NRF: Retail's Big Show · ニューヨーク

NRF 2027(Retail's Big Show)完全ガイド:日本企業のための出展・参加判断

最終更新:2026年8月6日

NRF 2027: Retail's Big Show(通称NRF、リテールビッグショー)は、2027年1月10日〜12日にニューヨークのJacob K. Javits Convention Centerで開催される、世界最大の小売業界カンファレンス・展示会です。結論から言えば、小売事業者にとっては米国カンファレンスの中で最も費用対効果の高い部類です。Expoパスが2026年12月30日まで無料だからです。一方、この記事の主な読者である日本のリテールテック・SaaSベンダーにとっては話が逆になります。非小売の参加費は$2,000超、人数は1社最大5名に制限され、ブース料金は非公開の交渉制です。NRFは「小売事業者を無料で集め、ベンダーに売る」という設計のイベントであり、行くかどうかはその前提で判断する必要があります。この記事では2027年の確定情報と2026年の実績を分けたうえで、費用、出展ルート、そして1,000社超の出展フロアで確認できた日本発の企業が3社だったという実情まで並べます。

4.1万人超

来場者(主催者公表)

1,000社超

出展社(2026年実績)

100か国超

参加国

$2,000

非小売の最低参加費

「BE NEXT. EXPO HALL LEVEL 3」と大書きされた紫の看板が掛かるExpoフロアの入口。看板の右端にはRetail's Big Showの円形ロゴがあり、入口の先では大勢の来場者が大型ブースのあいだを行き交っています
NRF(第102回Retail's Big Show)のExpoフロア入口。写真は2013年1月14日の会期中に主催者が撮影したもので、会場は同じJacob K. Javits Convention Centerですが、2021年に完了した改修・増築より前の姿です。写真:National Retail FederationCC BY-SA 2.0

NRF: Retail's Big Showとは何のカンファレンスか

NRFは全米小売業協会(National Retail Federation)が毎年1月にニューヨークで開く年次大会で、小売業界では世界最大のイベントです。主催者は毎年41,000人超の業界関係者が集まると公表しており、2026年の実績は第三者の報告ベースで来場者40,000人超、出展社1,000社超、参加国100か国超でした。セッションは170本超、登壇企業は450社超、フロアに並ぶブランドは6,500超という規模です(いずれもNRF 2026の業界メディア集計)。

規模の推移には注目すべき点があります。来場者数は2020年ごろから約40,000人で頭打ちですが、出展社数は2018年の500社から2025年に1,000社へと倍増しました(Wikipedia掲載の推移)。来場者が増えないまま売り手が倍になったフロアで戦うことになる、という事実は出展判断の前提に置くべきです。

このイベントの中身は年ごとにはっきり動きます。2024年から3年連続で参加している東芝テックCVCの駐在メンバーは、テーマの変遷を2024年がリテールメディア、2025年が生成AIの可能性、2026年が「実際にリテールの現場でどう活用するか」と整理しています。2026年の空気を一言で表しているのは、富士通の現地レポートに登場する株式会社ダイヤモンド・リテイルメディアの阿部幸治氏の発言です。

今年のNRFでは、エージェンティックAIがトレンドであり、これにより購買体験が大きく変化する

元ユナイテッドアローズCDOで300Bridge CEOの藤原義昭氏は、NRF 2026最大のパラダイムシフトを「AIのOS化」、つまりAIを「使う」段階から「共に走る」段階への転換だと総括しました。訪日ラボのレポートも同じ変化を別の言葉で捉えています。

AIは『実験』から『実践・証明』のフェーズに入った

2027年はいつ・どこで開催されるのか

2027年1月10日(日)〜12日(火)の3日間、ニューヨーク・マンハッタン西側のJacob K. Javits Convention Centerで開催されます。参加登録は2026年8月時点ですでに受付中です。本体の前後には併催プログラムが連なります。Commerce Media Saturday、Supply Chain Sunday、AI Monday(AI in Retail「AiR」Summit)、そして学生向けのNRF Foundation Student Program(2027年1月7日〜10日)です。関心領域が決まっているなら、本体より併催プログラムの日程から逆算して滞在を組む方が効率的です。

日本からの渡航は直行便で完結します。

項目内容
直行便羽田・成田からJFK・ニューアーク(EWR)へ。JAL、ANA、ユナイテッド航空、デルタ航空が毎日運航
所要時間往路約12時間35分〜13時間15分、復路約14時間〜14時間45分
1月上旬の気候日中の最高4〜5°C、朝晩は-2°C前後。みぞれ・雪の日もあります
入国ESTAの事前取得が必要です
会期の曜日日曜開幕のため、土曜着で時差を1日調整する日程が組みやすいです

1月のニューヨークは東京より確実に寒く、雪の影響で交通が乱れる日もあります。徒歩移動を前提にするなら防寒と防水の両方を用意してください。

青空を背景にした、ガラス張りのJacob K. Javits Convention Centerの正面外観。中央の高い箱型の棟から左右に低い展示棟が伸び、手前に6本の旗竿が並んでいます
会場のJacob K. Javits Convention Center正面。2021年に完了した改修・増築後の姿です。写真は2026年2月の撮影で、NRFの会期中ではありません。写真:Kidfly182CC BY 4.0
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誰が主催しているのか

主催の全米小売業協会(NRF)は1911年設立、世界最大の小売業界団体です。380万超の小売事業者と5,200万人の従業員を代表し、ワシントンDCでカード決済手数料(インターチェンジフィー)や税制のロビイングを行う団体でもあります。2010年からMatthew Shay氏がPresident & CEOを務め、同氏の在任中に収入は倍増、その中心はカンファレンス収入です(Wikipedia)。

この主催者の性格が、イベントの構造をそのまま決めています。NRFの目的は会員である小売事業者を集めることなので、小売事業者のExpoパスは無料、All-Accessも会員なら$1,100からと安く設定されています。収益はベンダー側から取ります。非小売の参加費は最低でも$2,000、All-Accessは1社5名まで(非会員は2名まで)に制限され、ブースとスポンサーシップは公開料金表のない営業交渉制です。ベンダーの数と参加人数を意図的に絞ることで買い手の密度を保ち、その希少性を売るという、業界団体ならではのモデルです。AWS re:Inventのような主催者自身の製品発表はありません。

信頼性について1点だけ補足します。NRFは2023年に組織的万引きに関する不正確な統計を撤回した経緯があります(Wikipedia)。ショーの運営には関係しませんが、NRFが発表する市場統計を引用する際には知っておくべき事実です。

NRFはニューヨーク本体のほかに、シンガポールのNRF Big Show Asia Pacific(6月開催、2026年は主催者発表で80か国超から11,000人超)とパリのNRF Big Show Europe(9月開催)を運営しています。日本企業にとってこの2つは後述のとおり、ニューヨーク出展の前段として使える存在です。

どんな企業が参加・出展しているのか

来場者の中心は小売企業のディレクター・シニアマネージャー層で、その次に多いのがC-suiteです(NRF参加者データを引いたAPPAREL WEB INNOVATION LABの報告)。参加国100か国超のうち、日本は参加者数で上位10か国に入っています。ブラジル、メキシコ、英国、フランス、ドイツなどと並ぶ規模で、日本の小売業界にとってNRF視察はすでに確立された行事です。

2027年の登壇者は2026年8月時点で28名が発表されています。基調講演はAmerican Eagle OutfittersのJay Schottenstein会長兼CEO。ほかにLevi Strauss & Co.のMichelle Gass CEO、ShopifyのHarley Finkelstein社長、NetflixのMarian Lee CMO、ALDIのDave Rinaldo COO、Ulta BeautyのKecia Steelman CEO、Sam's Club、BJ's Wholesale Club、Gap Inc.のCTOなど、米国小売のCEOとその技術責任者が並びます。日本企業の登壇者は現時点でいません。

出展側は2027年の出展社ディレクトリに既に1,347社が掲載されています(2026年8月6日時点)。区分別ではE-Commerceが95社、Customer Service・CRMが81社、Big Dataが77社という構成で、AWSやGoogle、VusionGroupといったグローバル勢が大型ブースを構えます。新興企業向けには設立2021年以降の企業限定のStartup Hub、スタートアップ50社超を集めたNRF Innovators Showcase(2026年はリバーサイドパビリオンに設置)という専用区画があります。

日本企業の出展実績は、はっきり書くと薄いです。NRF 2026に出展した日本発の企業は、確認できた範囲で3社でした。東芝テックの米国子会社Toshiba Global Commerce Solutions(AI活用ソフトウェア、POS)、GK Softwareと共同出展した富士通(コーザルAIによるマーケティング支援など5ゾーン構成)、そしてRFID・スキャナーのAsReaderです。AsReaderはこの2026年の会期中に、COOのPaul Whitney氏がDon Percival Awardを受賞しています。NECと電通はシンガポールのAPAC版には出展しましたが、ニューヨーク本体での出展は確認できませんでした。JETROのジャパンパビリオンはNRFには存在せず、JETROの出展支援展示会一覧にもNRFの記載はありません。

つまり日本企業の関わり方は「視察は厚く、出展は薄い」です。富士通は自社ブースに加えて日本の大手小売の顧客とSOHO地区の店舗ツアーを実施しており、視察レポートも藤原氏、Sprocket、Digiday Japan、訪日ラボなど毎年多数公開されます。売る側として立つ日本企業が3社という現状は、裏を返せばそこが空いているということです。

会場では実際に何が起きるのか

3日間の中身は、基調講演、170本超のセッション、Expo、そして併催プログラムに分かれます。セッションはAI Stage、Ask the Speaker、Exhibitor Big Ideas、Featured Sessionなどのトラックに分かれており、注意すべき点が1つあります。AI Stageのセッションは小売事業者専用で、ベンダーはAll-Accessパスを購入しても入れません(公式登録ページの明記事項)。ベンダーとして参加する場合、貴社が買っているのは主にExpoフロアと基調講演へのアクセスです。

天井の高い大ホールで、円卓に着いた数千人の参加者が吊り下げられた大型スクリーンの方を向いている様子。席は奥の壁際まで埋まっています
NRF(第102回)の全体セッション。基調講演は劇場型の座席ではなく円卓を並べた形式で行われ、フロアの奥まで席が埋まります。写真は2013年1月13日の会期中に主催者が撮影したものです。写真:National Retail FederationCC BY-SA 2.0

2026年の会場で何が起きたかは、日本語の一次レポートが充実しています。最も注目を集めたのはGoogleのSundar Pichai CEOとWalmart次期CEOのJohn Furner氏の対談で、AIエージェントが購買を代行する「エージェンティックコマース」と、その共通規格構想が主題でした。Sprocketの深田浩嗣CEOはこれを、AIが顧客の代理人になることで生まれる全く新しい消費者行動の始まりと位置づけています。フロアレベルの具体的な変化としては、東芝テックCVCのメンバーがRFIDタグの単価が約10セントから2〜3セントまで下がり、適用範囲が一気に広がったことを記録しています。

会場の物量については、ニューヨーク在住のライターRINA Yoshikoshi氏の一文がそのまま実態です。

「ビッグ・ショー」ではこうしたキーノートセッションだけでなく他にも、マーケティングやEC、サプライチェーン、サステナビリティといった多岐にわたるテーマで数百のセッションが開催されます。

3日間で全体を見ることはできません。日本語の過去レポートでテーマの当たりを付け、初日は基調講演とExpoの主要ブース、2日目以降を自社の領域(決済、リテールメディア、サプライチェーンなど)の専門セッションと商談に割り振るのが、複数の参加記録から読み取れる現実的な回り方です。なおAll-Accessパスには夜のOpening PartyとRetail's Big Concertのチケットも含まれており、ネットワーキングの実質はそちらで生まれるという点は米国の大型ショーの通例どおりです。

参加・出展にいくらかかるのか

参加費は貴社が「小売事業者」か「非小売(ベンダー)」かで別世界になります。2027年の公式料金は以下のとおりです(公式登録ページ、2026年8月6日時点)。

パス対象価格
All-Access小売事業者(NRF会員)$1,100〜$1,400(購入時期で変動)
All-Access小売事業者(非会員)$2,100〜$2,400
All-Access非小売(会員)$2,600(1社5名まで)
All-Access非小売(非会員)$3,800(1社2名まで)
Expoパス小売事業者2026年12月30日まで無料、以降$100
Expoパス非小売(会員)$2,000〜$2,100
Expoパス非小売(非会員)$3,200〜$3,500

割引の刻みは早期(2026年10月3日まで)、事前(11月19日まで)、最終(2027年1月7日まで)、当日(1月8日以降)の4段階です。このほか小売事業者向けには5名以上のチームパス($750〜$1,500/名)と、小売業10名以上を条件とする国際視察団パス($1,100/名)があり、日本の視察団はこの国際枠を使えます。報道関係者は無料、アナリストは$500です。

出展費用は二段構えで考えてください。第一の入口はStartup Hubで、約3m四方のブースが$6,000です。フルカンファレンスバッジ1枚とブーススタッフバッジ6枚、VCとの1対1ミーティングの機会が付きます。ただし対象は2021年以降に設立された企業に限られます。第二の本体フロアは公開料金表が存在せず、NRFの営業担当との交渉制です。参考値として、装飾会社の公開価格では6m×6mのターンキーブース設営が$35,550からとされています(2026年時点の業者公表値で、スペース料は別です)。これに輸送、搬入取扱(ドレイジ)、組立労務、電気工事が加わるのが米国展示会の常で、Javitsも例外ではありません。予算を組む段階で営業への見積もり依頼が必須であり、これは登録開始を待つ話ではありません。

渡航を含めた総額は人数と滞在日数次第です。貴社の条件での概算は下のツールで試算してください。

費用を試算する

日本企業にとって行く価値はあるか

判断は立場で二分されます。

小売事業者なら、行かない理由を探す方が難しいイベントです。Expoパスは2026年12月30日までの登録で無料、直行便で着き、日本語の視察手配も通訳も揃っており、テーマは今まさに日本の小売が直面しているAI実装です。訪日ラボの言う「実験から実践・証明へ」の移行を、40,000人規模の実例で確認できます。小売業10名以上を集められるなら、1名$1,100の国際視察団パスという枠もあります。日本の小売業界でNRF視察が毎年の行事になっているのは、この費用対効果ゆえです。

リテールテック・SaaSベンダーの場合は、目的を「見る」と「売る」に分けてください。見るだけなら費用は重いです。Expoパスに$2,000〜$3,500払い、AI Stageには入れず、得られる情報の大半は帰国後に日本語レポートで読めます。競合調査や製品ロードマップの検証といった明確な問いがない限り、視察目的の出張としては割高です。

売る側に回る、つまり出展するなら評価は変わります。買い手の密度はNRFの設計そのものが保証しています。来場4万人の中心が小売のディレクター以上で、ベンダーの入場は絞られ、日本発の出展社は3社しかいません。米国・グローバル小売への販路を本気で開くつもりがあるなら、日本勢の空白はRSAカンファレンスと同じく機会です。2021年以降設立の企業なら$6,000のStartup Hubが最初の一歩として現実的で、VCミーティングまで付いてきます。それより古い会社は本体フロアの交渉制となり、金額も準備も跳ね上がるため、2027年1月はExpoパスでフロアと競合を偵察し、2028年出展を狙うのが堅実な順序です。視察団パスは小売業限定のため、ベンダーはこの偵察に非小売価格を払うことになります。

もう1つの現実的な迂回路は、6月のNRF APAC(シンガポール)です。規模は11,000人超とニューヨークの4分の1ですが、NECや電通など日本勢が既に出展しており、日本人参加者向けのネットワーキングイベントも開かれています。時差も渡航費も小さいAPACで出展の型を作ってからニューヨークに進む、という2段階は、いきなりJavitsの交渉に入るより失敗コストが低い選択です。

いずれの場合も、締切は価格表より早く来ます。早期割引は2026年10月3日、小売の無料Expoパスは12月30日、そして出展交渉は公開価格がない以上、社内予算を確定させる前に始める必要があります。貴社の状況を踏まえた参加・出展の判断は、下記からご相談ください。

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よくある質問

NRF 2027はいつ・どこで開催されますか?
2027年1月10日(日)〜12日(火)の3日間、ニューヨークのJacob K. Javits Convention Centerで開催されます。毎年1月開催が定例です。参加登録は2026年8月時点ですでに始まっており、早期割引の締切は2026年10月3日です。
NRFの参加費はいくらですか?
立場で大きく変わります。小売事業者はExpoパスが2026年12月30日まで無料、All-Accessも会員なら$1,100からです。一方ベンダーなど非小売の企業はExpoパスが$2,000〜$3,500、All-Accessが$2,600〜$3,800で、人数制限も付きます。
日本からニューヨークへの直行便はありますか?
あります。羽田・成田からJFK・ニューアークへJAL、ANA、ユナイテッド航空、デルタ航空が毎日直行便を運航しており、往路の所要は約12時間35分〜13時間15分です。1月のニューヨークは最高気温4〜5°C、雪も降るため防寒は必須です。
日本企業もNRFに出展していますか?
しています。NRF 2026では東芝テックの米国子会社Toshiba Global Commerce Solutions、富士通(GK Softwareと共同)、AsReaderが出展しました。ただし出展1,000社超のうち日本発は数社で、JETROのジャパンパビリオンはありません。
ベンダー(非小売)の参加に制限はありますか?
あります。非小売のAll-Accessパスは会員でも1社5名まで、非会員は1社2名までしか購入できません。さらにAI Stageのセッションは小売事業者専用で、ベンダーはAll-Accessを買っても入れません。買い手中心の場を保つための設計です。
NRF APACやNRF Europeとの違いは何ですか?
ニューヨークが旗艦で、来場4万人超と規模が最大です。NRF APACはシンガポールで6月開催(2027年は6月1日〜3日)、規模は1.1万人程度ですが日本から近く、NECや電通も出展しました。NRF Europeはパリで9月開催です。
NRF 2027(Retail's Big Show)完全ガイド:日本企業のための出展・参加判断