# SEMA Show 2027完全ガイド:日本企業のための出展・参加判断 URL:https://www.withexpa.ai/conf/2027/sema-show 開催:SEMA Show(ラスベガス) 最終更新:2026-08-23 SEMA Show 2027は、2027年11月2日〜5日にラスベガスのLas Vegas Convention Centerで開催される、自動車アフターマーケット(純正部品以外の用品・カスタムパーツ)の世界最大級のトレードショーです。結論から書きます。ホイール、サスペンション、マフラー、車載電装品といった製品を持ち、すでに米国に現地法人か販売網がある日本企業にとっては、北米で最も費用対効果の高い出展先の一つです。10ft×10ftのスペース代は会員価格で$2,495、来場バッジは早期登録で$50です。一方で、**この展示会は入場そのものに資格審査があり、ソフトウェア会社、物流会社、旅行会社は資格対象外と明記されています**。この記事では、その審査の中身、実際の総額、日系出展社の確認できた実績、同じ週に開催されるAAPEXの扱い、そして日本語ではどこも書いていない「会場が少し縮んでいる」という事実まで扱います。 - 来場者(2025年実績): 15.3万人 - 出展ブランド(2025年): 2,300社 - うち初出展: 500社 - スペース代(会員・10ft×10ft): $2,495 ## SEMA Showとは何の展示会か SEMAショーは、クルマの「純正のままでは手に入らない部分」を売り買いする業界見本市です。ホイール、サスペンション、排気系、ボディキット、車載電装品、オフロード用品、レストア用補修部品、塗装・ラッピング材、整備工具までが、14のセクションに分かれて並びます。主催は米国自動車用品工業会(SEMA、Specialty Equipment Market Association)、1963年設立の非営利業界団体です。第1回は1967年で、2020年の中止を除いて毎年開催されています。 **日本での報じられ方と実態にはずれがあります。** 日本語のニュースでSEMAが取り上げられるとき、写真になるのは決まって派手なカスタムカーです。しかし会場に並ぶ車両のほとんどは、出展社が自社製品を装着して見せるデモカーです。この点は日本の自動車業界向け専門媒体BSR Webの加藤ヒロト氏が的確に書いています。 > 「SEMAショーと言えば一般的にはアメリカならではのド派手なカスタムカーが脚光を浴びがちだが、本来は「アフターマーケット製品」の見本市となる。車のカスタムやチューニングといったエンドユーザーになじみ深い部品だけでなく、旧車のレストア用補修部品や塗装・ラッピング、電装品、工具、整備工具などの「BtoB」領域ももちろんカバーしており、出展企業も国際色豊かだ。」 市場の大きさで見ると、SEMA自身の「2026 SEMA Market Report」は、米国のスペシャルティ用品市場の2025年の小売販売額を**529億ドル**($52.92 billion)としています。2024年は$52.65 billion、2023年は$52.3 billionで、ほぼ横ばいです。この市場の内訳で日本企業が知っておく価値があるのは次の3点です。 - **ピックアップトラック関連が業界売上の30%**、金額で$15 billion超を占めます。北米市場でいちばん大きい塊はスポーツカーではなくトラックです。 - 用品を購入した車両オーナーは**約4人に1人**で、その多くはサーキット用の趣味車ではなく日常の足に手を入れています。 - **購入者の半数以上が40歳未満**です。 ## 誰が入場できるのか(トレード限定の資格審査) 自動車アフターマーケットで事業を行っている企業の、オーナーまたは従業員だけです。公式登録ページは「This is a trade-only event」と明記し、資格のある業種と**資格のない業種を名指しで列挙**しています。ここが日本語でまったく紹介されていない、いちばん実務的な関門です。 | 区分 | 該当する業種 | | --- | --- | | 入場できる | 用品の卸・小売・ディストリビューター/整備・鈑金・塗装工場/ジョバー・購買グループ/フリート事業者・架装業者/ビルダー・製作工場・カスタムショップ/タイヤ・ホイール・サスペンション・ブレーキ関連/オフロード・トラック・レストア・モータースポーツ関連/アフターマーケット事業を持つOEM・ティア1/業界メディア | | **入場できない** | **一般消費者・愛好家/会計事務所・法律事務所/ソフトウェア会社/印刷・梱包・販促品会社/運送・物流会社/旅行代理店/展示会サービス事業者** | この除外リストは短く読み流せますが、意味は重いです。**自社の顧客が自動車アフターマーケットであっても、自社がソフトウェア会社や物流会社であればバッジは発行されません。** 整備工場向けのSaaSを開発している日本企業がSEMAで営業しようとしても、そもそも入場できないということです。 ### 必要な書類 登録ポータルは2つのグループから1点ずつを求めます。 | グループ | 認められる書類 | | --- | --- | | A:在籍の証明 | 独自ドメインの会社メールアドレス/直近の給与明細2通/社員写真証 | | B:事業内容の証明 | アフターマーケット事業がわかる自社サイト/有効な営業許可証/会期中まで有効な税務登録/直近のアフターマーケット仕入の請求書2通 | 会社のオーナーはグループBのみで足ります。そのうえで次の3点が実務上の壁になります。 1. **提出書類はすべて英語である必要があります。** 登記簿謄本も会社案内も請求書も日本語なので、現実的な近道は「アフターマーケット事業が読み取れる英語のコーポレートサイト」を証明に使うことです。英語サイトがない場合は書類の英訳が要ります。 2. **Gmail、Yahoo、Hotmailのアドレスは業務用メールとして認められません。** 独自ドメインが必須です。 3. **審査には最大2週間かかります。** 渡航直前に登録して間に合う手続きではありません。 なお海外出展社のバッジは郵送されず、現地受け取りのみです(米国・カナダは期日までに登録すれば郵送)。一般消費者が会場に入れるのは最終日金曜の一般公開日だけで、2026年のチケットは$130(コンサート込みは$170〜$210)、16歳以上が条件でした。 ## いつ・どこで開催されるのか 2027年11月2日(火)〜5日(金)の4日間、ラスベガスのLas Vegas Convention Centerで開催されます。開場は初日から3日目が9:00〜17:00、最終日が9:00〜16:00という形が続いています。SEMA公式サイトは翌年以降の日程も公開しており、2028年は10月31日〜11月3日、2029年は10月30日〜11月2日です。**11月第1週の火曜から金曜という枠は動きません**ので、複数年の北米戦略を立てるうえでは予定に固定して構いません。 ### 渡航条件は、この規模の展示会としては良くない部類です **日本からラスベガスへの直行の定期便はありません。** 羽田・成田・関西のいずれからも運航されていません。唯一見つかった直行はZIPAIRの成田〜ラスベガスで、2026年6月22日〜28日のワールドシリーズ・オブ・ポーカーに合わせたチャーター便です。11月の会期には運航しません。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 経路 | ロサンゼルスまたはサンフランシスコで乗り継ぎ(シアトル経由も可) | | 飛行時間のみ | 羽田〜LAX〜LASで約14時間30分、羽田〜SFO〜LASで約13時間20分 | | 実際の所要 | 乗り継ぎ2〜4時間を含めて片道およそ17〜20時間 | | 入国 | ESTAで渡航できます。2026年1月1日時点で**40.27ドル**、有効期間2年 | ESTAの金額には注意してください。2025年9月30日に$21から$40へ引き上げられ、2026年1月1日の物価調整で$40.27になりました。**$21と書いてある解説記事はすべて古い情報です。** 気候は、この連載で扱う他の米国展示会と逆で、ラスベガスの11月上旬は穏やかで乾いています。NOAAの平年値(1991〜2020年)で11月1日は最高23.3°C、最低11.7°C、11月の月間降水量はおよそ10mmです。日中は上着が要らず、朝晩だけ冷えます。傘は不要と考えて構いません。 ### 費用がかさむのは航空券ではなくホテルです SEMAと後述のAAPEXが重なる週は、ラスベガスで年間有数の混雑週です。Las Vegas Review-Journalは、SEMA週のフォー・クイーンズが1泊$149、SEMA週以外の11月の同じホテルが$59だったと報じています。**およそ2.5倍です。** 大型展示会の週は平常時の2〜3倍という水準が一般的な目安になります。 公式の宿泊手配はonPeakが担当し、通常料金を下回るレートと価格保証を提供しています。2026年開催分のキャンセル期限は10月8日でした。**会期の半年前には押さえてください。** ![Las Vegas Convention CenterのRiviera駅の乗降場に停まる、Vegas Loopのロゴが入った白いテスラ車と、その奥に見えるラスベガスのホテル群](https://www.withexpa.ai/conf/2027/sema-show/loop-riviera-station.jpg) **知っておくと役立つこと** Las Vegas Convention Centerは展示スペースだけで約27万平方メートルあり、SEMAはCentral、North、South、West Hallをまたいで使います。館の移動には**Vegas Loop**が使えます。The Boring Companyが掘った地下トンネルをテスラ車が走るもので、LVCC構内に5駅(South、Central、West、Riviera、Resorts World)があり、**来場者は無料です**。West HallからCentral・North Hallまでは徒歩で最大25分かかるところ、トンネル経由なら約2分です。2025年に現地を歩いた秋元一利氏も「無料のタクシー」としてこれを挙げています。ほかに公式ホテル47軒以上からの無料シャトル(朝7:00〜10:30、夕15:30〜18:30が中心)と、ラスベガス・モノレール(来場者割引パス$13.45〜$51.75)があります。 ## 誰が主催しているのか 主催はSEMA、1963年設立の会員制非営利業界団体です。カリフォルニア州ダイヤモンドバーに本部を置き、自らを「$52 billion超のスペシャルティ自動車アフターマーケットを支える中核団体」と説明しています。現在のプレジデントはMike Spagnola氏、イベント部門を統括するVice President of EventsはTom Gattuso氏、トレードショー・ディレクターはAndy Tompkins氏です。 Gattuso氏はこのイベントを次のように表現しています。 > "The SEMA Show is a global pop-up marketplace where business and culture intersect." SEMAが展示会以外に持つ機能のうち、日本のサプライヤーにとって実利があるのは次の2つです。**どちらも会員向けサービスで、展示会と同じ会員資格の下にあります。** | 機能 | 内容 | | --- | --- | | **SEMA Garage** | 製品開発の共同施設です。米国での排ガス適合や車両フィッティングの試験設備を、自前で持たずに使えます | | **SEMA Data** | 製品データの流通サービスです。米国のリセラーはここを通じて製品情報を取り込みます | ほかに政府渉外(改造・レース・車両所有の権利に関するロビイング)、市場調査、そしてインディアナポリスで開催するレース用品専門の**PRI Show**があります。**純競技用ハードウェアを売っている企業には、同じ主催者による小規模なもう一つの選択肢としてPRIがあります。** 2025年にはFIA(国際自動車連盟)との提携が発表され、FIAのMohammed Ben Sulayem会長がSpagnola氏とともに開会のテープカットを行いました。 ### ブース販売は人が売っています 出展ブローシャーには、製品セクションごとに担当営業の氏名、直通電話、sema.orgのメールアドレスが並んでいます(ホイール・アクセサリーとGlobal Tire ExpoはBrian Paik氏、鈑金・塗装はAmy Bartz-Simmons氏、トラック・SUV・オフロードとパワースポーツはAlan Josse氏、営業統括はWarren Kosikov氏)。**セルフサービスの申込フォームはありません。** 申込自体はservices.semashow.comのログイン制ポータルで進みます。 日本企業にとっての実務上の意味は単純です。**最初の一手は、自社の製品セクションの担当者に英語でメールを送ることです。** ## どんな企業が出展・来場しているのか 2025年の実績は、来場者15.3万人超(140の国・地域から)、出展ブランド2,300社、うち初出展500社、メディア2,500人超です。数字の性格を分けて書きます。 | 数字 | 値 | 何を数えたものか | | --- | --- | --- | | 来場者(2025年実績) | 15.3万人超 | SEMA自身が会期後に公表した全バッジ種別の合計 | | 来場者(営業資料) | 16万人超 | 出展社向けブローシャーの数字、会期前の想定 | | バイヤー・意思決定者 | 7万人超 | 上記の内数、主催者公表 | | 出展ブランド(2025年) | 2,300社 | 会期後、主催者公表 | **日本語の記事の多くが「16万人」を使っていますが、SEMA自身が2025年の実績として出した数字は15.3万人です。** 前者は会期前の営業数字です。 来場者の質は数字で出ています。役職別では**経営層43%、管理職26%で、合わせて69%が管理職以上**です。さらに17%が技術者・整備士といった実際に製品を取り付ける層です。購買影響力(net buying influence)は88%、国内78%・海外22%という構成です。米国内の内訳は西部53%、南部22%、中西部17%、東部8%で、**西海岸に大きく偏っています**。 そして日本企業に直接関係する数字が一つあります。**来場者数の国別トップ10で、日本は7位です。** 上からカナダ、メキシコ、オーストラリア、ブラジル、ドイツ、英国、日本、コロンビア、中国、コスタリカの順です。 ### 日本車が会場の中心にいます 2025年に主催者自身が発表した完成車メーカーの発表リストは、Ford、Honda、Mopar/Stellantis、Nissan、Toyotaの5社でした。**このうち3社が日本メーカーです。** トヨタはCamry GT-S、Tacoma H2-Overlander、そしてScionブランドを復活させたScion 01ハイブリッドSxSを、日産はFrontier Project AdventureとZ NISMOを、ホンダはHRC Performance Partsのビルドを出しています。 この構図が生まれた理由を、BSR Webの加藤氏は米国の輸入規制から説明しています。 > 「2010年代中盤ごろからいわゆる「25年ルール(製造25年経過後であれば右ハンドルでも輸入・登録可能)」の影響で、1990年代の日本車に対する注目がかつてないほど上昇。現在ではトヨタ・スープラや日産スカイラインGT-R、マツダRX-7など映画やゲームで脚光を浴びた車種たちは、SEMAショーで当たり前のように見かける存在となった。」 同氏は現行車についてもこう書いています。 > 「日産フェアレディ Z(RZ34型)やトヨタGRカローラ、トヨタGR86、スバルBRZ(ZD8)、ホンダ・シビックタイプR(FL5型)といった新車も同じく人気で、SEMAショーに出展する日本のチューニングパーツメーカーはこれら車種を中心とした商品展開を行っている。また、オフロード市場ではトヨタ・ランドクルーザー(北米では250のみを販売)や北米専売のピックアップトラックであるタコマ、タンドラが台頭しつつある」 **貴社の製品ラインがこの車種群を外していると、SEMAに行く意味は大きく下がります。** 逆に言えば、この車種群への適合品を持っていることが、日本企業がこの会場で優位を取れる根拠です。 ### 確認できた日系出展社 2026年の公式出展社名簿(2,151社)をブランド名で検索して確認できたのは次の9社です。名簿の国別フィルターがJavaScript制御で取得できなかったため**ブランド名検索による確認で、これは下限値です**。代理店名義や別法人名での出展は拾えていません。 | 出展社名(名簿表記) | 2026年ブース | 分野 | | --- | --- | --- | | Toyota Motor North America | 22200 | 完成車メーカー | | Nissan North America | 21521 | 完成車メーカー | | Honda Racing Corporation USA | 24789 | 完成車メーカーのモータースポーツ部門 | | Toyo Tire U.S.A. Corp. | 24599、SL01 | タイヤ | | CUSCO USA Inc. | 23613 | サスペンション・シャシー | | HKS | 名簿上ブース番号未表示 | チューニングパーツ | | TEIN USA, Inc. | 名簿上ブース番号未表示 | サスペンション | | Alpine Electronics of America | 10373 | 車載電装 | | JVCKENWOOD | 10104 | 車載電装 | 過去の回については、一次情報で次が確認できました。CUSCOは2025年にセントラルホールのブース24133でシビックタイプR(FL5)にMAX ORIDOエアロを装着した車両を展示、RAYS Wheels USAは2024年にブース22911、林テレンプは2025年に北米子会社HTNA名義のシエナと日本拠点のレクサスNXの2台を出展しています。 **この一覧から読み取るべき構造が2つあります。** **第一に、ほぼ全社が米国法人名義です。** Toyo Tire U.S.A.、CUSCO USA、TEIN USA、Alpine Electronics of America、Honda Racing Corporation USA、RAYS Wheels USA。林テレンプは北米子会社と日本本社で1台ずつを持ち込む形を取りました。**現地に在庫と窓口を持つ企業が有利な構造になっています。** **第二に、ジャパンパビリオンは存在しません。** ジェトロによるパビリオンも、都道府県の共同出展も、補助のついた小間クラスターも確認できませんでした。ジェトロとSEMAの接点は、ジェトロが運営する海外見本市データベースJ-messeへの掲載だけです。**同じジェトロがCESでは常設のジャパンパビリオンを構え、1日3回のピッチイベントまで運営していることと比べてください。** SEMAには公式の日本語ページも、日本の代理店も、日本担当窓口もありません。 つまり**日本企業はSEMAに、単独で、英語で、商業レートで出展しています**。CESのような公的な足がかりを前提にした計画は立ちません。 ## 会場では実際に何が起きるのか 4日間の中身は、展示フロア、New Products Showcase、車両コンテスト、教育セッション、そして最終日のイベント群です。 **主役は動く現物と車両です。** 出展社は自社製品を装着した車両を持ち込み、それが集客装置になります。米国とのスペック差については、日本の業界誌スタイルワゴンの取材班が現地で得た感触が具体的です。 > 「日本と比べると、アメリカではよりパワフルで過激な仕様を求められる傾向があり、マフラーひとつにしてもハイパワーな製品が注目されます」 > 「アメリカでは普段の足としても使われている60プリウスだけに、ボディキットや6連マフラーなどインパクトのある仕様は世界各国のベンダー、現地プロショップの方からも好印象でした」 主な仕掛けは次のとおりです。 - **New Products Showcase**:15カテゴリーの新製品展示です。出展社は1点無料、追加は1点$95(期限後$175)です。初出展社が最小の投資で露出を取れる枠です。 - **Battle of the Builders**:車両製作のコンテストです。2025年の総合優勝はTroy Trepanier氏の1936年式フォード・ロードスターでした。 - **教育セッション**:2026年開催分で99本以上、バッジがあれば無料です。別立てのカンファレンス費用はありません。**2027年開催分の講演公募(CFP)は2026年12月に開始されます。** - **SEMA Cruise**:最終日15:30から、出展車両がパレードで会場を出ていくフィナーレです。 - **SEMA Fest**:2023年に始まった一般向けの音楽・モータースポーツフェスです。最終日の15時以降に開催され、チケット制で一般客が入場します。2025年はQueens of the Stone Age、The Black Crowes、Neon Treesが出演しました。 - **SEMA Live**:2025年は31時間分がライブ配信されました。 ### 会場が少し縮んでいる、という話 ここは日本語でどこも書いていないので、率直に書きます。**SEMA自身が公表した数字で、出展ブランド数は2024年の2,400社超から2025年の2,300社へ、初出展社は580社から500社へ減っています。** どちらも主催者の発表で、床が確定した後の数字です。おおむね4%の縮小です。 そして2025年に現地を歩いた秋元一利氏が、同じことを目で見て書いています。 > 「今年は、出展ブランドの変化がホール全体に顕著に現れた。大型で派手なブースは減少し、空きスペースも目立った。逆にアジアや新興国からの出展社が増え、これまでセントラルホールでは見ることが少なかった細かなパーツ展示がずらりと並ぶエリアもあった。パンデミックを機に米国のビッグ3が事実上撤退したことも、こうした変化に影響しているのだろう。」 > 「一方でトヨタやトーヨータイヤといった日本企業は存在感を強めており、後退気味のアメリカンブランドとは対照的に映った。」 **独立した2つの情報源が同じ方向を指しています。** 主催者の数字と、現地で床を見た記者の観察です。ただし米国ブランドの後退については留保が要ります。SEMA自身の2025年発表資料にはFordとStellantisの新型発表が載っており、誰の記録にも登場しないのはGMだけです。「ビッグ3が消えた」ではなく「セントラルホールの密度が落ち、アジア勢が増えた」が、確認できる範囲の事実です。 出展を検討する側にとって、これは悪い話ばかりではありません。**床が緩んでいるということは、初出展社が入る余地があるということでもあります。** 2025年でも500社が初出展しています。 ## 同じ週のAAPEXをどう扱うか 同じ週に、別の会場でAAPEX(Automotive Aftermarket Products Expo)が開催されます。2026年はSEMAが11月3日〜6日にLVCC、AAPEXが11月3日〜5日にVenetian Expoでした。2027年のAAPEXの日程は未発表ですが、毎年SEMAの週に合わせて開催されているため、重なる可能性が高いと見ておいてください。 **この2つは、渡米の手間の面では1回で済みます。** - **登録は1回で両方に有効です。** 公式登録ページには「This registration application is to attend AAPEX and the SEMA Show ONLY」と明記されています。登録代行業者も両ショー共通です。この週は業界全体でAutomotive Aftermarket Industry Week(AAIW)と呼ばれます。 - **無料シャトルが5〜10分間隔**で、LVCCのPlatinum LotおよびMajestic LotとVenetian Expoの間を走っています。 **しかし買い手は別です。** ここを混同すると1日を無駄にします。 | | SEMA Show | AAPEX | | --- | --- | --- | | 売られている物 | カスタム・ドレスアップ・高性能パーツ、アクセサリー | 補修部品、整備機器、診断ツール | | 買い手 | 用品専門店、施工店、ビルダー、カスタムショップ | ディストリビューター、卸、整備・修理チェーン、ディーラー | | 主催 | SEMA | Auto Care Association と MEMA Aftermarket Suppliers の共同 | | 規模 | 出展2,300社、1.2 million NSF(2024年) | 出展2,500社超、550,000平方フィート、来場4.5万人 | | スペース代 | 会員$24.95/非会員$39.95 per sq. ft. | Auto Care Association会員$34.00 per sq. ft.(2026年) | AAPEXの来場4.5万人という数字は、来場者実数なのか登録者数なのか出展社スタッフを含むのかが公表されておらず、**尺度が確認できていません**。SEMAの数字と並べて比較しないでください。 判断は単純です。**貴社が補修部品や整備機器を売っていないなら、AAPEXに1日使う理由は薄いです。** 逆に補修部品も扱っているなら、同じ渡航でまったく別の買い手層に会えるので、これは実質的な追加コストなしの機会です。 ## 参加・出展にいくらかかるのか ### 来場する場合 | バッジ | 価格 | 登録時期(2026年開催分の例) | | --- | --- | --- | | 来場者・同伴者 | **$50** | 5月上旬〜6月下旬 | | 来場者・同伴者 | $75 | 6月下旬〜9月下旬 | | 来場者・同伴者 | $100 | 9月下旬〜会期直前 | | 非出展企業(NEC)ほか | **$399** | 通年 | | フィーチャービークル用バッジ | $75 | 通年 | **注意すべきは$399のNEC枠です。** 業界内にいながら出展もせず、バイヤーのカテゴリーにも当てはまらない企業はこの区分になり、早期バッジのおよそ8倍を払うことになります。2027年開催分の登録期間はまだ公表されていませんが、価格の段階は2年続けて同じです。 視察目的なら、費用の実体は渡航費と宿泊費です。バッジ$50は誤差の範囲で、**効いてくるのはホテル代と、乗り継ぎ2回分の移動時間です**。 ### 出展する場合 スペース代は公開されています。 | ブースサイズ | 平方フィート | SEMA/TIA会員 | 非会員 | 差額 | | --- | --- | --- | --- | --- | | 10ft×10ft | 100 | $2,495 | $3,995 | $1,500 | | 10ft×20ft | 200 | $4,990 | $7,990 | $3,000 | | 20ft×20ft | 400 | $9,980 | $15,980 | $6,000 | | 30ft×30ft | 900 | $22,455 | $35,955 | $13,500 | 最小区画は100平方フィート(10ft×10ft)です。アイランド形式は$4,500、半島形式は$1,500が加算されます。 **会員価格と非会員価格の差は1平方フィートあたり$15.00で、この連載で扱った米国の展示会の中でも最大級の開きです。** SEMAは年会費を公式サイトに掲載しておらず、電話(909-610-2030)に誘導されます。会員向けFAQには企業区分と年商に応じて**年$100〜$2,000**という幅があります。計算は明快です。最小の10ft×10ftでも割引額は$1,500なので、**年会費が$1,500を下回る区分に入るなら、最小ブースの1回で元が取れます。** タイヤ業界団体TIAの会員でも同じ割引が適用されます。ただし日本法人が標準の会員区分に入れるかどうかは公表されておらず、申し込み前に確認が必要です。 ### スペース代に含まれるもの 初出展の日本企業にとって、ここに一つ良い話があります。 - **400平方フィート以下のブースは、500ポンドまでの搬入作業(マテリアルハンドリング)が無料です。** 到着手段の指定もありません。米国の展示会で初出展社の見積もりを壊すのは、たいていこのドレイエージ費用です。小さなスタンドで身軽に送るなら、この枠内に収まる可能性があります。 - New Products Showcaseへの出品1点が無料です。 - 公式ディレクトリ、オンラインフロアマップ、モバイルアプリへの掲載。 - 教育セッションへの全アクセス。 - 100平方フィートにつきSEMA Industry Awardsのチケット1枚(上限10枚)。 - リニアブースには8フィートのバックドレープと3フィートのサイドドレープ。 - 450平方フィートを超えるブースはカーペット一式が1平方フィートあたり$2.55(早期発注時)。 ### スペース代に含まれないもの、つまり本当の総額 **$24.95という数字を、そのまま稟議書に出展費用として書かないでください。** 含まれないのは、スタンドの設計施工、輸送、500ポンドを超える搬入、電源、天吊り、人件費、渡航費です。 ラスベガスで効いてくるのが**労働組合の管轄**です。LVCCでは3つの組合が別々の領域を持っています。 | 組合 | 管轄 | | --- | --- | | Teamsters Local 631 | 搬入出とマテリアルハンドリング全般(荷降ろし、台車・ハンドトラックの使用、開梱、機材の組み立て) | | IATSE Local 720 | ブースの施工と撤去 | | IBEW Local 357 | 電気工事全般(AV用電源を含む) | **出展社が自分で運べるのは、機材を使わずに人が一度に持てる分だけです。** 開梱してカタログを並べる以上の作業は組合の仕事になります。ドレイエージの相場は業界コンサルタントの目安で100ポンドあたり$60〜$200、20ft×20ftのブースで$2,000〜$5,000程度とされます。**これはSEMAの公式料金表ではなく第三者の推計値です**が、公開されている唯一の手がかりです。 総額の目安として、米国のブース施工会社ProExhibitsは**10ft×10ftのプログラム総額を$15,000〜$45,000、20ft×20ftを$80,000〜$200,000**と見積もっています。施工会社自身の見積もりなので幅は割り引いて読むべきですが、**スペース代$2,495との差がこの仕事の実体です。** ### 申込のタイミングと、初出展社が不利になる仕組み 2026年開催分では、**3月27日までに出展契約書(ESRA)と申込金を提出した企業が、優先区画選択の対象**になりました。支払いは全額前納、7月中旬までに50%+8月上旬に残額、または25%+3回分割から選べます。 ここで知っておくべきなのが**シニオリティ・ポイント制**です。区画を選ぶ順番は出展歴に応じたポイントで決まります。長く出展している企業から、ホール、角地、人の流れる通路を押さえていきます。**初出展の日本企業は、残った区画から選ぶことになります。** これは価格では埋められない差なので、初回は立地に期待せず、New Products Showcaseや車両展示で人を呼ぶ設計にしてください。 2027年開催分の申込スケジュールはまだ公表されていません。2年続けて同じ形(春に契約、5月〜8月に支払い、11月開催)なので、**2027年3月には動ける状態にしておくのが安全です。** ### 車両を持ち込む場合 SEMAは車両の展示が前提の会場ですが、規則があります。フィーチャービークル用バッジは1台$75、上限2枚です。燃料は**4分の1タンクまたは5ガロンのいずれか少ないほう**が上限で、給油口は施錠またはテープ留めが必要です。カットオフスイッチのある車両はバッテリーケーブルを外さなくて構いませんが、会期中スイッチは切ったままで、来場者が触れない位置にある必要があります。アラームは無効化します。**会期中にエンジンを始動すると即時退場の対象になります。** ## 日本企業にとって行く価値はあるか 判断は2つの質問で決まります。**貴社は自動車アフターマーケットの事業者ですか。そして米国に販売網か現地法人がありますか。** **出展すべき企業。** ホイール、サスペンション、排気系、エアロ、車載電装、オフロード用品を作っていて、**すでに米国に販売網か現地法人があり、かつアメリカ人が実際に改造している車種に適合品を持っている**企業です。具体的にはタコマ、タンドラ、ランドクルーザー、フェアレディZ(RZ34)、GRカローラ、GR86、BRZ、シビックタイプR(FL5)です。買い手は7万人、その69%が管理職以上、市場規模は$52.92 billionで、そのうち30%がピックアップ関連です。HKS、TEIN、CUSCO、Toyo Tire、Alpine、JVCKENWOODはすでにこの床にいます。**10ft×10ftのスペース代$2,495は、この買い手層に会う対価としては安いです。** **視察から始めるべき企業。** 米国に足場がまだない用品メーカーと、米国製品を仕入れたい日本のショップ・輸入商社です。バッジは$50、費用の実体は渡航と宿泊だけです。林テレンプがSEMA 2025に出た理由として挙げたのは「市場ニーズやエンドユーザーの声を直接収集」することでした。**同じことは、まず来場者としてやれます。** 現地の競合、価格帯、求められるスペックを1回見てから出展を決めるほうが、順序として正しいです。 **まだ出展すべきでない企業。** 米国に販売網も現地法人もない企業です。理由は価格ではなく構造です。ジャパンパビリオンがなく、ジェトロの支援もなく、公式の日本語対応もなく、提出書類は英語のみで、区画はシニオリティ・ポイントで先に取られています。**支えてくれるものが何もない場所に、初回から単独で出ることになります。** 在庫と保証の窓口が米国にない相手から仕入れるバイヤーは多くありません。 **行く意味がない、というより行けない企業。** 自動車アフターマーケットの事業者でない企業です。**ソフトウェア会社、物流・運送会社、旅行代理店、会計事務所、法律事務所、印刷・販促品会社、展示会サービス会社は、資格審査で明確に除外されています。** 整備工場向けSaaSを持つ日本のIT企業がここで営業しようとしても、バッジが発行されません。この一点だけで検討を打ち切って構いません。 商用車の分野は完全に別の商圏です。補修部品の流通に当たるのは1月の[HDAW](/conf/2027/heavy-duty-aftermarket-week)、ドライバーとオーナーオペレーターに直接当たるのは3月の[Mid-America Trucking Show](/conf/2027/mid-america-trucking-show)、架装・特装は3月の[Work Truck Week](/conf/2027/work-truck-week)です。 **向いていない企業。** 純競技用のハードウェアだけを売っている企業は、同じSEMAが主催するインディアナポリスのPRI Showのほうが客層に合う可能性があります。そして「モーターショー」を期待して行く企業も向きません。**並んでいる車はすべて商品の見本で、商談のための道具です。** ### 判断の前提として、3つの空白を共有します **一つ目は、日本語の出展レポートに費用も成果も書かれていないことです。** 日本語の記事を8本読みましたが、ブース費用の実額を書いたものも、「商談につながったか」を書いたものも一本もありませんでした。出展社側の情報はすべて会期前か会期中のプレスリリースで、会期後の結果報告が存在しません。**貴社がSEMAの費用対効果を日本語で調べて何も出てこないのは、調べ方の問題ではありません。** **二つ目は、総額の最大の未知数がスペース代の外側にあることです。** ドレイエージ、電源、天吊り、人件費の実額はSEMAの出展社ポータル(ログイン制)の外には公開されていません。本記事の$60〜$200 per CWTは第三者の推計です。**米国のスタンド施工会社から見積もりを取る以外に、この数字を埋める方法はありません。** **三つ目は、15.3万人という数字の中身です。** SEMAは出展社スタッフを含むのかどうかを公表しておらず、同じ週のAAPEXと合算した数字が別の媒体で13.5万人や16.2万人として流通しています。**バイヤー7万人のほうが、判断に使う数字としては安全です。** 貴社の製品ラインと北米での立ち位置を踏まえた視察・出展判断のご相談は、下記からどうぞ。 ## よくあるご質問 ### SEMA Show 2027の参加費はいくらですか? 来場バッジは早期登録で$50、その後$75、直前は$100です。ただし有料である以前に資格審査があり、自動車アフターマーケットの事業者であることを英語の書類で証明する必要があります。審査には最大2週間かかります。 ### 誰でも入場できますか? できません。トレード限定です。ソフトウェア会社、物流会社、旅行会社、会計事務所、法律事務所は資格対象外と明記されています。一般消費者は最終日金曜の一般公開日(2026年は$130)のみ入場できます。 ### ブース出展の費用はいくらですか? スペース代はSEMAまたはTIA会員が1平方フィートあたり$24.95、非会員が$39.95です。最小100平方フィートなので、10ft×10ftなら会員$2,495、非会員$3,995です。装飾施工や輸送は別途で、米国のブース施工会社は10ft×10ftの総額を$15,000〜$45,000と見積もっています。 ### 日本からラスベガスへの直行便はありますか? 定期便はありません。ロサンゼルスまたはサンフランシスコでの乗り継ぎになり、片道は乗り継ぎ時間を含めておよそ17〜20時間です。ZIPAIRの成田線は2026年6月のチャーター便のみで、11月の会期には運航しません。 ### 日本企業も出展していますか? しています。2026年の出展社名簿ではトヨタ、日産、Honda Racing Corporation USA、Toyo Tire U.S.A.、CUSCO USA、HKS、TEIN USA、Alpine、JVCKENWOODの9社を確認しました。ほぼ全社が米国法人名義での出展です。 ### ジャパンパビリオンはありますか? ありません。ジェトロによるパビリオンも、都道府県の共同出展も確認できませんでした。ジェトロはCESでは常設のジャパンパビリオンを運営していますが、SEMAにはJ-messeへの掲載があるだけです。日本企業は単独で、商業ベースで出展しています。 ### 出展費用の補助を受けられる制度はありますか? 公的な共同出展枠がない以上、個社で申請する助成に頼ることになります。都内中小企業であれば東京都中小企業振興公社の展示会出展助成事業が海外展示会にも使え、助成限度額150万円、助成対象経費の3分の2以内です。対象は出展小間料・小間内の装飾費・輸送費で、航空券とラスベガスの宿泊費は対象外です。SEMAは会期中の宿泊費が費用の山になる展示会なので、助成で圧縮できる範囲は限られます。 ### 同じ週のAAPEXにも行くべきですか? 売っている物によります。登録は1回で両方に有効で、無料シャトルが5〜10分間隔で走っています。ただしSEMAはカスタム・ドレスアップ用品、AAPEXは補修部品と整備機器で、買い手が違います。補修部品を売っていないなら行く理由は薄いです。