの肥満症治療用トリアゴニストです。ほかに「The History and Future of Oligonucleotide Manufacturing」「Lessons Learned from a Personalized CRISPR Gene Editing Therapy」などが並びます。
なお2027年の講演者リストは、2026年8月時点でまだほとんど公開されていません。名前が出ているのはPatrick Reid氏(PeptiDream)とDavid Craik氏(クイーンズランド大学)の2人だけで、講演タイトルの多くは登壇者未定のまま掲載されています。プログラムを見て判断したい場合は、2026年12月頃まで待つのが現実的です。
展示ホールの実寸
ここは日本語のどこにも書かれていないので、数字で示します。2026年のフロアプランのデータから読み取ったブース構成は次のとおりです。
| ブースサイズ | 区画数 |
|---|---|
| 10ft×10ft(100平方フィート) | 103 |
| 10ft×20ftおよび20ft×10ft(200平方フィート) | 25 |
| 10ft×30ft(300平方フィート) | 1 |
| 20ft×20ft(400平方フィート) | 9 |
| 20ft×30ft(600平方フィート) | 3 |
| 5ft×6ft(30平方フィート、テーブルトップ) | 16 |
| 合計 | 157区画・21,480平方フィート |
出展社の3分の2が最小の10ft×10ftを選び、600平方フィートを取ったのはわずか3社です。 その3社はNitto Avecia(307番)、Agilent Technologies(207番)、ChemGenes(107番)でした。会場のHynes Convention Centerは展示面積176,480平方フィートですから、TIDESが使っているのはその一部にすぎません。
実例として、2026年にGoldティアのCodexis傘下CELLSCRIPTがLinkedInに投稿した内容があります。
We are live at TIDES USA 2026 in Boston! Our CELLSCRIPT team is on-site at Booth #110, connecting with scientists and industry leaders across [...]
フロアプランのデータで110番は10ft×10ftの100平方フィート区画です。上位ティアのスポンサーが最小ブースを使うのは、この会議では普通のことです。スポンサーティアとブース面積は別売りだからです。 巨大なブースを設計するより、登壇枠と1小間の組み合わせのほうが、この会議の構造には合っています。
最後にもう一つ。参加登録者向けのネットワーキング機能は、会期の4週間前に開くと公表されています。 公式アプリ「ConnectMe」でアジェンダ、参加者リスト、マッチング、面談設定が使えます。フロアで3日間かけて開拓する余裕がない日本のチームにとっては、この4週間の先行アクセスのほうが実質的な商品です。
参加・出展にいくらかかるのか
参加費
2026年8月23日時点の登録フォームの表示です。すべて米ドル、1人あたりです。早期割引の締切は2026年10月23日と告知されています。
| パッケージ | 早期割引 | 通常 |
|---|---|---|
| Industry 本会議+録画+ワークショップ | 3,599ドル | 4,999ドル |
| Industry 本会議+録画 | 2,799ドル | 4,199ドル |
| Industry デジタル参加パス | 2,099ドル | 3,299ドル |
| ポスター発表(追加オプション) | 150ドル | 150ドル |
団体登録の割引率は公開されています。3〜4名で10%、5〜9名で15%、10〜19名で20%、20〜49名で25%、50〜99名で30%、100名以上で50%です。4名を派遣する予定なら、個別に申し込む前に10%の適用を申請してください。 ただしこれは価格表ではなく申請フォーム経由の扱いです。
最重要:貴社はそもそもこの料金で登録できない可能性があります
日本語のどこにも書かれておらず、しかし最も先に確認すべき条件がこれです。登録フォームの原文を引用します。
INDUSTRY: Applicants must be active members of a pharmaceutical or biotechnology organization with a therapeutic pipeline. They cannot already be registered attendees from a sponsor or exhibitor organizations, CDMOs, CMOs, CROs, suppliers, vendors, or hold sales-related roles.
つまりIndustry料金の対象は、自社に治療薬パイプラインを持つ製薬・バイオ企業の在籍者に限られます。CDMO、CMO、CRO、サプライヤー、ベンダー、そして営業関連の職務に就いている人は、公開されているこの価格では登録できません。しかも全ての登録は処理前に主催者の審査を受けます。
この条件は、日本からの参加者の大半に直接あたります。 Nitto Avecia、Ajinomoto Bio-Pharma Services、Asahi Kasei Bioprocess、Shimadzu、Nagase、YMCといった顔ぶれは、すべて供給側です。これらの企業はスポンサーまたは出展社として参加するしかなく、その価格は公開されていません。
一般的な展示会の常識とは逆になっている点に注意してください。多くの見本市では、出展は有料で来場は無料か安価です。TIDESでは、買い手側の席が有料で、売り手側にはそもそも安い入口がありません。
参考までに、他の区分の条件も整理します。
- Academic/Government料金:常勤の学術・政府機関職員で、有効な学術・政府ドメインのメールアドレスを持ち、産業界との所属関係がないこと。金額はフォーム上のタブに存在しますが、今回の取得では値が読み取れませんでした。
- Young Company料金(申請制):設立5年以内、従業員20人未満、かつ治療薬のR&Dパイプラインを持つ製薬・バイオ企業であること。CDMO、CMO、CRO、サプライヤー、技術提供事業者、ベンダーは明確に対象外で、既存のスポンサー・出展社の関係者も除外されます。
- Workshop Onlyの区分も存在しますが、同様に金額を確認できていません。
出展・スポンサーシップ
価格は一切公開されていません。 公式サイトにブース料金表はなく、スポンサーシップ資料は入力フォームの先にあります。当社の推定値も出しません。
問い合わせ先は社名の頭文字で分かれます。記号および英字A〜FがJennifer Wickett氏、G〜ZがMichael Moriarty氏です。最初の一手は、この2人のどちらかに英語でメールを送ることです。
金額の代わりに使える手がかりは、2026年に実際に売れたブースの構成です。出展社157社のうち3分の2が100平方フィートを買っており、最大でも600平方フィートでした。 予算を組む段階では、まずこの規模感を前提に問い合わせるのが現実的です。数千平方フィートのブースを想定した設計は、この会場では不要です。
費用を試算する東京のTIDES Asiaと、どちらに行くべきか
同じInformaがTIDES Asiaを日本で開催しています。日本の読者の判断を最も左右する事実なので、正面から比較します。
| TIDES USA 2027 | TIDES Asia 2027 | |
|---|---|---|
| 会期 | 2027年4月26日〜29日 | 2027年2月24日〜26日 |
| 会場 | Hynes Convention Center、ボストン | グランドニッコー東京 台場 |
| 規模 | 出展157社(2026年実績)、1,700人超(2023年実績) | 375人以上、スポンサー40社以上 |
| トラック | 6 | 2 |
| 日本語対応 | なし | 公式日本語サイトあり |
| 学会での告知 | なし | 日本核酸医薬学会の行事案内に掲載 |
TIDES Asiaは、渡航費も英語も不要な選択肢です。 そして開催はボストンの2か月前にあたります。ただし規模は米国版のおよそ5分の1で、これは同じイベントの日本版ではなく別のイベントだと考えるべき差です。
判断の基準は単純です。目的が欧米の製薬企業の意思決定者に会うことなら、太平洋を渡る以外にありません。 2025年のサンディエゴと2026年のボストンでは、Novo Nordisk、Eli Lilly、Alnylam、Ionis、Intelliaといった開発企業が自社の製造工程やパイプラインの内容を発表しました。この顔ぶれが揃うのは米国版だけです。一方、国内の同業と関係を作る、あるいはこの分野の会議の作法を低コストで確かめるという目的であれば、まず2月の東京から始めるのは合理的です。
日本触媒がやっているように、両方に出るという選択も現実に存在します。同社の年間ルートはTIDES Asia、TIDES USA、TIDES Europeの3つすべてを含んでいます。
日本企業にとって行く価値はあるか
判断は2つの問いで決まります。貴社の製品は核酸医薬・ペプチド医薬の製造工程に直接入りますか。そして貴社は自社にパイプラインを持つ製薬企業ですか、それとも供給側ですか。
出展すべき企業。 ペプチドまたはオリゴの受託製造(CDMO・CMO)、モノマー・アミダイト・リンカー・保護基などの原料メーカー、そしてこの化学に特化した分離精製・分析・合成装置のメーカーです。買い手が全員この1つのモダリティのCMC担当者という会議は、世界にほとんどありません。 すでにNitto AveciaがDiamond、Sumitomo ChemicalがGold、Asahi Kasei BioprocessがSilverで床にいます。100平方フィートの1小間と登壇枠の組み合わせが、この会議での標準的な出方です。GLP-1に代表される数十トン規模の原薬需要という追い風は、2026年の会場で製造スケールの議論として実際に表面化しています。
登壇から始めるべき企業。 技術的に見せられるデータを持っているCDMOです。PeptiStarは3年連続で登壇し、ブースは出していません。朝7時半のBreakfast Spotlightでも会場は埋まり、参加者の記録に社名と数字が残ります。巨大なブースを設計する予算があるなら、まず演台に投資してください。 この会議では、そのほうが安く、届く相手も質が高くなります。
低分子の原薬や中間体が主力であれば、この会議ではなく5月マイアミのCPHI Americas、あるいは3月ニューヨークのDCAT Weekが本来の商圏です。バイオ医薬の生産工程であれば3月のBioProcess International US Westになります。
まず視察すべき企業。 欧米向けの生産能力増強を検討している国内メーカーです。日本触媒が報告した成果は引き合いの数ではなく「キログラム単位の設備が要る」という認識でした。設備投資の意思決定の前に、西側市場が求める規模を自分の目で確かめる。 これは1,700人規模の会議だからこそ、4日間で足りる作業です。
行くべきでない企業。 製薬向けの装置や資材を広く扱っている、いわゆる汎用の製薬機器メーカーです。この会議の参加者は1つのモダリティのCMCとプロセスの専門家に偏っており、包装機、無菌充填、固形製剤、GMP設備一般といった話題の買い手はここにいません。 出展社157社の内訳も、受託製造、試薬・原料、クロマトグラフィーと分析装置にほぼ集中しています。汎用の製薬機器であれば、CPHIやInterphexのほうが確実に噛み合います。
行けない可能性がある人。 供給側企業の営業職です。繰り返しますが、公開されているIndustry料金はCDMO、CMO、CRO、サプライヤー、ベンダー、営業関連職を対象外と明記しており、登録は審査されます。「まず1人だけ安く様子を見に行かせる」という進め方は、この会議では成立しない可能性が高いです。 スポンサーまたは出展社としての参加を前提に予算を組んでください。
判断の前提として、4つの空白を共有します
一つ目は、ブース価格が一切分からないことです。 公式サイトにも、当社の調査範囲のどこにも金額はありませんでした。資料は入力フォームの先にあり、2名の担当者に個別に問い合わせる以外に方法がありません。本記事が示せるのは、同業他社が実際に買っているブースのサイズ分布だけです。
二つ目は、2026年の実績来場者数が公表されていないことです。 主催者は会期後レポートを作成していますが、入力フォームの先にあり、公開ページに人数はありません。使える最後の実測値は2023年の1,700人超・500社超です。
三つ目は、日本語の出展レポートが存在しないことです。 Nagase、Ajinomoto Bio-Pharma、Arcalis、Fujimoto Chemicals、FUJIFILM Wakoはいずれも参加を告知していますが、会期後に成果を書いた企業は1社もありませんでした。日本触媒の統合報告書の1段落が、現存する唯一の成果報告です。日本語で費用対効果を調べても何も出てこないのは、調べ方の問題ではありません。
四つ目は、批判的な評価が見つからなかったことです。 費用、規模、運営について否定的に書いた情報源は、日本語でも英語でも見つかりませんでした。ただしこれは「批判がない」ことの証明ではありません。本記事が示せる構造上の留保は、展示ホールが21,480平方フィートしかないこと、専有的なブース時間が4日間で2時間半ほどしかないこと、そして供給側企業が公開価格で登録できないことの3点です。
貴社の製品と欧米での立ち位置を踏まえた出展・視察判断のご相談は、下記からお受けしています。
ご相談はこちらよくある質問
- TIDES USA 2027の参加費はいくらですか?
- Industry区分の本会議+録画+ワークショップが早期割引で3,599ドル、通常4,999ドルです。本会議+録画のみは早期2,799ドル、通常4,199ドル、デジタル参加パスは早期2,099ドル、通常3,299ドルです。早期割引の締切は2026年10月23日と公表されています。
- CDMOやサプライヤーもこの料金で登録できますか?
- できません。Industry料金は自社に治療薬パイプラインを持つ製薬・バイオ企業の在籍者に限られ、CDMO、CMO、CRO、サプライヤー、ベンダー、および営業関連職は対象外と登録フォームに明記されています。供給側の企業はスポンサーまたは出展社として参加することになり、その価格は非公開です。
- ブース出展の費用はいくらですか?
- 公開されていません。公式サイトにブース料金表もスポンサーシップ価格表もなく、資料請求はフォーム経由です。窓口は社名の頭文字で分かれ、記号と英字A〜FがJennifer Wickett氏、G〜ZがMichael Moriarty氏です。金額は問い合わせる以外に知る方法がありません。
- 展示会場はどのくらいの規模ですか?
- 2026年のフロアプランで出展社157社、実売ブース面積は合計21,480平方フィートでした。うち103区画が10ft×10ftの最小サイズで、600平方フィートを取ったのは3社だけです。会場であるHynes Convention Centerの展示面積176,480平方フィートのごく一部にあたります。
- 日本企業も出展していますか?
- しています。2026年のフロアプラン157社のうち11社が日本資本で、全体の約7%です。最上位のDiamondスポンサーはNitto Avecia、GoldにSumitomo Chemical、SilverにAsahi Kasei Bioprocessが入っています。日本企業はこの会議で例外的な存在ではありません。
- 出展費用の補助を受けられる制度はありますか?
- TIDES USA向けの公的な共同出展枠は確認できていません。都内中小企業であれば東京都中小企業振興公社の展示会出展助成事業が海外展示会にも使え、助成限度額150万円、助成対象経費の3分の2以内です。対象は出展小間料・小間内の装飾費・輸送費で、ボストンの宿泊費と航空券は含まれません。会期が4日間と長く、宿泊が費用の山になる会議なので、助成で圧縮できる範囲は限られます。
- 東京で開催されるTIDES Asiaとどちらに行くべきですか?
- 目的で決まります。TIDES Asia 2027は2027年2月24日〜26日にグランドニッコー東京 台場で開催され、日本語サイトもあります。ただし規模は375人以上とされ、米国版のおよそ5分の1です。欧米の製薬企業の意思決定者に会うことが目的なら、ボストンに行く必要があります。
- 日本からボストンへの直行便はありますか?
- あります。日本航空が成田〜ボストンにJL008を運航しており、所要はおよそ12時間45分〜13時間です。羽田発の直行便はありません。ボストン・ローガン空港から会場のあるBack Bayまでは、Back Bay Logan Expressのシャトルが空港発は無料、空港行きは3ドルです。
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