TMS Annual Meeting & Exhibition · オーランド

TMS 2027 Annual Meeting & Exhibition完全ガイド:日本企業のための参加・出展判断

最終更新:2026年8月6日

TMS 2027 Annual Meeting & Exhibition(TMS2027)は、2027年3月14日〜18日にフロリダ州オーランドのOrlando World Center Marriottで開催される、米国の材料学会TMSの第156回年次大会です。結論から言えば、これは商談のための展示会ではなく、研究発表のための学会です。参加者の61%が大学所属で、展示会は約60社の機器・ソフトベンダーが並ぶ小規模なものです(いずれも直近実績)。行く価値があるのは、研究開発部門の技術者を送り込める素材・金属・製造業の企業と、研究者に売る側の計測機器・解析ソフトベンダーです。営業リードを数えに行く出展には向きません。この記事では、2027年について確定している事実と2026年の実績値を分けたうえで、費用、展示会の実態、そして日本の材料コミュニティとの深い関わりまで並べます。

4,300人超

参加者(2026年実績)

110

承認済みシンポジウム(2027年)

約60社

出展社(2026年実績)

61%

大学所属の参加者(2025年調査)

TMS Annual Meeting & Exhibitionとは何のカンファレンスか

TMS Annual Meetingは、米国の材料学会TMS(The Minerals, Metals & Materials Society)が毎年3月に開く年次大会です。ベンダーの製品発表会でも、商談中心の展示会でもありません。1957年設立のTMSは約13,000人の会員を持つ非営利の専門学会で、鉱物・金属・材料分野の研究者と技術者をつなぐことを目的としています。年次大会は1871年設立の米国鉱山冶金石油技術者協会(AIME)の系譜を継いで数えられており、2027年で156回目になります。

規模の実感は、日本人参加者の記録が最も正確に伝えています。TMS2025に参加した公立小松大学の朴亨原准教授は、天田財団への報告書でこう位置づけています。

TMS 年次総会および展示会は、世界中の専門家が交流し、知識や技術を共有するためのプラットフォームを提供する、材料科学分野における世界最大規模の国際会議である

「米国の学会」という名前から国内イベントを想像すると、実態を見誤ります。同じくTMS2025に参加した茨城大学の伊藤温海氏は、受付で聞いた投稿数の内訳まで記録しています。提出されたアブストラクトは約4,700件で、米国約2,000、韓国約250、中国約250、英国約200、インド約200、ドイツ約150という構成でした。同氏の総括はこうです。

TMS は米国の国内講演大会ですが、このように米国以外の参加者も多く、実質的に国際会議として機能しています。

規模は10年以上、4,000人台で安定しています。2015年のオーランド開催(144回)は4,200人超、2026年のサンディエゴ開催は主催者発表で4,300人超でした。成長を追うイベントではなく、材料科学コミュニティが毎年集まる「定点」です。

いつ・どこで開催されるのか

2027年3月14日(日)〜18日(木)の5日間、フロリダ州オーランドのOrlando World Center Marriottで開催されます。展示会は3月15日〜17日です。講演のアブストラクト締切は2026年7月にすでに過ぎており、参加登録の受付と料金は2026年8月時点で未発表です。

会場が今回の最大の特徴です。コンベンションセンターではなく、ホテルそのものが会場になります。Orlando World Center Marriottは客室2,008室・28階建て、約45万平方フィート(約4.2万平方メートル)のイベントスペースを持つ巨大リゾートホテルで、TMSがこの会場を使うのは2027年が初めてです。講演会場、展示ホール、宿泊、食事が1つの敷地に収まる自己完結型の開催になります。

ゴルフ練習場の芝生の先に建つOrlando World Center Marriottの白い高層タワー
会場のOrlando World Center Marriott。コンベンションセンターではなく、このホテル自体が講演・展示・宿泊のすべてを収容します(2012年撮影、会期外)。写真:Bernard GagnonCC BY-SA 3.0

日本からの移動は、米国東海岸側の都市としても負担が重い部類です。

項目内容
直行便定期便はなし。米国内(ロサンゼルス、ダラスなど)で1回乗り継ぎ、最短でも約18時間
チャーター便2026年2〜3月にZIPAIRが成田〜オーランドの直行チャーター便(約14時間)を日本初運航。2027年春の設定は未定
空港から会場オーランド国際空港(MCO)は全米7位の利用者数。会場は市中心部ではなく、Walt Disney Worldに近いリゾートエリアにあります
3月の気候平年値で最高26.1°C、最低13.2°C、月間降水量約77mm(NOAA、1991〜2020年)
入国日本国籍の短期出張はESTAが基本。ビザが必要な場合の招聘状はTMS2027サイトで申請可能

3月のオーランドは東京の初夏に近く、日中は半袖でも過ごせる暖かさです。ただし会場内は空調が強く、講演室では羽織るものが必要になります。

行程プランを見る

誰が主催しているのか

主催のTMSは、ピッツバーグに本部を置く非営利の学会です。スタッフ約30人、年間収入700万ドル超という小さな組織で、収入源は会費、7誌の査読付き学術誌(JOM、Metallurgical and Materials Transactions A/Bなど)、そして年次大会です。営利のイベント会社ではないため、大会の設計は一貫して「研究者の交流」に最適化されています。展示会の運営はシカゴのCorcoran Expositions、施工はFreeman、宿泊はonPeakと、実務は外部の専門会社に委ねる体制です。

この主催者の性格は、日本企業が予算を組むうえで2つの実務的な意味を持ちます。第一に、基調講演で市場の方向性を打ち出すタイプのイベントではないこと。プログラムは110のシンポジウムの積み上げであり、全体を貫く「今年のテーマ」はありません。第二に、展示会が収益の主役ではないこと。出展社数約60社という規模は、主催者にとって展示会が技術プログラムの付属であることの表れです。展示会目当てで行くと空振りします。

どんな企業・人が参加しているのか

参加者の中心は研究者です。TMS2025の参加者調査によれば、職業人参加者の所属は大学61%、産業界20%、政府系研究機関・非営利16%、その他3%でした。加えて大学院生が1,000人以上参加します。国別ではTMS2025の上位5か国が米国、韓国、カナダ、ドイツ、そして日本でした。日本は参加国として上位5位に入る常連です

産業界の20%も、営業職ではなく研究開発側の人々です。アルミニウム関連ではAlumina & BauxiteやAluminum Reduction TechnologyといったSupplier Forum付きシンポジウムが毎年立ち、製錬・鋳造の技術者が集まります。Pratt & Whitneyのような航空エンジンメーカーの技術フェローが講演する場でもあります(2026年のLight Metals部門昼食会)。

2026年の展示会に出展した約60社の顔ぶれは、来場者が誰かを最もよく説明します。Carl Zeiss Microscopy、Bruker、TESCAN、Oxford Instruments、Gatan/EDAXといった電子顕微鏡・分析機器、NETZSCHやLinseisの熱分析装置、Thermo-CalcやCompuThermの計算熱力学ソフト、StratasysやDesktop Metalの積層造形装置、そしてOak Ridge National LaboratoryやLawrence Livermore National Laboratoryといった国立研究所のブースです。つまり、研究室に物を売る会社と、研究者を採用したい機関が出展しています。

日本との関わりは深く、そして非対称です。研究コミュニティの結びつきは強固で、日本金属学会(JIM)はJIM/TMS Young Leader International Scholar Programとして35歳以下の研究者1〜2名を毎年TMSへ派遣し(補助上限45万円、米国機関訪問を含む場合60万円)、2026年で20回目になります。溶接学会誌には大阪大学の研究者によるTMS2025参加報告が載り、日本熱電学会はTMS2027の熱電シンポジウムへの投稿を会員に呼びかけました。高田工業所のようなプラントエンジニアリング企業が技報で参加報告を公開した例もあります。TMS2026ではKazuki Morita教授の研究者人生を称える晩餐会が公式プログラムに組まれました。一方で、2026年の展示会に日本企業の出展は1社もありませんでした。研究者は行き、企業ブースは出ていない。これがTMSにおける日本の現在地です。

会場では実際に何が起きるのか

5日間の中身は、シンポジウム、ポスターセッション、小さな展示会、そして表彰・交流行事の4層です。

技術プログラムが本体です。2027年は110のシンポジウムが承認済みで、積層造形、AI・機械学習の材料設計応用、軽金属、原子力材料、熱電材料、リサイクル・サステナビリティまで、材料科学のほぼ全域を覆います。プログラムは月曜から木曜の8つの半日セッションで構成され、TMSの規定によりシンポジウム内の並行セッションは組まれません。聴きたいシンポジウムを1つ決めれば、月曜から木曜まで同じ部屋に座り続ける計画が成立します。TMS2025では70以上の部屋で141のテーマが同時進行しました。

ポスターセッションは月・火の夕方に展示ホール内で開かれ、2025年は600件超の発表がありました。ここが実質的なネットワーキングの主戦場です。展示ホールでの開催という設計は出展社への集客装置でもあり、月曜のオープニングレセプションと火曜のハッピーアワーは飲食付きでホールに人を集めます。

展示会そのものは控えめです。2026年の開場時間は月・火が11時〜18時30分、水曜が10時〜14時、合計で実質2日半でした。60ブース規模なので、来場者として全ブースを見るのに半日かかりません。逆に出展側から見れば、4,000人超の研究者と1,000人超の大学院生が確実に通る動線に置かれた60分の1という、競合密度の低い環境です。

名物もあります。学生チームが日本刀のような刃物を鍛造して競うBladesmithing Competitionは2027年もシンポジウムとして承認されており、開催年には展示ホールの目玉になります。学生ポスターコンテスト、キャリア相談のCareer Hub、各技術部門の表彰昼食会と、学会らしい行事が並びます。TMS2025に子連れで参加した研究者がmother's roomの存在を特筆したように、運営は研究者のコミュニティ運営として成熟しています。

参加・出展にいくらかかるのか

2027年の参加費と出展料はどちらも未発表です(2026年8月時点)。判断の基準になるのは2026年実績で、参加費は以下のとおりでした。

区分(2026年実績)早期割引(1月31日まで)通常料金
会員$925$1,050
非会員(TMS会員資格1年分込み)$1,175$1,300
シニア会員$625$750
大学院生(会員)$285$325
大学院生(非会員、会員資格込み)$360$400
1日券(会員)$525$600
1日券(非会員)$675$750

米国の大型テック系カンファレンスと比べると穏当な水準です。実務上の注意は3つあります。第一に、非会員料金には会員資格が含まれるため、翌年以降も関わるなら実質差額は見た目より小さいこと。第二に、返金は1月末必着の書面請求のみで、以降は一切返金されず、キャンセルには$130の手数料がかかること。承認に時間のかかる日本企業は、この日付から逆算して稟議を回してください。第三に、同一企業から10名以上を送る場合はコーポレートレートの交渉窓口が別にあることです。

出展費用は、2026年実績で10フィート角(100平方フィート、約9.3平方メートル)のブースが$3,000、露出した角1面につき$150の追加でした。床面積単価は主要な米国展示会の中でも安い部類です。1区画にはフルカンファレンス登録1名分(全講演に入れます)と展示ホール限定登録2名分、バックドレープ、カーペット、社名サインが含まれます。事前・事後の来場者メールリスト(オプトイン分、1回限り)と、顧客向けの展示ホール無料招待枠5件も付きます。2027年の料金表は未公開のため、出展窓口のCorcoran Expositionsに直接問い合わせる必要があります。2026年8月時点で2027年のフロアプランにはすでに15社が枠を押さえています。

渡航費を含む総額は、直行便がない分だけ乗り継ぎ時間と行程日数が延びる点に注意が必要です。宿泊は会場ホテル(onPeak経由の公式レート)を基準に、貴社の人数と日程での概算を下のツールで試算してください。

費用を試算する

日本企業にとって行く価値はあるか

判断基準は1つです。送るのが研究開発の人材か、営業の人材か。TMSは前者には確実に機能し、後者にはほぼ機能しません。

行くべき企業。 第一に、材料・金属・製造分野で研究開発部門を持つ企業です。アルミ・チタン・特殊鋼、積層造形、電池・電子材料、計算材料設計。これらの領域で自社の研究者に発表させ、世界の研究動向を定点観測させる場として、110シンポジウム・4,000人超という密度は他にありません。日本金属学会が20年にわたり若手を派遣し続けているのは、この価値の制度的な証明です。第二に、博士人材の採用を考える企業です。大学院生1,000人超が発表しに来る場であり、主催者自身が展示会を採用の場として売り込んでいます。第三に、研究室向けの計測・分析機器や解析ソフトのベンダーです。出展社約60社の顔ぶれ(Zeiss、Bruker、Thermo-Calcなど)はまさにこの業種であり、日本企業の出展ゼロという空白は、この業種にとってだけは先行者の機会と読めます。

行かなくてよい企業。 展示会でリードを刈り取りたい企業です。開場実質2日半・約60ブースの展示会は、営業目的の投資対効果を成立させる規模ではありません。来場者の61%は大学所属で、購買決裁を持つ事業会社の役員層はほぼいません。マーケティング担当だけを送っても、講演が聴けなければこのイベントの価値の大半にアクセスできません。同じ予算で商談を狙うなら、貴社の業界の専門展示会に行くべきです。

もう1つ、スケジュール上の注意があります。参加だけなら登録開始を待てばよいのですが、発表するには2026年7月のアブストラクト締切を通過している必要がありました。2027年に演題なしで視察し、2028年の発表を狙って社内の研究テーマを仕込む、という2年計画が現実的な入り方です。

TMSは、日本の材料研究者にとってはすでに「行くのが当たり前」の学会です。企業としての関わり方を設計する段階で迷いがあれば、貴社の状況を踏まえた参加・出展判断を下記からご相談ください。

ご相談はこちら

よくある質問

TMS 2027はいつ・どこで開催されますか?
2027年3月14日〜18日、フロリダ州オーランドのOrlando World Center Marriottで開催されます。展示会は3月15日〜17日です。156回目の年次大会で、この会場を使うのはTMSとして初めてです。
TMS 2027の参加費はいくらですか?
2027年の料金は未発表です。2026年実績では会員の早期割引が$925、通常$1,050、非会員(会員資格込み)が$1,175〜$1,300でした。大学院生は$285〜$400です。返金は1月末が期限で、手数料$130がかかります。
日本からオーランドへの直行便はありますか?
定期直行便はありません。米国内で1回乗り継ぎ、最短でも約18時間かかります。2026年2〜3月にZIPAIRが日本初の直行チャーター便(約14時間)を運航した実績はありますが、2027年春の設定は未定です。
展示会の規模はどのくらいですか?
小さいです。2026年実績で出展社は約60社、開場は実質2日半でした。出展社は電子顕微鏡、熱分析装置、計算材料設計ソフトなど研究開発向けベンダーが中心です。4,000人超の技術プログラムに付属する位置づけと考えてください。
日本企業や日本人研究者も参加していますか?
しています。2025年の国別参加者数で日本は上位5か国に入りました。日本金属学会は若手研究者を毎年TMSへ派遣する制度を持ち、大学・企業の参加報告も複数公開されています。一方、2026年の展示会に日本企業の出展はゼロでした。
出展にはいくらかかりますか?
2026年実績で10フィート角(約9.3平方メートル)のブースが$3,000、露出した角1面につき$150の追加でした。1区画にフルカンファレンス登録1名分と展示ホール限定登録2名分が含まれます。2027年の料金は出展窓口Corcoran Expositionsへの問い合わせが必要です。
TMS 2027 Annual Meeting & Exhibition完全ガイド:日本企業のための参加・出展判断