SAP Sapphire & ASUG · オーランド

SAP Sapphire 2027完全ガイド:日本企業のための参加判断

最終更新:2026年8月6日

SAP Sapphire 2027は、SAPが年に一度開く旗艦カンファレンスの米国オーランド開催回で、公式の事前登録ページには2027年5月24日〜26日と記載されています(会場は未発表、近年は毎回Orange County Convention Center)。結論から言えば、行く価値があるのは、SAPを基幹システムとして使っている日本企業のIT・DX責任者と、SAPエコシステムで商売をするパートナー企業だけです。そしてその企業にとって、2027年は特別な年です。SAP ERP 6.0(ECC 6.0)の標準保守が2027年末で終了するため、移行方針を固める最後の年に、ベンダー本体のロードマップを一次情報で確かめられる場になります。逆に、SAPと関わりのない企業がこのイベントから得られるものは、ほぼありません。この記事では、確定している2027年の事実と2026年実績をはっきり分けて、参加費、日本からの行き方、そして「出展」がなぜ普通の見本市と違うのかまで並べます。

1.85万人超

来場者(2026年、オーランド会場)

$1,999〜$2,399

参加パス(2026年実績)

15以上

ソリューショントラック(2026年)

1989年

初開催

SAP Sapphireとは何のカンファレンスか

SAP Sapphireは、ERP世界最大手のSAPが年に一度開く、同社最大の顧客向けカンファレンスです。出展社が主役の独立系見本市ではなく、SAP自身が経営陣を並べて自社のロードマップを発表し、導入企業の経営層・意思決定者を集めるベンダーイベントです。オーランド開催回は北米のSAPユーザーグループASUGとの共催で、正式名称は「SAP Sapphire & ASUG Annual Conference Orlando」です。富士通は出展案内でこのイベントを「経営幹部や意思決定者が集まり、最新のイノベーション、業界トレンドを共有・探求し、ビジネス課題の解決と新たなビジネス機会創出を目指す、SAP社の最大級の年次グローバルイベント」と説明しています。

歴史は長く、第1回は1989年です。SAP公式の社史によれば1998年のロサンゼルス開催(第10回)で1万5,000人超を集めて当時の記録を作り、28年連続で参加したベテラン参加者のブログは2019年時点で2万3,000人超と記録しています。直近の規模は、2026年オーランドの運営受託会社ConferenceDirectが公表した「1万8,500人超の来場者」が最も確かな会場実数です。現地参加したNTTデータグループのフォーティエンスコンサルティング黒田航平氏は「世界中から3万人を超える参加者が集まった」と書いていますが、こちらはバーチャル参加を含むとみられる広い集計で、会場実数とは別の尺度です。

このイベントの空気を最もよく伝えているのは、2025年に参加したMiku Kawanabe氏のLinkedIn投稿です。

何よりもSAP製品によって世界の有数の企業が動いていること、その規模感やビジョンに魅了される、圧倒される体験がここでは提供されているなと思います。

つまりここは、製品を比較検討する場ではなく、SAP経済圏の1年分の方向性を経営層の生の言葉で確かめる場です。この性格を踏まえて、行くかどうかを判断してください。

2027年はいつ・どこで開催されるのか

2027年5月、米国フロリダ州オーランドで開催されます。SAPのイベントハブページの表記は「2027年5月」までですが、公式の事前登録ページには2027年5月24日〜26日と具体的な日付が記載されています。5月24日は月曜で、2026年(5月11日〜13日、月〜水)と同じ曜日型です。会場は2026年8月6日時点で未発表ですが、2023年以降のオーランド開催はすべてOrange County Convention Center(OCCC)で、2026年も同会場でした。参加登録はまだ開いておらず、公式ページから開始通知のメール登録ができます。なお欧州開催は2027年6月にバルセロナで行われます(2026年はマドリード)。

日本からの渡航は、米国カンファレンスの中でも負担が重い部類です。

項目内容
直行便定期直行便なし。ZIPAIRが不定期チャーターを運航した実績がある程度です
標準ルートアトランタ(成田〜ATL約13時間+ATL〜MCO約1.5時間)、ダラス、ヒューストン乗り継ぎ
所要時間乗り継ぎ込みで約18時間以上。直行チャーターなら約14時間
乗り継ぎの注意入国審査と税関は最初の到着空港。乗り継ぎに3時間程度の余裕が必要です
5月下旬の気候日中30〜33°C、湿度が高く日差しが強い。午後のにわか雨あり

行程の目安として、JSUG(ジャパンSAPユーザーグループ)の2026年公式派遣は、月曜に日本を発って土曜に米国を発つ5泊6日でした。会期3日のイベントに対して移動で丸2日使う計算で、これがオーランドの現実です。

行程プランを見る

誰が主催しているのか

主催はSAP SEです。ドイツ・ヴァルドルフに本社を置くERP世界最大手で、Sapphireは同社が自社の顧客基盤に対してロードマップを示すための場です。この構造は費用対効果の読み方に直結します。独立系の展示会と違って、主催者は展示フロアの売上で稼ぐ必要がなく、イベント全体が「SAPの次の1年をどう買ってもらうか」のために設計されています。基調講演は中立な市場観測ではなく、ベンダーの意思表明として聞くのが正しい姿勢です。

2026年の基調講演に立ったのは、CEOのChristian Klein氏、取締役のMuhammad Alam氏、CTOのPhilipp Herzig氏、COOのSebastian Steinhaeuser氏という経営中枢の顔ぶれでした。内部DBの登録でも2027年の基調講演者はKlein氏です(internal DB、confidence 90)。

共催のASUG(Americas' SAP Users' Group)は北米最大のSAPユーザーコミュニティで、初日月曜のプレカンファレンスセミナー(2026年は9本、別料金)を企画しています。Cloud ERP移行戦略、エンタープライズアーキテクチャ、BTPハンズオンといった実務寄りの内容で、ユーザー企業の実務者が最初に検討すべき枠です。日本のユーザーグループJSUGは主催側ではありませんが、毎年数名の会員リーダーを公式派遣し、帰国後に東京のJSUG Focusで報告する仕組みを持っています。派遣枠は部会長・フォーラム長などの役職者が対象で、応募締切は開催前年度の2月でした(2026年派遣の実績)。

どんな企業・人が参加・出展しているのか

来場者の中心は、SAPを導入している企業の経営幹部と上級意思決定者です。内部DBの分析では、財務、調達、サプライチェーン、ITの各部門の購買影響者が主で、エネルギー、金融、消費財、離散型製造、公共が主要業種です(internal DB、confidence 85)。2026年のオーランド会場には1万8,500人超が来場しました(運営受託会社ConferenceDirect公表)。

登壇者の国際色は、日本の展示会とはっきり違う点です。2025年に参加したKawanabe氏はこう書いています。

スピーカーが本当に多国籍、多くの方は英語が第二言語で、私が出たセッションだけでも、ネイティブ以外の方のスピーカーの方の出身国や拠点は、ドイツ、スペイン、フランス、インド、韓国、台湾、メキシコなど。

展示フロアはSAPとそのパートナーで構成されます。2026年はAWS、Google Cloud、Microsoftのハイパースケーラー3社が揃って新発表を持ち込み、AWSとGoogle Cloudは日本語ブログでも発表内容を展開しました。ほかにAccentureのようなグローバルSI、LeverXやSecurityBridgeのようなSAP専業ベンダーが並びます。

日本企業では、富士通が2025年・2026年と連続で出展しています。2026年はOCCCのブース#303でBusiness Transformation Managementのアナリティクスと、自社AI(Kozuchi Amalgamation AI)とSAP Digital Manufacturingを組み合わせた自動車業界向けデモを展示し、執行役員常務CDXOの遠山興平氏がSAP SEのプロダクトマネジメントと共同のセッションに登壇しました。参加側では、JSUGの公式派遣に加えて、NTTデータグループのコンサルタントが詳細な現地レポートを公開しています。なお、JETROのジャパンパビリオンのような公的な出展支援は存在しません。後述のとおり、そもそも「出展」がSAPパートナー向けの協賛制度だからです。

会場では実際に何が起きるのか

会期3日間の構成は、初日のASUGプレカンファレンスセミナー、2日目以降の基調講演と15以上のソリューショントラック、そして展示フロアと体験型のSAP Experience Centerです。2026年のExperience Centerにはオーランドとマドリードの合計で1万1,200人が来場しました(JSUG公表、2会場合計の数字です)。著名人の集客枠もこのイベントの定番で、2026年はテニスのRoger Federer氏が基調講演に立ち、元F1ドライバーのDavid Coulthard氏とMika Häkkinen氏がゲスト出演しました。参加パスには特典も付き、2026年はSAP認定試験の25%割引とSAP Learning Hubイベント版の無料アクセスが提供されました。

中身を判断するうえで重要なのは、2026年に何が発表されたかです。中心はAutonomous Enterprise(自律型企業)構想でした。柱は3つあります。AI開発基盤のSAP Business AI Platform(SAP Knowledge GraphとJoule Studioを含む)、財務・サプライチェーン・調達・人事・CXの5領域に50以上のJoule Assistantsを投入するSAP Autonomous Suite、そして画面遷移やT-Codeを撤廃して自然言語で業務を完結させる新UIのJoule Work(2026年後半GA予定)です。あわせてAnthropic(Claude)、NVIDIA、Palantirなどとの提携と、1億ユーロ規模のパートナー投資も発表されました。言語処理にClaudeを、基幹システム特有の数表処理にSAP独自モデルSAP-RPT-1を使い分ける設計です。

Klein氏の基調講演の一節が、SAPの立ち位置を端的に示しています。現地参加した黒田氏の記録から引きます。

コンシューマー向けAIなら80%の精度でも十分かもしれないが、世界の基幹業務を動かすには到底不十分だ

一方で、同じ黒田氏のレポートは冷静な注釈も付けています。講演で示された顧客事例を分析すると、AIエージェント導入がうまくいく企業には、不要なアドオンをそぎ落としたClean Core、データ統合、チェンジマネジメントという3つの前提条件が揃っていた、という整理です。派手な発表の裏で問われているのは自社側の地力であり、これはそのまま日本企業への宿題でもあります。

参加・出展にいくらかかるのか

2027年の料金は未発表です。基準になるのは直近2年の実績で、JSUGが公式サイトの情報として告知した数字が以下です。

開催回早期割引通常価格
オーランド2025$1,599$1,999
オーランド2026$1,999$2,399

1年で$400の値上げです。同じ傾きなら2027年の通常価格は$2,800前後もあり得ますが、これは推定であり、確定は登録開始(時期未発表)を待つ必要があります。無料の選択肢としてSAP Sapphire Virtualがあり、2026年は基調講演を含む主要コンテンツが配信され、終了後もオンデマンドで視聴できます。

出展については、最初に構造を理解してください。SAP Sapphireにはブースを買って出る一般公募の出展枠がありません。展示フロアはSAPパートナー向けの協賛パッケージとして販売され、現在の価格表は非公開で、SAPの協賛窓口との個別交渉になります。公開情報として構造が分かる最後の資料は2023年版のプロスペクタスで、当社DBに残る内訳は次のとおりです。4年前の価格であり、現在の金額ではありません

パッケージ(2023年版)価格(2023年版、現行価格ではありません)内容
Silver$50,000ブランディングのみ。ブースなし
Gold$150,00010×10ブース、小会議室、シアターセッション
Platinum$250,00010×20ブース(オーランドのみ)
Platinum Plus$375,00010×20ブース+追加特典
Diamond$550,00020×20ブース。バルセロナ・サンパウロ含むグローバル枠
Premier招待制30×30ブース、サテライト会議室、参加パス45枚

この表で今も意味を持つのは設計思想です。最安の$50,000はブースが付かないブランディング枠で、ブースが付く最安はGoldの$150,000でした。つまりSapphireの「出展」は、見込み客のリードを拾う見本市出展ではなく、SAP経済圏の中での存在感に投資する協賛です。協賛企業はSAP経由で公式ホテルの部屋ブロックを確保できますが、宿泊費は協賛費と別請求です。

参加だけなら、費用構造はシンプルです。パス代$2,000超(2026年実績ベース)に、乗り継ぎ便の航空券と5泊前後の宿泊が乗ります。貴社の人数と日程での総額は、下のツールで試算してください。

費用を試算する

日本企業にとって行く価値はあるか

判断軸は1つだけです。貴社の基幹システムにSAPが入っているか、またはSAP経済圏で商売をしているか。どちらでもなければ、SAP Sapphireに行く価値はありません。これはSAPユーザーとパートナーのためのイベントであり、それ以外の来場者を想定した設計になっていないからです。

行くべき企業の筆頭は、ECC 6.0を今も使っている日本企業のIT・DX責任者です。ECC 6.0の標準保守は2027年末で終了します(追加2%の保守料で2030年末まで延長可能)。SAP Sapphire 2027はその判断年のど真ん中、5月に開かれます。S/4HANAへ移るのか、延長保守で粘るのか、移った先でAIエージェント前提の再設計までやるのか。2026年の発表が示したとおり、SAPの重心はすでに「移行そのもの」から「移行後のAI活用」へ動いており、この温度感は基調講演と顧客事例セッションを現地で浴びるのが最短です。黒田氏のレポートが指摘するClean Core・データ統合・チェンジマネジメントという前提条件は、自社の準備状況を測る物差しとしてそのまま使えます。

次に、SAPパートナーのSIer・ISVです。パートナー向け1億ユーロ投資が発表され、Joule Workが操作スキルの価値を塗り替えようとしている今、案件の前提が変わる速度を体感しておく価値があります。SAP人材市場の解説記事が書いたとおり、「S/4HANAへの移行案件さえできれば安泰」という常識は崩れつつあります。パートナー企業にとってSapphireは市場観測であると同時に、グローバルのSAPエコシステムに対する自社の見せ方を考える場です。富士通が2年連続でブースとセッションを持っているのは、その投資判断の実例です。

行かなくてよいケースもはっきりしています。第一に、SAPを使っていない企業。ここまで読んで自社に当てはまる論点がなかったなら、それが答えです。第二に、発表内容の把握だけが目的の企業。SAP Sapphire Virtualが無料で、基調講演はオンデマンドで見られます。渡航費をかける理由は、経営層・他社ユーザーとの対面と体験型展示にしかありません。第三に、リード獲得目的の出展を考える非パートナー企業。一般公募の出展枠がなく、2023年時点ですらブース付き最安$150,000の協賛制度です。見本市のROIを期待する場ではありません。

行くと決めたら、動く順番は3つです。公式ページで登録開始通知に登録する。JSUG会員なら公式派遣の募集(前回実績では2月締切)を確認する。そして参加者が1.85万人規模の週にぶつかる宿を、登録開始と同時に押さえる。貴社の状況を踏まえた参加判断や行程の組み立ては、下記からご相談ください。

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よくある質問

SAP Sapphire 2027はいつ・どこで開催されますか?
2027年5月です。公式の事前登録ページには5月24日〜26日と記載されています。都市は米国フロリダ州オーランドで、会場は未発表ですが、近年は毎回Orange County Convention Centerです。参加登録はまだ開いておらず、公式ページで開始通知に登録できます。
SAP Sapphireの参加費はいくらですか?
2027年の料金は未発表です。2026年実績では早期割引が$1,999、通常価格が$2,399でした。2025年は$1,599と$1,999で、1年で$400上がっています。渡航費は別で、日本からは乗り継ぎ便になるため往復の移動だけで2日を見込んでください。
日本からオーランドへの直行便はありますか?
定期直行便はありません。アトランタ、ダラス、ヒューストンなどでの乗り継ぎが標準で、所要は約18時間以上です。入国審査は最初の到着空港で行うため、乗り継ぎには3時間程度の余裕を見てください。JSUGの2026年派遣は5泊6日の行程でした。
日本企業もSAP Sapphireに参加・出展していますか?
しています。富士通は2025年・2026年と連続で出展し、2026年はブース#303で自社セッションも実施しました。JSUG(ジャパンSAPユーザーグループ)は毎年数名の会員を公式派遣しています。NTTデータグループのコンサルタントによる現地レポートも公開されています。
SAP Sapphire 2026では何が発表されましたか?
Autonomous Enterprise構想が発表の中心でした。SAP Business AI Platform、50以上のJoule Assistantsを束ねるSAP Autonomous Suite、画面遷移を撤廃する会話型UIのJoule Workが柱です。Anthropic、NVIDIA、Palantirなどとの提携と1億ユーロのパートナー投資も発表されました。
現地に行かずに内容を把握する方法はありますか?
あります。SAP Sapphire Virtualは無料で、2026年はオーランドの基調講演や主要セッションを配信し、終了後もオンデマンドで公開されています。発表内容の把握だけが目的なら渡航は不要です。現地の価値は経営層との対面と体験型の展示に絞られます。
SAP Sapphire 2027完全ガイド:日本企業のための参加判断