# PAX East 2027完全ガイド:日本のゲーム会社のための出展・参加判断 URL:https://www.withexpa.ai/conf/2027/pax-east 開催:PAX East(ボストン) 最終更新:2026-08-23 PAX Eastは、北米最大級の一般ゲームファン向けフェスティバルです。**2027年は4月22日〜25日、ボストンのThomas M. Menino Convention & Exhibition Centerで開催されます。** 結論から申し上げます。**欧米向けに出すPCまたはコンソールのタイトルを持ち、ブース予算を確保できるインディーから中堅規模の開発・出版社**にとって、PAX Eastは認知とウィッシュリストを取りに行く場として妥当な選択肢です。一方で、キャラクターグッズやライセンス商材を扱う企業、そして商談相手を探している企業には勧めません。**PAX Eastに商談の枠は存在しません。** そのうえで、計画を立てる前に知っておくべき事実がひとつあります。**ジェトロが2026年度にジャパンパビリオンを出すゲーム関連見本市の一覧に、PAX Eastは入っていません。入っているのはPAX West(シアトル)のほうです。** 同じPAXブランドで、支援があるのは西海岸だけです。この違いを知らずにボストンを選ぶと、無料で使えたはずの枠を丸ごと逃すことになります。 - 2027年会期: 4月22日〜25日 - 出展社(2026年実績): 300社以上 - 4日間バッジ(2026年実績): 280ドル - ジャパンパビリオン: なし ![巨大な展示ホールを高い位置から見下ろした様子。天井からXboxとPlayStationの大型看板が下がり、その下に試遊台やアーケード筐体が並び、通路を大勢の来場者が埋めている](https://www.withexpa.ai/conf/2027/pax-east/expo-hall-2019.jpg) ## PAX Eastとは何のカンファレンスか **ゲームファンのための消費者イベントです。業界向けの日も、業界向けのバッジもありません。** 主催者自身の説明は「a celebration of gaming and gaming culture(ゲームとゲーム文化の祝祭)」で、中身はパネル、展示ホール、新作の試遊、ライブ、トーナメントです。 構造を見れば性格がはっきりします。**バッジは1種類だけです。** 出展社パス、バイヤーパス、プレスと商談者を分ける動線、商談予約システム、ビジネスセンター、いずれも存在しません。主催者は登録ページにこう書いています。 > Virtually all content at PAX East is accessible through the badge. There are no extra fees for the biggest panels, autograph sessions, demos, or even concerts.(east.paxsite.com) 「PAX Eastのコンテンツはほぼすべてバッジ1枚で入れます。大型パネルもサイン会もデモも、ライブでさえ追加料金はありません」という意味です。 開場時間も業界向けではありません。木・金・土は**10時から深夜0時まで**、日曜は18時までです。展示ホールだけは毎日18時に閉まり、その後の6時間はライブ、トーナメント、フリープレイ、パネルに使われます。 この性格を、2014年に出展したPLAYISM(アクティブゲーミングメディア)が一文で言い切っています。 > 「ビジネス向けイベントではなく、あくまでもゲームファンをメインターゲットにしており、また大手もインディーも分け隔てなく参加できるため、海外イベントの中でも、特にインディーにフィットしたイベントである。」(PLAYISM、2014年6月30日) **そしてもうひとつ、PAXにはかつてB2B版がありました。PAX Devです。2019年を最後に終了しています。** PAXから業界向けの層が抜けたのは偶然ではなく、運営の判断です。 ## GDCが商談の場で、PAXが認知の場です **この2つは競合しません。役割が違うだけです。** 日本のゲーム会社が北米で使える主要イベントは、目的で明確に分かれます。 | | [GDC](/conf/2027/gdc) | PAX East | | --- | --- | --- | | 会期(2027年) | 3月1日〜5日 | 4月22日〜25日 | | 都市 | サンフランシスコ | ボストン | | 来場者 | 業界関係者のみ | 一般ゲームファン | | 目的 | パブリッシャー、資金、技術提携 | 認知、試遊、ウィッシュリスト | | 商談の仕組み | Business Hall、商談テーブル予約、ゲスト商談パス | なし | | 入場費用の目安 | Business Hall ONLYパス99ドル | 4日間バッジ280ドル(2026年実績) | | ジェトロの支援 | 2027年は未発表 | なし(PAX Westにあり) | **言い換えると、GDCで契約の相手を見つけ、PAXで欧米のユーザーに見つけてもらう、という順番になります。** GDCの主催者自身が商談専用会場を新設して業界側に寄せた以上、一般ユーザーの反応を取る役割はPAXかgamescomに移りました。 **予算がどちらか一方しか許さない場合、初めての企業にはGDCを勧めます。** 認知は契約の後からでも取り返せますが、パブリッシャーとの接点は会期を逃すと1年待ちになるためです。 ## いつ・どこで開催されるのか 会期は**2027年4月22日木曜から25日日曜まで**です。展示ホールは毎日10時から18時まで、それ以外のプログラムは木・金・土が深夜0時まで動きます。 **日程の周期が安定していない点にご注意ください。** 直近3大会は次のとおりです。 | 開催年 | 会期 | | --- | --- | | 2025年 | 5月8日〜11日 | | 2026年 | 3月26日〜29日 | | 2027年 | 4月22日〜25日 | 5月、3月、4月と毎年動いています。**「毎年この時期」という前提で社内の年間予定に入れると外れます。** 毎年公式サイトで確認してください。 会場はボストンのシーポート地区にある**Thomas M. Menino Convention & Exhibition Center**(415 Summer St)です。展示面積は51万6,000平方フィート、会議室82室、会場全体で無料Wi-Fiが使えます。 **会場名は変わりました。** 2025年6月まではBoston Convention and Exhibition Center(BCEC)で、州の経済開発法案に盛り込まれた条文により、故トーマス・メニノ元市長の名を冠する現在の名称になりました。日本語の資料はまだ旧称のものが多く、PAX自身のシャトルバス案内も「BCEC Level 1 West」と書いています。**同じ建物ですので、旅程を作る際は混乱しないでください。** ![コンベンションセンターの外観。塔状のデジタル看板に「PAX 2016 EAST」と表示され、大きく張り出した曲面屋根が奥へ伸びる。手前は歩道とバス停](https://www.withexpa.ai/conf/2027/pax-east/venue-2016.jpg) 渡航条件は、米国出張のなかでは良好な部類です。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 直行便 | あります。**日本航空が成田・ボストン線を毎日運航**しています。JL008が成田18時50分発・ボストン17時25分着、JL007がボストン13時15分発・成田16時00分着(翌日)です(2026年3月29日〜10月24日の運航計画)。**羽田発の直行便はありません** | | 航空券 | 2027年4月分の実勢は未確定です。日本航空の自社サイトが掲げる東京発ボストンの参考運賃は2026年8月時点で**19万7,070円**からとなっています | | 空港から会場 | **タクシーで約8分**です。MBTAシルバーラインならWorld Trade Center駅下車で、**ローガン空港から乗る場合は無料**、帰りは2.40ドルです。運行は毎日6時30分から翌1時まで | | 市内から会場 | **サウスステーションから徒歩15分**です。2026年に視察した日本企業も同じ所要時間を記録しています | | 入国 | ESTAで渡航できます。2026年1月1日時点で**40.27ドル**、有効期間2年です | | 時差 | 会期中のボストンは米国東部夏時間(UTC-4)で、**日本との時差は13時間**です | | 気候 | 4月下旬のボストンは最高気温15〜16度、最低気温7〜8度が目安です。**日中は上着、朝晩はコートが要る気温**とお考えください | | 駐車場 | 会場に1,300台分、1台35ドル(大型車70ドル)です | **来場者数の「10万人」は、出典をたどると projection です** PAX East の来場者数を調べると、日本語でも英語でも10万人という数字が出てきます。**この数字は主催者の実績発表ではありません。** Wikipediaが GeekWire の報道を引いて記録しているとおり、**PAXは2011年に来場者数の公表をやめています**(複数日開催で実数の把握が難しいことを理由としています)。10万人という数字は、2012年にPAX Eastがボストンでの開催延長を決めた際の記事に出てくる将来見通しで、実績ではありません。 出典が確かな実績値は**2010年の第1回、52,290人**(会場はHynes Convention Center)だけです。日本語記事の「10万人超」を社内資料にそのまま書かないでください。**規模を語るなら「出展社300社以上(2026年実績)」のほうが、出典をたどれる数字です。** ## 誰が主催しているのか **Penny ArcadeとReedPopの共同開催で、実務はReedPopが握っています。** Penny Arcadeは、Jerry Holkins氏とMike Krahulik氏によるウェブコミックです。両氏が「業界向けではなく、ゲーマーのためのイベントが欲しい」という動機で2004年にシアトルで第1回を開き、初回の来場は約3,300人でした。 ReedPopは、ロンドン証券取引所に上場するRELX傘下のRXのポップカルチャー部門です。Penny Arcadeは2009年にReedPopと提携し、その翌年にPAX Eastが始まりました。現在、公式サイトのフッターは「BUILT BY REEDPOP」「Copyright © 2026 RX」、問い合わせ先はpaxquestions@reedexpo.com、出展要項の署名は「RX and PAX East」です。 **この点は期待値の調整に直結します。** PAX Eastは業界団体の集まりでも、政府の輸出振興事業でもありません。**New York Comic Con、Emerald City Comic Con、Star Wars Celebrationと同じ会社が運営する、商業的な消費者フェスティバルです。** 小間は買える相手に売られ、価格は個別交渉で決まり、集客するのはバイヤーではなくチケットを買った来場者です。 **情報源の読み方も、ここから一つ導けます。** PAX Eastの出展社一覧を最も詳しく公開している媒体はPopverseですが、Popverseは自社フッターに「Popverse is owned by RX, a division of RELX Inc. d/b/a ReedPop」と明記しているとおり、**PAXの所有者自身が運営する媒体です。** 社名の一覧としては使えますが、規模や盛況ぶりの裏付けにはなりません。 もうひとつ、ReedPopは伸びないPAXを畳みます。**PAX Southは2021年10月に打ち切られました。** ## どんな企業が出展しているのか **2026年大会の出展社は300社以上でした。** ジェトロ・ニューヨーク事務所の現地取材記事と、主催者の出展社発表を報じたgamebizが、同じ数字を書いています。2027年の出展社一覧は、2026年8月時点でまだ公開されていません(主催者のイベントAPIも空です)。 フロアは大きく3層に分かれます。 **第一に、プラットフォーマーと大手パブリッシャーです。** 2026年は任天堂(Nintendo of America)がブース18019・18031・NL2でNintendo Switch 2向けタイトルを出展し、『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』のSwitch 2エディションや『Pokémon Pokopia』『Pokémon Champions』を試遊させました。ほかにBlumhouse Games、Double Fine Productions、NIS America、GIANTS Software、Dread XP、IllFonic、Gravity、Atari Interactiveが出展しています。 **第二に、インディースタジオです。ここが現在のフロアの中心です。** ジェトロの現地記事はこう書いています。 > 「任天堂やブラムハウスゲームズをはじめとする大手パブリッシャーやAAAスタジオも多数参加したものの、会場では、インディー開発者・企業が特に大きな注目を集めた。これは、主催者が企画・選定する『PAX Rising Showcase』の効果が大きい。」(ジェトロ ビジネス短信、2026年4月20日) **第三に、ボードゲームと物販です。** Wizards of the Coast、Magic: The Gathering、Dice Throne、Goodman Games、UVS Gamesなどが並び、ダイスやカードの物販区画もかなりの面積を占めます。 ### 日本企業はほとんど出ていません 2026年大会の出展社のうち、**日本資本であることが複数の出典で確認できるのは、Nintendo of AmericaとNIS Americaの2社だけです。** どちらも日本の大手パブリッシャーの米国法人で、日本から渡航して出展した会社ではありません。 RX傘下のPopverseが公開した出展社一覧には、このほかに**集英社ゲームズ、17-Bit Co Ltd、AREA 35**の名前があります。それぞれ京都と東京の企業です。3社とも日本の企業であること自体は確認できましたが、**出展の事実を裏付ける独立した出典は見つかりませんでした**(各社の発表、プレスリリース、出展レポートのいずれにも記載がありません)。参考情報としてお読みください。 **比較として効くのは韓国です。** 韓国のGravity Co. Ltd.は2026年大会に12タイトルを持ち込み、**PAX参加は4年連続**でした。1社の韓国パブリッシャーが、日本から自主的に出展した全スタジオより多くの棚を確保している構図です。 アナログゲームの側も同様です。2019年に会場を歩いた日本人参加者は、日本のボードゲーム出版社として**itten1社**を見つけ、それも米国側パートナーとの共同ブースだったと記録しています。**PAX Eastにおける日本企業の存在は、あるとしても米国側の相手経由で成立してきました。** ## 会場では実際に何が起きるのか **展示を見るイベントではなく、遊ぶイベントです。** 2026年に7名で視察した東京のミスリル株式会社(MYTHRIL Inc.)の報告が、体感をよく伝えています。 > 「会場を見渡してまず印象的だったのは、全体のスケール感です。ブースの数も多く、来場者も非常に多いのですが、それ以上に強く感じたのは、単に展示を見るイベントではなく、参加するイベントとして作られている ことでした。」(MYTHRIL Inc.、2026年4月6日) 同社の担当者は、東京ゲームショウとの違いにも触れています。 > 「商業色の強いショウイベントというより、ゲーマーたち自身が作り上げているイベント という印象が強かったです。東京ゲームショウのような大企業主体の展示イベントとはまた違う魅力がありました。」(同) ![展示ホールを高い位置から見下ろした様子。物販ブースの列の手前に丸テーブルが並び、食事や休憩をする来場者、キッチンカー、コスプレ姿の来場者が写っている](https://www.withexpa.ai/conf/2027/pax-east/hall-2026.jpg) バッジ1枚で入れるものを、主催者の記載どおりに並べます。 - 展示ホール(ゲーム、ハードウェア、デモ、スタジオ企画) - パネル、インタビュー、特別企画。**すべて先着順で追加料金なし**です - サイン会、Bandlandでのライブ - トーナメント、eスポーツステージのPAX Arena - **Omegathon**(バッジ購入時に希望した来場者から抽選で選ばれ、会期を通じて競う大会。決勝は閉会式の一部です) - **2,500本以上のフリープレイ**(現行機、レトロ機、携帯機、PC、VR、ボードゲーム) - PAX Rising Showcase、PAX Together、PAX XP - BYOC(持ち込みPCのLANパーティー。有料の追加バッジです) このうちボードゲーム区画は、日本からの視察者が最も評価した部分でした。 > 「ボードゲームを借りてその場で遊べるだけでなく、ルールが分からない場合は会場スタッフが教えてくれる場面も見られ、多くの人で賑わっていました。私も初めて遊ぶボードゲームにハマり、あっという間に1時間以上経っていました。」(同) 運営上の実務事項もまとめておきます。**撮影は自由**です(主催者は「PAX is considered to be in the public domain」と明記しています)。クロークはLevel 1の154号室、1点1日5ドル。無料Wi-Fiはありますが、主催者自身が「あてにしないでください」と書いています。**デモ環境をWi-Fi前提で組まないでください。** 会場運営を担うボランティアはEnforcerと呼ばれます。年齢制限はなく、13歳以上向けの内容だけがスケジュール上で明示されます。 ## 参加・出展にいくらかかるのか ### 来場のバッジ **2027年分は2026年8月時点で未発売です。** 登録ページはニュースレター登録に転送されます。2026年大会の確定価格は次のとおりでした。 | バッジ | 2026年実績 | | --- | --- | | 4日間(木〜日) | **280ドル(会期前に完売)** | | 木曜/金曜/日曜(各1日) | **85ドル** | | 土曜(1日) | **92ドル** | | 子ども4日間(7〜12歳) | 35ドル | | BYOC追加バッジ | 完売 | 金額の読み方で、2点だけ日本の感覚と違うところがあります。 **第一に、表示価格が総額です。** 主催者の記載は「PAX Pricing = no hidden fees. Badge prices shown include cost of ticket, service fee. There is no sales tax in Massachusetts, so no tax is added.」で、手数料込み、州の売上税なしです。 **第二に、価格は発売後に上がり、しかも売り切れます。** 2026年大会は発売告知時点で4日間バッジが250ドル(gamebiz、2026年3月6日)でしたが、会期直前の公式登録ページでは280ドルになり、**完売表示に変わっていました**。前年2025年の前売りは4日間261ドル、1日券72.50ドルです。**渡航が決まっているなら、発売直後に買うのが最も安く、かつ確実です。** 払い戻しはありません。ただし譲渡と転売は主催者が明示的に認めています(「it's your badge to do with as you please」)。 ### 出展の費用 **公開されていません。** 「Exhibit at PAX」ページの中身は、実質的に次の一文と連絡先だけです。 > Wondering how you can exhibit at the biggest consumer gaming event in North America? For all general exhibitor and advertising Inquiries please email: paxsales@paxsite.com 小間単価表も、出展要項のPDFも、パッケージ一覧もありません。**見積もりを得る唯一の方法は、paxsales@paxsite.comへ直接問い合わせることです。** 日本語で流通している金額には、はっきりと古いものが混ざっています。**「PAX Eastの出展費は約20万円」という記述は、2014年にPLAYISMがIndie MEGABOOTH経由で出展した際の金額で、その仕組み自体が現存しません**(後述します)。英語で参照されがちなGamesIndustry.bizの費用記事も、2017年公開で、掲載されているPAX Eastの数字は2013年と2014年の出展者ブログが出典です(Indie MEGABOOTHのMinibooth 1日465ドル、10フィート×10フィートのブース1日600ドル)。**桁感の参考にはなりますが、2027年の見積もりには使えません。** 一方、金額が公開されていなくても確実に発生する費目があります。**米国の展示会場の労務規則です。** - 人が手で運べない機材の搬入は、会場指定の組合労働者の作業になります - 工具を使い、1人30分を超える設営作業も同様です - 2026年大会の指定業者はFreeman(ブースパッケージ、荷役)、JCALPRO、MCCAでした **日本の展示会の感覚で「自社で組み立てます」と言えない、という前提で人員と予算を組んでください。** 最後にひとつ、初参加企業への警告です。**PAX East自身が公式に注意喚起しています。** 「Fair Guide」(Construct Data、スロバキア)と「Expo-Guide」(Commercial Online Manuals、メキシコ)を名乗る名簿掲載の請求は、PAX EastともRXとも無関係です。**海外の住所への支払いを求める書類が届いたら、支払う前にPAXの営業担当へ連絡してください。** ## ジャパンパビリオンはPAX Westにあり、PAX Eastにはありません **本記事の中心はここです。** そして、日本語でこれを正確に書いている資料は、2026年8月時点で見当たりません。 ジェトロは自社の「MADE IN JAPAN COLLECTION」事業ページで、**2026年度にジャパンパビリオンを出展予定のゲーム関連見本市**を明示しています。一覧は次のとおりです。 | 見本市 | 国・都市 | 会期 | | --- | --- | --- | | HYPER JAPAN Festival | 英国・ロンドン | 2026年7月24日〜26日 | | gamescom | ドイツ・ケルン | 2026年8月26日〜30日 | | **PAX West** | **米国・シアトル** | **2026年9月4日〜7日** | | PAX Aus | オーストラリア・メルボルン | 2026年10月9日〜11日 | | gamescom asia × Thailand Game Show | タイ・バンコク | 2026年10月29日〜11月1日 | | Riyadh Japan Festival | サウジアラビア・リヤド | 2026年11月27日〜28日 | | AGF | 韓国・高陽市 | 2026年12月4日〜6日 | **PAX Eastはこの一覧に入っていません。PAX Westは入っています。** 念のため、ジェトロのもう一つの一覧、「ジェトロが出展支援する展示会(年間予定)」(最終更新2026年7月22日)も確認しました。**同ページの米国・コンテンツ分野の掲載は[Anime Expo](/conf/2027/anime-expo) 2026の1件のみで、PAXはEast・Westとも掲載されていません。** ゲーム見本市のジャパンパビリオンは、コンテンツ課がMADE IN JAPAN COLLECTIONの枠組みで運営しているためです。 **では、ジェトロはPAX Eastで何をしているのか。取材です。** ジェトロ・ニューヨーク事務所は2026年大会に足を運び、入口、メインホール、PAX Risingエリア、任天堂ブースを自社で撮影して、ビジネス短信として記事を出しています。**支援事業ではなく、市場情報の収集です。** ### MADE IN JAPAN COLLECTIONは無料で使えます(ただしPAX Eastには届きません) 制度の中身は、日本のインディーにとって率直に良い条件です。 - **参加費は無料**、定員は500社程度、通年実施です - 対象は「Steamでストアページが公開されている日本のゲーム作品」で、**販売済みかどうかは問いません** - Steam上の日本特集ページ掲載、一括セール、そして**見本市会場での来場者向け試遊提供**が付きます - **「ジェトロが出展する海外ゲーム関連見本市への参加および渡航は不要です」** - 問い合わせはジェトロ・コンテンツ課(Content@jetro.go.jp、03-3582-1671) ただし条件も明記されています。**渡航補助も出展補助も出ません。** そして試遊提供が行われるのは前掲の見本市の会場です。**PAX Eastは対象外ですから、この無料枠でボストンに作品を置くことはできません。** **判断に落とすと、こうなります。** 欧米の一般ユーザーに作品を見せることだけが目的で、渡航予算が限られているなら、**ボストンではなくシアトルのPAX Westを選ぶのが合理的です。** 同じPAXブランド、同じ主催者、同じ消費者層で、日本の公的支援が付いている側です。 ### 助成金を前提に計画しないでください 2014年のPLAYISMは、J-LOPを使って費用の半分を賄いました。同社の記述です。 > 「200万円でなく100万円で済むならば、これは間違いなくオトクだ。(中略)我々も、今回株式会社アスタリズム(NIGOROの会社)と協力し、J-LOPを活用し、PAX EASTに出展した。」(PLAYISM、2014年6月30日) **J-LOPは現存しません。** 後継とされる制度も改廃が続いており、2026年8月時点で「PAX Eastの出展費に使える助成金」を特定することはできませんでした。**費用は全額自社負担として見積もり、制度の有無は所管官庁と自治体に直接ご確認ください。** なお同社は、助成金の実務上の注意も残しています。**「出展終了後、書類諸々出して検査が完了後に助成金(MAXで半金)が降りるため、先立つお金は必要である」。** これは制度が変わっても変わらない性質です。 ## インディーの入口は、いまPAX Rising Showcaseだけです **かつて日本のインディーがPAX Eastに出るための実質的な入口だったIndie MEGABOOTHは、もう存在しません。** Indie MEGABOOTHは2012年のPAX Eastで16社20作品から始まった独立組織で、PAX内に大きな区画を先に買い取り、そこに出る開発者を審査で募る形式でした。PLAYISMが2014年に『LA-MULANA 2』『ケロブラスター』『アスタブリード』を持ち込んだのもこの枠です。 > 「PAX Indie Mega Boothの出展費は、およそ20万円。出展スペースにテーブルひとつと椅子二つ。PCが3台とモニタが1台が支給されるとのことだった。」(PLAYISM、2014年6月30日) **この組織はコロナ禍で活動を停止し、2023年に復帰を表明したものの、具体的な出展イベントを一度も発表しないまま、2024年以降も予定は示されていません。** 2026年大会のプログラム一覧にも名前はありません。 代わりに主催者が運営しているのが**PAX Rising Showcase**です。性格が違うので、そのまま置き換えて考えると判断を誤ります。 | | Indie MEGABOOTH(消滅) | PAX Rising Showcase | | --- | --- | --- | | 運営 | 独立組織 | **PAXチーム自身** | | 位置づけ | 区画の共同購入 | **選定と紹介のプログラム** | | 規模 | 最大時100作品規模 | **年12本前後** | | 応募数 | 非公開 | **年間100件超** | | 費用 | 約20万円(2014年) | **非公開** | 主催者の説明は次のとおりです。 > The PAX Rising Showcase is an intensely curated collection of games selected by the PAX Team and highlighted on the show floor.(east.paxsite.com) > Each year, we receive over a hundred game submissions, all from worthy indies eager to show off what they've been working on, and feed them to our judges.(同) 選定基準は**ゲームプレイ、エンターテインメント性、独創性の3点**で、ジャンルとプラットフォームは問いません。2026年の選出は12本、2025年も12本、2024年が12本、2023年が11本です。 **そして、2023年から2026年までの4年分の選出作を全件確認したところ、日本のスタジオは1社もありませんでした。** 現地取材した媒体の表現を借りれば、PAX Eastのフロアは「『PAX Rising』に選ばれた精鋭インディーや、情熱溢れる小規模スタジオたちの熱気に支配されている」状態です。**その最も注目される区画に、日本の作品が4年間ゼロで並んでいます。** **Risingについて、公式サイトが答えていないこと** 正直に書きます。**PAX Rising Showcaseの公開情報には、日本企業が最も知りたい3点が載っていません。** 1. **選出されたスタジオはスペース代を払うのか、無料なのか** 2. **応募料はあるのか** 3. **応募の締切はいつか** PAXの機能紹介ページ、「Get Involved」ページ、出展ページのいずれにも記載がありません。**推測で計画を立てず、paxsales@paxsite.comに直接お問い合わせください。** 2027年の応募受付は「Get Involved」ページに掲出されます。 なお、出展枠の取りにくさは昔から指摘されています。PLAYISMの2014年の記述です。 > 「このイベント、前回出た人には優先で案内が届くこともあり、毎年似たようなチームが出展し続けている。つまり、出展者の満足度は極めて高いのだ。それゆえ、新たに参加するチャンスは非常に限られている。」(PLAYISM、2014年6月30日) ## 日本企業にとって行く価値はあるか 業種と目的で答えが分かれます。曖昧にせず書きます。 ### 勧める企業 **第一に、欧米向けのPC・コンソールタイトルを持ち、発売前後の認知を取りに行くインディーから中堅の開発・出版社です。** PAX Eastは試遊で評価される場で、来場者は買う側の一般ユーザーです。ウィッシュリスト、Steamのフォロー、メディア露出、配信者の反応が同時に取れます。PLAYISMの2014年の記録では、Destructoid、EGM Now、USgamer、Gamasutraなどが取り上げ、後に『ケロブラスター』と『アスタブリード』はMetascoreが付きました(それぞれ82と93)。**インディーでMetascoreが付くこと自体が成果です。** **第二に、ボードゲーム・カードゲームの出版社です。** PAX Eastの物販とプレイ区画は本格的で、その場で遊ばれ、その場で買われます。ただし**PAX Unplugged(フィラデルフィア、12月)はアナログ専業**ですので、アナログだけを扱う会社は、まずそちらとの比較検討をお勧めします。 **第三に、欧米のユーザーの反応を自分の目で見たい開発チームです。** 商談を伴わない視察でも意味はあります。ミスリル株式会社は職種の異なる7名で行き、「参加するイベント」としての設計を持ち帰りました。**組織として海外の手触りを共有する用途では、費用対効果が見えやすい部類のイベントです。** ### 勧めない企業 **第一に、キャラクターグッズやライセンス商材を扱う企業です。これは条件なしで勧めません。** PAX Eastにライセンス商談の枠は存在しません。2026年大会でライセンスが話題になったのはパネルの演題としてで(「ライセンスゲームの生と死、そして再生」)、商談の場としてではありません。**行くべきは[Licensing Expo](/conf/2027/licensing-expo)、あるいは北米最大の日本ポップカルチャーイベントである[Anime Expo](/conf/2027/anime-expo)です。** 後者にはジェトロのジャパンパビリオン「Geek Street」があります。 **第二に、パブリッシャーや資金調達の相手を探している企業です。** その相手はボストンにいません。**[GDC](/conf/2027/gdc)へ行ってください。** 商談専用のBusiness Hallがあり、入場パスは99ドルです。 **第三に、渡航予算が限られていて、目的が「欧米の一般ユーザーへの認知」だけの企業です。** 前述のとおり、**ジェトロのジャパンパビリオンはPAX WestとPAX Ausにあり、PAX Eastにはありません。** 同じ体験を、支援付きで安く得られる選択肢が実在するのに、あえて支援のない側を選ぶ理由は薄いです。 ### 具体的な進め方 初めてPAX Eastを検討する企業への提案です。 1. **まず、目的が「認知」か「商談」かを1文で決めてください。** 商談なら本記事はここで終わりで、行き先はGDCです。 2. **認知が目的なら、PAX WestとPAX Eastを並べて比較してください。** ジェトロのMADE IN JAPAN COLLECTIONはPAX Westを対象にしており、参加費は無料です。**この比較を飛ばすと、無料で使える枠を捨てることになります。** 3. **それでもボストンを選ぶ理由があるなら(発売時期、東海岸のメディア、既存パートナーの所在など)、paxsales@paxsite.comに見積もりを依頼してください。** 公開価格は存在しないため、ここが唯一の起点です。 4. **同時に、PAX Rising Showcaseへの応募条件を「Get Involved」ページで確認してください。** 費用と締切は公開されていないため、問い合わせが必要です。 5. **バッジは発売直後に確保してください。** 2026年大会は発売後に値上がりし、4日間バッジは会期前に完売しました。 6. **搬入と設営は組合労働の前提で見積もってください。** 日本の展示会の工数感覚のままでは足りません。 最後に、PLAYISMが12年前に書いた一文を引きます。制度も仕組みも変わりましたが、判断の質はここに集約されます。 > 「さすがに日本からだと予算と天秤にかけてみると、絶対に毎年出るべき!とは言い難いが、日本国内にいる限りはこれだけのPRが難しいのも事実。(中略)今のところは本気で海外で売りたいのならば日本国内で模索するよりは、とっとと一度海外出展した方が話は早いとは思う。」(PLAYISM、2014年6月30日) **「一度は出るべき」と「毎年出るべき」は違います。** PAX Eastは前者に当てはまるイベントで、後者には当てはまりません。そして2027年に限れば、**同じ目的をPAX Westのほうが安く達成できる可能性が高い**、というのが本記事の結論です。 貴社の作品と体制を踏まえた判断は、下記からご相談ください。 ## よくあるご質問 ### PAX East 2027はいつ・どこで開催されますか? 2027年4月22日〜25日(木〜日)、米国ボストンのThomas M. Menino Convention & Exhibition Centerです。旧称はボストン・コンベンション&エキシビションセンター(BCEC)で、2025年6月に改称されました。展示ホールの開場は毎日10時から18時までです。 ### PAX EastとGDCはどう違いますか? 来場者が違います。GDCは業界関係者だけが入るB2Bカンファレンスで、商談用のBusiness Hallがあります。PAX Eastは一般ゲームファン向けの消費者イベントで、バッジは1種類だけ、商談席も商談予約システムもありません。認知とウィッシュリストを取りに行く場です。 ### ジャパンパビリオンはありますか? ありません。ジェトロが2026年度にジャパンパビリオンを出す予定のゲーム関連見本市は、gamescom、PAX West、PAX Aus、HYPER JAPAN Festivalなど7件で、PAX Eastは含まれていません。ジェトロ・ニューヨーク事務所は2026年大会を取材し記事を出していますが、出展支援ではありません。 ### 出展費用の補助や助成金は使えますか? PAX East向けの公的な出展補助は確認できていません。都内中小企業であれば東京都中小企業振興公社の展示会出展助成事業が海外展示会にも使え、助成限度額は150万円、助成率は助成対象経費の3分の2以内です。ただし対象要件が「事業者との商談を主たる目的とする展示会」かつ「販売を行わない出展」で、来場者に直接売る消費者イベントはこの2つに触れます。公社は申請前に対象可否を回答しない方針を明記しています。 ### 参加費はいくらですか? 2027年分は2026年8月時点で未発売です。2026年大会の実績は4日間バッジ280ドル、木・金・日の1日券が各85ドル、土曜が92ドルでした。マサチューセッツ州に売上税がないため、表示価格に税は加算されません。4日間バッジは会期前に完売しました。 ### 出展料はいくらかかりますか? 公開されていません。PAXは公式サイトに小間単価も出展要項も掲載しておらず、窓口はpaxsales@paxsite.comへのメールのみです。日本語で流通している「PAX Eastの出展費は約20万円」という情報は、2014年にIndie MEGABOOTH経由で出展した際の金額で、その仕組み自体が現存しません。 ### インディー開発会社が出る方法はありますか? 自社ブースを買うか、主催者が選定するPAX Rising Showcaseに応募するかの2つです。Risingは年間100件超の応募から12本前後が選ばれる審査制で、2023年から2026年までの選出作に日本のスタジオは1社もありません。費用と締切は公開されていないため、主催者への直接確認が必要です。 ### ボストンへの直行便はありますか? あります。日本航空が成田・ボストン線を毎日運航しています(JL008成田18時50分発、JL007ボストン13時15分発、2026年3月29日〜10月24日の運航計画)。羽田発の直行便はありません。空港から会場まではタクシーで約8分、シルバーラインなら空港乗車は無料です。