Gartner Cybersecurity & Risk Management Summit · ナショナルハーバー

Gartner Cybersecurity & Risk Management Summit 2027 完全ガイド:東京開催との違いと参加判断

Last updated: August 6, 2026

Gartner Cybersecurity & Risk Management Summit 2027は、2027年6月14日〜16日に米メリーランド州ナショナルハーバーのGaylord National Resort & Convention Centerで開催される、調査会社ガートナーのCISO向けサミットです。来場者4,500人超に対してガートナーのアナリストが60人超、つまりアナリスト1人あたり約75人という比率そのものが商品で、参加費4,925ドルが買っているのは30分の個別面談です。ただし日本の読者に最初に伝えるべきことは別にあります。同じサミットの東京開催が5週間後の7月21日〜23日にあり、2026年は両方が同じ開幕基調講演で始まりました。早期割引の参加費は231,000円、米国の約3分の1です。この記事では、参加費の中身、東京開催との具体的な差分、RSACやBlack Hatとの使い分けまで、判断に必要な材料を提示します。

4,500人超

来場者

60人超

ガートナーアナリスト

250社超

出展企業

$4,925

標準参加費

Gartner Cybersecurity & Risk Management Summitとは何のカンファレンスか

調査・アドバイザリー企業のGartner, Inc.が主催する、CISOとサイバーセキュリティ責任者のための年次サミットです。ベンダーが製品を発表する場ではありません。ベンダーを評価する側の調査会社が、そのベンダーから買う側の人間を集めます。

まず名称を整理します。ガートナーは現在この会議を改称している最中で、2つの名前が同時に生きています。ページ見出しとナビゲーションは新称の「Gartner Cybersecurity & Risk Management Summit」、いっぽうブラウザのタイトル、登録ページ、日本語サイトは旧称の「Gartner Security & Risk Management Summit」のままです。URLも security-risk-management-us のまま変わっていません。日本語で検索する読者は旧称の「ガートナー セキュリティ & リスク・マネジメント サミット」で探すことになりますが、たどり着く先は同じ会議です。日本サイトも2027年から サイバーセキュリティ を冠した新称に切り替わりました。

規模はこの調査対象の中で小さいほうです。RSAC が43,500人超、Black Hat USAが20,000人超であるのに対し、このサミットは4,500人超。それが弱点ではなく設計です。ガートナーのアナリストが60人超参加するので、アナリスト1人あたり来場者は約75人になります。43,000人の1人になるRSACとは、買っているものが違います。

2026年に扱われ、2027年の企画にも引き継がれるトラックは3本です。

  1. Cybersecurity Leadership and Innovation。事業と整合した戦略、リソース最適化、リーダーシップ、レジリエンス、経営層の信認。
  2. Cyber Risk and Regulations。サイバーレジリエンス、サードパーティリスク、プライバシー、AI、制御技術、組織のレジリエンス。
  3. Cybersecurity Operations and Response。セキュリティ運用の計測と管理、脅威検知と対応、AIによる運用最適化、脅威エクスポージャー管理。

主催者の構造も押さえておく価値があります。ガートナーの売上のうちカンファレンス事業は約9.9%で、本体は継続課金の調査サブスクリプションです。カンファレンスは調査事業への入口として存在します。だから4,925ドルのチケットに、単体で契約すればはるかに高額になるアナリストとの個別面談が含まれます。

東京で開催される同名のサミットとは何が違うのか

同じ会社が運営する、開催地の違う同じ製品です。そして2027年、両者は5週間しか離れていません。米国開催が6月14日〜16日、東京開催が7月21日〜23日。日本のセキュリティ責任者は、別の年ではなく同じ予算サイクルの中でどちらかを選ぶことになります。

米国開催(本記事)東京開催
会期2027年6月14日〜16日2027年7月21日〜23日
会場Gaylord National Resort & Convention Centerグランドニッコー東京 台場
来場者4,500人超非公表
出展企業250社超非公表
早期割引$4,475231,000円(税込、税抜210,000円)
標準参加費$4,925262,900円(税込、税抜239,000円)
官公庁向け$4,175221,100円(税込、税抜201,000円)
早期割引の締切非公表2027年3月31日(水)
言語英語日本語

1ドル150円換算で、東京の早期割引231,000円は約1,540ドルです。米国の早期割引4,475ドルに対して約3分の1。航空券も宿泊費もまだ1円も乗せていない段階での差です。ナショナルハーバーの客室は公表帯で1泊314〜579ドル、これを3泊と羽田発の航空券を足すと、実際の差は5倍から6倍に開きます。

そして決定的な事実がひとつあります。2026年、両方の開幕基調講演は同じ内容でした。6月1日のナショナルハーバーでは Leigh McMullen(Distinguished VP Analyst)が「Seize the Moment」を、5週間後の7月22日、グランドニッコー東京 台場ではオスカー・イサカ(Senior Director Analyst)が「今この瞬間をつかめ」を担当しました。タイトルは同じものの日本語訳です。どちらのサイトもこれを明言していませんが、事実として同じ講演が両方で行われています。

東京開催は簡易版ではありません。Conference Navigator、同じ規約の30分アナリスト個別面談、Exhibit Showcase、満席セッションに15分前に並べば繰り上げ待機列に入れる運用まで、形式はそのまま持ち込まれています。

むしろ東京にしかないものがあります。

  • 【基調講演】「日本におけるセキュリティの重要論点:2026年」。礒田優一氏、鈴木弘之氏、矢野薫氏によるガートナージャパン独自の日本市場向け調査で、米国に同等のものはありません。
  • 日本のゲスト基調講演。2026年は情報セキュリティ大学院大学の大塚玲氏が「Agentic AIセキュリティの研究動向」を担当しました。
  • 日本の実務家によるエグゼクティブ・ストーリー枠。2026年はYKK APの齋藤充宏氏が登壇しました。
  • 3本目のトラックが違います。米国が Cybersecurity Operations and Response を置くところに、東京は「C:インフラストラクチャとクラウドのセキュリティ」を置いています。トラックAとBは共通です。

もうひとつ、日本の買い手にとって実務的な差があります。ガートナージャパンは早期割引の締切日(2027年3月31日)を公表していますが、米国側は公表していません。東京の価格は確定情報として稟議に載せられ、米国の早期割引は載せられません。

RSAC・Black Hat USA・InfoSec Worldとどう使い分けるのか

4つは代替関係にありません。買っているものが違います。当社は4つすべての日本語ガイドを公開しており、比較はこの記事で完結します。

Gartner SRMRSACBlack Hat USAInfoSec World
会期2027年6月14日〜16日2027年4月5日〜8日2027年7月31日〜8月5日(推定)2026年10月11日〜15日
開催地ナショナルハーバー(メリーランド州)サンフランシスコラスベガスキシミー(フロリダ州)
会場形態自己完結型リゾートコンベンションセンターコンベンションセンター自己完結型リゾート
来場者4,500人超43,500人超20,000人超2,500人超
出展企業250社600社超400社超非公表
参加費(定価)$4,475〜$4,925$2,195〜$2,995$1,399〜$3,399超$3,395〜$4,195(All Access)
官公庁向け$4,175設定なし設定なし$1,595〜$1,895
日本からの直行便あり(羽田〜IAD)、着後1時間あり(羽田・成田〜SFO)なしなし
実際に買うもの30分のアナリスト個別面談とCISOの人脈市場の俯瞰とベンダーフロア応用研究とトレーニング最小規模の実務家コミュニティ
登壇の入口ガートナーからの招聘大規模な公募採択率約8%の査読付き公募公募
日本向けの公式ルート東京開催があるなしなしなし

Black Hat USA 2027の日程は未発表で、上表はDEF CON 35の確定日程から逆算した推定です。InfoSec Worldは2026年開催の数字で、比較対象として並べています。

価格の行を丁寧に読んでください。定価ベースで、Gartner SRMは当社が調べた米国カンファレンスの中で1人あたり最も高いバッジです。Black Hatの Briefings パス3,399ドルもRSACの2,995ドルも下回ります。ただし名前の付いたアナリストへの構造化されたアクセスが値段に含まれるのはここだけで、団体割引を使うと差は縮みます。早期割引で10名分を支払うと14名参加でき、実質1人3,196ドル。この水準ならBlack Hatより安くなります。

官公庁の行も見てください。InfoSec Worldは政府系の参加者を半額以下に割り引きます。ガートナーの割引は750ドル、率にして15%です。日本の公的機関や独立行政法人にとってこの差は大きく、予算制約が厳しいならInfoSec Worldを指します。

一文で言えば、助言を受けにGartner SRMへ、市場を見にRSACへ、技術を学ぶか研究を発表しにBlack Hatへ、同じ顔に二度会える規模で実務家と座りにInfoSec Worldへ、ということになります。1つしか選べず、目的が日本のCISO自身の意思決定なら、その用途のために設計された仕組みを持つのはガートナーです。ただしその仕組みの大半は、飛行機に乗らなくても東京開催で手に入り、バッジ代は3分の1です。

なお、2026年のこのサミットで語られた内容は、当社のRSAC 2026調査が拾った論点(エージェント型AI、30秒を切る横展開、規制影響の40%から95%への上昇)とほぼ重なりました。2つのイベントは同じ市場を同じように読んでいます。両方に行く必要はおそらくありません。

いつ・どこで開催され、日本からどう行くのか

2027年6月14日(月)〜16日(水)の3日間、メリーランド州ナショナルハーバーのGaylord National Resort & Convention Centerで開催されます。この会場と時期は動きません。2023年6月5日〜7日、2024年6月3日〜5日、2025年6月9日〜11日、2026年6月1日〜3日、そして2027年6月14日〜16日。5年連続で6月前半から中旬、同じメリーランドのリゾートです。日程を発表していないBlack Hat USA 2027と違い、1年先の予定に組み込めます。

日本から最も行きやすい米国カンファレンスです。ワシントン・ダレス国際空港(IAD)は羽田との直行便を持っています。ダレス空港自身の記述です。

Airlines offering nonstop air service: All Nippon Airways (ANA) & United Airlines provides direct nonstop service from Washington Dulles International Airport (IAD) to Haneda Airport (HND) in Tokyo 1x daily.

ANAとユナイテッド航空が各1日1便、所要13時間5分〜14時間15分、距離6,805マイル。乗り継ぎなし、米国内線区間なし、預け荷物の再手続きなし、乗り継ぎ遅延のリスクなしです。日本からの直行便が存在しないラスベガスや、最短でも16時間を超えるオーランドとは前提が違います。

ただし、その直行便が着く空港は会場から遠いほうです。ここは正確に書きます。

空港会場までの距離所要概算費用日本からの便
IAD(ダレス)35〜40マイル45〜60分約75ドルあり(羽田直行)
DCA(レーガン・ナショナル)8〜11マイル15〜20分約35ドルなし

会場から15分の空港には日本便がなく、羽田直行便が着く空港は車で1時間の距離にあります。片道1時間と75ドルを日程と予算に入れてください。「ワシントンDCのすぐ隣」という表現は、着いた空港からの近さを意味しません。それでも、羽田から1本で飛んで陸路1時間というのは、この比較対象の中では最も軽い移動です。なお Gaylord National がDCAへのシャトルを運行しているという確認は取れませんでした(公共交通の議論からの推定で、確度は低めです)。公共交通は5〜6ドルで52分かかるため、タクシーが現実的です。

6月のワシントンDC近郊は、日中の最高気温が月を通じて26℃から29℃へ上がり、最低気温は16℃から19℃です。2027年の会期は月の中旬にあたるので、日中はおよそ28℃と見てください。特徴は気温より湿度で、体感としてはかなり蒸します(この気温データは会場から約15マイル離れたバージニア州ノーススプリングフィールドの観測値です)。日本の6月下旬に近い湿度で、日中はやや暑いという感覚です。そのうえガートナー自身が会議室は冷えると案内しているので、重ね着は実用的な助言になります。

会場が自己完結型であることは、この会議の性格そのものに影響します。参加者は同じ建物の中で眠り、食べ、会い、飲みます。18時に人が散らないのです。2026年開催の唯一の独立系レポートは、AIがロビーの雑談で議論されていたと書いています。日本からの参加者にとってこれは両刃です。非公式のプログラムに入りやすい反面、宿泊費を浮かせるために場外に泊まると、家では再現できない部分をまるごと落とすことになります。

See itineraries

参加費はいくらで、何が含まれるのか

標準料金は4,925ドル、早期割引は4,475ドル、官公庁・自治体向けは4,175ドルです。

区分価格
早期割引$4,475
標準$4,925
官公庁・自治体向け$4,175

官公庁枠は「国、州または地方の政府、行政機関」と定義され、証明の提出が必要で、事後に遡って適用することはできません。なお、公開データや二次情報が最低価格として4,175ドルを載せている場合、それはこの官公庁料金です。民間企業が支払う標準料金は4,925ドルで、750ドルの差があります。

日本企業が実際に使うべき手段は団体割引です。

有料登録無料になる人数
3名1名
5名2名
7名3名
10名4名

条件は明確です。同一組織の従業員が同一カンファレンスに登録すること、全員分の支払いが完了してから無料枠を使えること、無料枠は1組織あたり4名が上限であること。他の団体割引とは併用できませんが、早期割引のような期間限定の値引きとは併用できます。したがって早期割引で10名分を支払えば14名が参加でき、実質単価は1人3,196ドルまで下がります。団体の問い合わせ先は GlobalConferences@gartner.com です。

参加費が買っている中身の中心は、30分のアナリスト個別面談です。有料の本会議登録者は全員、ガートナーのアナリストと1対1で30分話す枠を予約できます。予約はConference Navigatorという専用ツールから行い、アナリストごとに先着順です。人気のアナリストから埋まります。

制約も明確です。個別面談は有料の本会議登録者専用で、出展者パスと出展社向けセッションパスは対象外。ベンダーによる製品説明やデモは目的として認められず、日本語サイトはそうなった場合にアナリストが面談を打ち切る権利を持つと明記しています。ベンダーの製品説明は vendor.briefings@gartner.com 経由の別手続きです。ラウンドテーブル、ワークショップ、Meetupにも同じ除外が適用され、いずれも事前登録制で需要が供給を上回ります。

ガートナーの既存顧客でなくても不利にはなりません。参加費を全額支払った登録者は、セッション資料を含めてすべてにアクセスできるとガートナーは明記しています。

CISO Circle Programだけは支払いに加えて応募が必要です。選考基準は公表されていません。

参加費、宿泊、渡航を合わせた出張総額は人数と為替で大きく変わります。貴社の条件での概算は下のツールで試算してください。

Calculate your costs

会場では実際に何が起きるのか

3日間の中身は、ガートナーアナリストのセッション、30分の個別面談、ベンダーを排除した双方向セッション、そしてExhibit Showcaseの4つに分かれます。セッションは30分単位で組まれています。

個別面談の実務は、公式サイトの説明よりも柔軟です。この点について最も有益な記述は、Sysdigが日本語で公開しているガイドにあります。原文を書いたのは同社Office of the CISOディレクターで元ガートナーアナリストのAnna Belak氏、清水孝郎氏が日本語版を作成しました。米国開催について書かれた、当社が見つけた唯一の日本語記事です。

人気のアナリストとのミーティングはすぐに予約が埋まってしまいますが、たとえお気に入りのアナリストに会えなかったとしても、他のアナリストとのミーティングを取りましょう。彼らの仕事は業界について広範かつ深く考えることなので、話をするのが楽しく、良いアイディアの出し合いができます。十分に抽象的なトピックを選ぶと、自分の専門分野と完全に一致しないアナリストでもミーティングを受け入れてくれる可能性が高くなります。(Sysdig、Anna Belak氏の記事の日本語版、2024年)

そして公式の「先着順」という説明を実質的に補正する一文です。

現地のスケジューリングチームは素晴らしく、オンラインで事前に予約できなかった場合でも、できる限り対応してくれます。(同)

現地に調整デスクがあり、それが機能します。登録が遅れた参加者や、渡航前に英語のConference Navigatorを操作しきれなかった参加者が、支払った仕組みから締め出されるわけではありません。ガートナー自身のページにはこの説明がありません。

同じ記事は、ベンダーのいない場所も名指しで教えています。

エンドユーザーのラウンドテーブル、ワークショップ、CISOサークルを必ずチェックしてください。これらはベンダーの存在を意図的に排除しています。その後、ベンダーパーティーにも参加して、別の楽しみを味わってください。(同)

満席のセッションでも、15分前に並べば繰り上げの待機列に入れます。Conference Navigatorのアジェンダは渡航前に組み、プロフィールを埋めておいてください。プロフィールが埋まっていないとマッチング機能が働きません。服装はビジネスカジュアル、会議室が冷えるので重ね着、そして客室からセッション、展示フロアへの移動距離が長いので歩きやすい靴を、というのがガートナー自身の案内です。アクセシビリティの要望は登録時のプロフィールかメールで、できれば3週間前までに伝えることが推奨されています。

会場の空気について、当社が持っている唯一の独立系の記述はPR会社TouchdownPRによる2026年のレポートです。長年の参加者による、研究内容ではなく部屋そのものについての証言です。

This is my favorite cybersecurity conference as the quality of people attending and the content is excellent, everything from the keynote sessions to conversations in the hallway.(TouchdownPR、2026年6月22日)

AI dominated many of the keynote sessions, analyst presentations, and hotel lobby conversations.(同)

同レポートは、議論が「技術のための技術」から離れ、組織が変化をどう乗り切り、セキュリティを通じて事業価値をどう生むかに移ったこと、そしてCISOが技術のリーダーではなく事業のリーダーであることを期待されつつあることを記録しています。

2026年のステージで実際に何が語られたのか

ガートナーは2026年のナショナルハーバー開催について、Day 1からDay 3までの公式ハイライトを公開しました。9つのセッションについて、アナリスト名、職位、セッション名、発言内容が記録されています。ベンダーによる要約ではなく主催者自身の一次記録で、日本の取締役会資料にそのまま引用できる形になっています。

セッションアナリスト
1日目開幕基調講演 Seize the MomentLeigh McMullen(Distinguished VP Analyst)
1日目Outlook for Cybersecurity Threats: 2026-2027 ThreatScapeJohn Watts(VP Analyst)
1日目Technical Insights: Secure AI Agents Before They Go RogueDennis Xu(VP Analyst)
2日目Cybersecurity Planning Guide: AI Disruption and Geopolitical VolatilityWilliam Dupre(VP Analyst)
2日目Stopping the Quantum Threat: PQC in Three WavesSarah Almond(Director Analyst)
2日目基調講演 The Future of Cyber 2030Peter Firstbrook(Distinguished VP Analyst)
3日目Outlook for Human Factors in CybersecurityElizabeth Davis(Sr Director Analyst)
3日目Sentinel Stories: Tales of Guardian AgentsMeghan Hollis(Sr Principal Analyst)
3日目Breaking Boundaries: Uniting Exposure Management & TDIRPete Shoard(VP Analyst)

会議全体の枠組みは、McMullen氏の開幕基調講演の一文に要約されています。

Resilience, not prevention, is the strategy organizations can actually win. If the objective shifts to limiting impact, maintaining critical operations, and recovering quickly, then mitigation becomes functionally equivalent to prevention from a business outcome perspective.(Leigh McMullen、Distinguished VP Analyst、開幕基調講演「Seize the Moment」)

予防ではなくレジリエンスこそ組織が実際に勝てる戦略であり、目的を「被害の限定、重要業務の維持、迅速な復旧」に移すなら、事業成果の観点では緩和は予防と機能的に等価になる、という主張です。McMullen氏は2025年の開幕基調講演も務めており(Katell Thielemann氏との共同で「Harness the Hype」)、開幕枠は入れ替わる著名人枠ではなく、ガートナーの調査を提示する固定の枠になっています。

数字が付いた予測

取締役会資料に必要なのはこの部分です。すべて名前の付いたアナリストの発言として記録されています。

Through 2029, over 50% of successful cybersecurity attacks against AI agents will exploit access control issues, using direct or indirect prompt injection as an attack vector.(William Dupre、VP Analyst)

2029年までに、AIエージェントに対する成功した攻撃の50%超がアクセス制御の不備を突き、直接または間接のプロンプトインジェクションを攻撃経路として使う、という予測です。

Seventy-five percent of security operations center (SOC) teams will experience erosion in foundational security analysis skills due to overdependence on automation and AI by 2030.(William Dupre、VP Analyst)

2030年までにSOCチームの75%が、自動化とAIへの過度な依存によって基礎的な分析スキルの劣化を経験する、という予測です。人員計画を立てる立場の読者には、次のFirstbrook氏の発言と合わせて読む価値があります。

Cybersecurity headcount needs to increase despite productivity gains. The increased complexity, expanded threat landscape, and regulatory scrutiny associated with AI require a larger, augmented cybersecurity workforce.(Peter Firstbrook、Distinguished VP Analyst、基調講演「The Future of Cyber 2030」)

生産性が上がってもセキュリティ人員は増やす必要がある、というのは直感に反する結論で、AIによる省人化を前提に予算を組もうとしている日本企業にとっては最も実務的な一文です。同じ講演についてHuntressのBryson Byrd氏が記録した、より簡潔な言い方もあります。

there will not be a fully agentic SOC.(Peter Firstbrook、Huntressのレポートによる)

量子計算については、Sarah Almond氏が十分な性能の量子コンピュータは「10年の終わりまでに登場しうる」としたうえで、移行の判断を切り離しました。

Migration to post-quantum cryptography will happen regardless if quantum computing becomes a real threat or not.(Sarah Almond、Director Analyst)

移行は3つの波として提示されています。共通鍵暗号の強化と耐量子鍵交換への移行、プライベートPKIとHSMの更新、そして長期利用を優先した電子署名の移行です。

4つの重大脅威と、用語の線引き

John Watts氏のThreatScapeセッションと単独のプレスリリースが挙げた、攻撃側が明確に優位にある4領域は、AIアプリケーションの侵害、ディープフェイクによるなりすまし、ソフトウェアサプライチェーン、プロンプトインジェクションです。

用語が緩く使われている領域については、Meghan Hollis氏が線を引いています。

An AI tool that is supervising other AI agents to enforce boundaries or policies, or to monitor compliance or any of the other supervisory functions along those lines, is a guardian agent. Everything else is an AI cybersecurity agent, assistant or possibly even just a tool.(Meghan Hollis、Sr Principal Analyst)

他のAIエージェントを監督して境界やポリシーを強制する、あるいはコンプライアンスを監視する、そうした監督機能を持つものだけがガーディアンエージェントであって、それ以外はAIセキュリティエージェントかアシスタント、場合によっては単なるツールにすぎない、という区別です。ベンダーの提案書を読む際の物差しになります。

人の側については、Elizabeth Davis氏の一文が最も引用に向きます。

Employee pressure is a key trigger for insecure employee behaviors, such as bypassing security controls. When we don't intentionally design for how people actually work, risk becomes a by-product of performance pressure. The goal is not security awareness, but secure habits.(Elizabeth Davis、Sr Director Analyst)

目標はセキュリティ意識ではなく安全な習慣である、という結論です。

この記録をどう扱うべきか

ガートナーの公式リリースとは別に、Vectra AI、Huntress、Sayers、TouchdownPRの4つのレポートが独立に同じ5つのテーマを報告しています。予防よりレジリエンス、制御面としてのアイデンティティ、自律ではなく運用ツールとしてのAI、脆弱性管理を置き換えるCTEM、そして人の要素です。扱う製品の異なる4社が同じ5点に収束したことは、合意としてかなり強い証拠になります。このサミットが何についての会議だったかは、1社の読み筋ではなく事実として書けます。

Sayersのまとめから、日本の予算会議にそのまま持ち込める2文を挙げておきます。

No one has ever out-patched threat actors at scale.(Sayers、2026年7月1日)

AI increases productivity, not autonomy.(同)

ただし割り引いて読むべき点も書いておきます。英語のレポートはいずれもセキュリティベンダー、あるいは技術系クライアントを抱えるPR会社が書いたものです。Huntressが最も強く報告した2つのテーマ(ITDRとアイデンティティ)は、同社が売っている2つでもあります。数字と発言はガートナーのものですが、どのテーマを拾うかの取捨選択は書き手のものです。

出展を検討する企業が知っておくべきこと

先に結論を書きます。日本の買い手が目的なら、出展すべきはナショナルハーバーではなく東京です。

ガートナーが出展社に売っているものは、同社自身の言葉が最も正確です。

Our attendees aren't browsing, they're buying. They come to Gartner conferences with budget, authority and an active need for the innovative solutions you provide. Your booth becomes their shortlist.(ガートナーの出展案内)

ベンダーのショートリストを書いている会社が、そのショートリストに載ることを約束してブースを売っています。誰も隠していないので、評価ではなく事実として引用します。ちなみに出展社収入はガートナーのカンファレンス事業で最も伸びている部分で、2025年に15%成長しました。

そのうえで、出展社には明確な壁があります。アナリストの個別面談、ラウンドテーブル、ワークショップ、Meetupのすべてが出展社には開かれていません。出展社が買えるのは4,500人のCISOへの接触であって、アナリストへの接触ではありません。アナリストへの製品説明を望むベンダーは vendor.briefings@gartner.com という別の有料チャネルに回されます。つまりこの会議は、ベンダーには買い手への近さを売り、買い手にはベンダーから遮断されたアナリストへのアクセスを売り、規約で両者を隔てているという構造です。ブースからアナリストに売り込むつもりで出展すると、前提を読み違えたことになります。

ブース価格とスポンサー価格は公表されていません。出展申し込みページは問い合わせフォームで、1〜2営業日以内に担当者から連絡が来る仕組みです。Black HatのApex/Strategic PartnersやRSACの6段階のような階層も公開されておらず、参加者から見えるのはExhibit Showcaseと毎日のレセプションだけです。

2027年の出展社リストは未発表で、米国開催に出展した日本企業は確認できていません。当社が特定できた日本のベンダーは、いずれも東京開催の出展社です。ServiceNow、Akamai、Cybereason、TwoFive、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)、NTTテクノクロス、アミヤ。ServiceNowの日本チームは東京開催を「国内最大級のイベント」と表現しています。

東京のフロアがどう見えるかについては、Akamai Japanの参加レポートが具体的です。今榮絢子氏と田中晴也氏によるもので、当社が全文を取得できた唯一の日本語参加レポートです。

「AkamaiさんってCDNだけじゃないの?」と言ってお声がけくださる方が多かったです(Akamai Japan、今榮絢子氏、2024年東京開催)

来場者が製品のショートリストではなくカテゴリの課題を持って歩いていることが分かります。実際に聞かれたのはランサムウェア対策としてのマイクロセグメンテーションと、増えすぎて管理できていないAPIのセキュリティでした。そして日本の買い手に固有の観察がひとつあります。

まだ日本に進出してきているAPI セキュリティに特化した会社がいないため、Akamaiの日本法人、日本のパートナー様がサポートしてくれることに安心感を持っていただいたお客様が多かったですね。(同)

日本法人と日本のパートナーによる支援体制そのものが、この会場では売り物になります。メリーランドでは使えない武器です。同レポートはもうひとつ、日本のセキュリティ業界の規模を言い当てた一文を残しています。

個人的には、前職の同僚たちに再会することができて嬉しかったです! このようなイベントは同窓会のような感じになりますね(同)

人脈資産としては有利に働き、同時に「同じ顔にしか会えない」という限界も示しています。

大手が東京のブースで何をしているかの実例としては、ServiceNowが3つのデモステーション(AIセキュリティガバナンス、自律型SOCのL1アナリスト、リスクベースの脆弱性管理)を、買収した製品とマジック・クアドラントのリーダー評価の周りに配置していました。ガートナーのサミットのブースはリード獲得の場ではなく、アナリストとマジック・クアドラントを読むCISOに向けたポジショニングの場です。人数ではなく誰が来るかが要点になります。

日本企業にとって行く価値はあるか

判断は1つの問いに集約されます。東京開催で手に入らないものを、貴社は本当に必要としているか。

ガートナーの調査内容そのものが目的なら、7月21日〜23日の東京で足ります。2026年、両方の開幕基調講演は同じ内容でした。30分の個別面談も、Conference Navigatorも、ベンダーを排除した双方向セッションも東京にあります。そのうえ日本市場向けの基調講演と日本の実務家の登壇枠は東京にしかありません。バッジ代は約3分の1で、早期割引の締切日も公表されています。

ナショナルハーバーに飛ぶ理由は3つに限られます。

  1. アナリストの層。 60人超が現地に入り、調査を書いている Distinguished VP Analyst 本人(McMullen、Firstbrook、Watts、Xu)が登壇します。東京はガートナージャパンのアナリストに来日組が加わる編成です。担当分野の第一人者を30分押さえたいなら、ここが最短距離です。
  2. 250社超の出展フロア。 東京のフロアは日本市場の規模に合わせて構成されます。グローバルのセキュリティ製品を横並びで比較したいなら米国です。
  3. 米国CISOの人脈。 ここが最も重要で、最も誤解されやすい点です。2026年の実務家登壇者はFirst Hawaiian Bank、イリノイ大学シカゴ校、米国立衛生研究所(NIH)、米国務省、S&P Globalのセキュリティ責任者でした。銀行、高等教育、連邦機関2つ、格付機関。ワシントンDCの隣という立地と、4,175ドルという官公庁専用価格の存在と整合します。この会場で買えるのは、米国の連邦政府と規制産業のCISOへのアクセスであって、グローバルの横断面ではありません。世界を横断的に見たいならサンフランシスコのRSACです。

調査内容そのものは理由になりません。大部分が東京と重複します。そこは正直に書くべきところです。

行かないほうがよい企業も明確です。セキュリティ製品を作るエンジニアを送る場ではありません。技術を学ぶならBlack Hatです。ブースからガートナーのアナリストに製品を売り込みたいベンダーも対象外で、規約で明確に禁じられています。予算制約が厳しい日本の公的機関にとっても、官公庁割引が750ドル(15%)しかないこのサミットより、半額以下に割り引くInfoSec Worldのほうが合理的です。

日本人参加者の実情については、正直に「わからない」と書きます。ガートナーは国別の内訳を公表しておらず、日本語でナショナルハーバー開催の参加レポートを探しましたが、どの年についても1件も見つかりませんでした。存在する唯一の日本語記事は、米国人筆者の記事をベンダーが翻訳したもので、参加報告ではありません。米国開催に出展した日本企業も確認できていません。ナショナルハーバーに行く日本人参加者は、かなりの少数派になると考えてください。

最後に、数字そのものについての注意を1つ。4,500人超という来場者数は、ガートナーが2027年のページに掲げている将来見込みの数字です。このサミットについて、ガートナーは終了後の実績を公表しておらず、第三者による集計もどの年にも存在しません。独立した証言は、長年の参加者による「thousands of cybersecurity leaders」という表現だけで、これは数字ではありません。RSACが公式の閉幕リリースで実数を出すのとは対照的です。判断材料としては、規模ではなくアナリスト比率と参加者の顔ぶれを見るほうが確かです。

貴社の状況に照らした参加・出展判断のご相談は、下記からどうぞ。

Talk to us

FAQ

Gartner Cybersecurity & Risk Management Summit 2027の参加費はいくらですか?
標準料金は4,925ドル、早期割引は4,475ドル、官公庁・自治体向けは4,175ドルです。3名の有料登録で1名分が無料になる団体割引があり、早期割引と併用できます。10名で申し込むと14名が参加でき、実質1人3,196ドルです。
米国開催と東京開催、どちらに参加すべきですか?
2026年は両方の開幕基調講演が同じ内容でした。調査内容が目的なら7月21日〜23日の東京(早期割引231,000円)で足ります。米国に飛ぶ理由は、60人超のアナリスト、250社超の出展フロア、米国CISOの人脈の3つに限られます。
RSAC、Black Hat、InfoSec Worldとどう使い分けますか?
規模と目的が違います。来場者はRSAC 43,500人超、Black Hat 20,000人超に対し本サミットは4,500人超です。アナリスト1人あたり約75人という比率が商品で、30分の個別面談を買う場です。市場調査ならRSAC、技術ならBlack Hatです。
日本からの直行便はありますか?
あります。羽田からワシントン・ダレス(IAD)をANAとユナイテッド航空が各1日1便運航し、所要は13時間5分〜14時間15分です。ただしIADから会場までは35〜40マイルあり、車で45〜60分、片道およそ75ドルかかります。
アナリストとの1対1ミーティングは誰でも予約できますか?
有料の本会議登録者のみです。30分の個別面談が参加費に含まれますが、出展者パスと出展社向けセッションパスは対象外。製品説明やデモ目的の利用は認められません。先着順ですが、現地のスケジューリングデスクが追加の調整に応じます。
日本企業も出展していますか?
米国開催の2027年出展社リストは未発表で、日本企業の出展は確認できていません。ServiceNow、Akamai、Cybereason、CTC、NTTテクノクロス、アミヤはいずれも東京開催に出展しており、日本の買い手を狙うならそちらが本命です。
Gartner Cybersecurity & Risk Management Summit 2027 完全ガイド:東京開催との違いと参加判断