# IEEE PES Grid Edge 2027完全ガイド:日本企業のための出展・参加判断 URL:https://www.withexpa.ai/conf/2027/ieee-pes-grid-edge-technologies-conference-exposition 開催:IEEE PES Grid Edge Technologies Conference & Exposition(ソルトレイクシティ) 最終更新:2026-08-23 IEEE PES Grid Edge 2027は、2027年4月19日〜22日にユタ州ソルトレイクシティで開かれる、配電系統の需要家側に特化したIEEE公式の技術会議と展示会です。結論から申し上げます。**出展の価値があるのは、DER連系、監視・計測、保護、配電自動化を手がけるサプライヤのうち、電力会社の技術者と濃い会話を持ち帰りたい企業だけです**。想定来場者は2,000人、想定出展社は145社、4日間の会期のうち展示フロアが開いているのは合計約11時間30分しかありません。名刺の枚数を目的にすると、確実に外します。この記事では、公表数値のどれが実績でどれが予測なのかを分解したうえで、費用、会場の実態、そして日本企業が取るべき順序を出典付きで整理します。 - 会期(2027年): 4月19日〜22日 - 想定来場者: 2,000人 - 想定出展社: 145社 - 最小小間: $3,600 ## IEEE PES Grid Edgeとは何のカンファレンスか Grid Edgeは、IEEE Power & Energy Society(PES)が奇数年に開く、配電系統の需要家側に絞った技術会議と展示会です。IEEE PESが「Flagship Event」と呼ぶ大会は3つしかなく、General Meeting、T&D Conference & Exposition、そしてGrid Edgeがその3つ目にあたります。 そもそもグリッドエッジとは何か。日本語で最もよく説明しているのは、米国展示会の出展支援を手がけるM Cross Internationalの解説です。 > グリッドエッジとは、電力網と需要家側に導入されたデバイス(太陽光発電、バッテリーやスマートメータなど)とが接続される部分を指しています。電気の流れがいままでの一方向から双方向になり、電力会社は、電気がいまどちらの方向から流れてきているのか見失いつつあるため、送配電網の管理と電力の最適化をグリッドエッジの部分で行おうということから、近年注目されている分野です。 2027年の公募トラックは26本あり、そのうち**ADMS/DERMS**と**Metering, Monitoring, and Measurement**の2本は、日本の配電機器・センシング系サプライヤの製品ラインに正面から重なります。ほかに分散型エネルギー資源、仮想発電所、マイクログリッド設計と運用、蓄電システム、e-Mobilityと充電インフラ、データセンター連系の柔軟性、系統運用へのAI適用などが並びます。 開催周期は計画に直結するので、先に押さえてください。 | シリーズ | 周期 | 直近と次回 | | --- | --- | --- | | Grid Edge | 奇数年 | 2023年サンディエゴ(4月10日〜13日)、2025年サンディエゴ(1月21日〜23日)、2027年ソルトレイクシティ(4月19日〜22日) | | T&D | 偶数年 | 2026年シカゴ(5月4日〜7日)、2028年アトランタ(4月24日〜27日) | この2つが交互に走るので、IEEE PESは毎年どこかで北米の電力会社の前に展示会を出していることになります。ただし**Grid Edgeの開催月は安定していません**。2023年は4月、2025年は1月、2027年はまた4月です。2029年の時期を今から前提に置いた中期計画は立てないでください。IEEE PESはGrid EdgeをISGT(Innovative Smart Grid Technologies)系列にも分類しており、アジア太平洋、欧州、中南米、中東の各ISGTと同じ家族として扱っています。 ### 公表数値のどれが実績で、どれが予測か ここがこの大会を判断するうえで最も重要な部分です。検索で出てくる数字は編集ごとに混線しており、2023年の実績が2025年大会のものとして引用されている例も複数あります。実績と予測を分けて並べます。 | 数字 | 大会 | 実績か予測か | 何を数えたか | | --- | --- | --- | --- | | 2,000人 | 2023年 | **実績** | 総来場者。初回大会 | | 約150社 | 2023年 | **実績** | 出展社数 | | 250人超 | 2023年 | **実績** | 技術プログラムの講演者 | | 3,000人超 | 2025年 | **予測** | 2024年6月時点で書かれた期待値 | | 2,000人 / 145社 / 35カ国 / 300人 | 2027年 | **予測** | 主催者の出展募集ページの想定値 | 2023年の実績はPAC World誌の第064号(2023年6月)が唯一の出典です。**2025年大会の事後数値は、来場者も出展社も一度も公表されていません**。主催者自身の「2025 Recap」ページは、2026年8月23日時点でLorem ipsumのダミー文のままです。同じPAC World誌は2025年大会も取材していますが、2023年とは違って数字を一切載せていません。 そして、2027年の想定値の読み方です。**主催者が出展社候補に提示している2027年の期待値は、2023年の実績とほぼ同じ水準です**。4年と1大会を挟んで、来場者2,000人、出展社145社(2023年実績は約150社)。2025年の「3,000人超」という予測は繰り返されていません。伸びを前提にした稟議は通さないほうが安全です。 なお、この4つの数字は公式サイト上ではスクロール時に0から動き出すアニメーション表示になっており、通常の取得では「0 +」としか読めません。本記事の数値は、ページのHTML内で各カウンタが持つ`data-to-value`属性から取得した主催者自身の設定値です。ゼロと表示された数字を転載しているイベント情報サイトが複数ありますので、他所の数字と食い違った場合はこの点をご確認ください。 ## 2027年はいつ・どこで開催され、どう行くのか 2027年4月19日(月)〜22日(木)、ユタ州ソルトレイクシティのCalvin L. Rampton Salt Palace Convention Centerで開催されます。**サンディエゴ以外での開催は今回が初めてで、ホスト電力会社がSDG&E以外になるのも初めてです**。 会場そのものは大きな建物です。展示面積515,000平方フィート(約47,800平方メートル)、会議室66室、45,000平方フィートのグランドボールルームを持ち、Outdoor RetailerやRootsTechの会場でもあります。想定145社のGrid Edgeがここを埋めることはないので、**1ホールの一部をカーテンで仕切った構成になるとお考えください**。 **この建物は大会の数か月後に閉館します** Salt Palace Convention Centerは、2027年秋に完全閉館し、3年かけて解体・建て替えられる予定です。総額18億ドルのダウンタウン再開発の一部で、ソルトレイク郡自身のFAQは着工を2027年春、完成を2031年1月としています。Grid Edge 2027の会期は2027年4月ですので、**この建物で開かれる最後の大型コンベンションのひとつになります**。IEEE PESからも会場側からも、会期と工事日程の関係についての告知は2026年8月23日時点で出ていません。両者が干渉するかどうかは公表情報からは判断できませんので、搬入出のスケジュールが読めないと困る場合は、契約前に主催者へ直接ご確認ください。確実に言えることが2つあります。1つは、1996年開業の建物を閉館直前の状態で使うことになる点。もう1つは、2029年大会がこの建物に戻ってくることはない点です。 渡航条件は、この大会の実務上いちばんの弱点です。**日本からソルトレイクシティへの直行便はありません**。airlineguide.jpの記載を引用します。 > 現在、日本からソルトレイクシティの空港への直行便は運航されていません。 乗り継ぎの選択肢は以下のとおりです。ソルトレイクシティはデルタ航空のハブなので、ロサンゼルス線やポートランド線と国内線を1枚の航空券にまとめやすい点は救いです。 | 経路 | 国際線 | 国内線 | | --- | --- | --- | | デルタ航空/ロサンゼルス乗り継ぎ | 成田・羽田からLAXへ10時間05分 | LAXからSLCへ1時間55分 | | デルタ航空/ポートランド乗り継ぎ | 成田・羽田からPDXへ9時間10分 | PDXからSLCへ1時間47分 | | デルタ航空/ホノルル乗り継ぎ | 成田・羽田・中部・関西からHNLへ7時間23分 | HNLからSLCへ6時間05分 | | ユナイテッド航空/サンフランシスコ乗り継ぎ | 成田・羽田・関西からSFOへ9時間28分 | SFOからSLCへ2時間02分 | | アメリカン航空/ロサンゼルス乗り継ぎ | 成田・羽田からLAXへ10時間05分 | LAXからSLCへ1時間52分 | 総所要時間は、乗り継ぎ待ち時間を除いて11時間12分〜25時間31分です。**往復とも移動に丸1日ずつ見てください**。デトロイトやシカゴのように直行便で入れる都市とは、拘束日数がはっきり違います。 現地の移動は逆に簡単です。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 空港から会場 | TRAXグリーンラインで20〜24分、片道$2.50。ピーク時15分間隔。空港に乗り入れるTRAXはグリーンラインのみ | | ダウンタウン内 | UTAがFree Fare Zoneを設定しており、区域内での乗降なら無料 | | 4月の気候 | 平均最高17℃、最低5℃。1mm以上の降雨は月7.7日、月間約41mm。年間を通して蒸し暑くなることはまれ | | 標高 | 約1,288メートル | | ESTA | $40.27 | | 公式ホテルブロック | **未発表**。2026年8月23日時点で「Hotel, travel, and transportation information is coming soon!」の表示のみ | ![行き先表示にGRN-AIRPORTと出したUTA TRAXグリーンラインの車両がCity Center駅に停車している](https://www.withexpa.ai/conf/2027/ieee-pes-grid-edge-technologies-conference-exposition/trax-green-line-airport.jpg) 宿泊費の目安は本記事では提示しません。公式ホテルブロックが未発表で、参照できる確定価格が存在しないためです。発表され次第、この記事を更新します。標高1,288メートルは高山病を心配する高さではありませんが、到着当日に夜の懇親会まで詰め込む日程は避けたほうが無難です。 ## 誰が主催しているのか 主催はIEEE Power & Energy Society(PES)です。会員は電力・エネルギー分野の学生と技術者を合わせて約4万人、傘下のワーキンググループはIEEE規格全体の約半数を生み出しています。**運営しているのは展示会を売る会社ではなく、論文誌を出している学会です**。この一点が、この大会のあらゆる数字を説明します。 2027年大会に関わる3者の役割分担は次のとおりです。 | 役割 | 組織 | | --- | --- | | 主催 | IEEE Power & Energy Society | | 運営 | IEEE Conferences, Events & Experiences(IEEEの社内イベント部門) | | 出展・スポンサー営業 | NTP Events(バージニア州アレクサンドリア) | 営業窓口のNTP Eventsは2027年からの新任です。2023年と2025年はテキサス州の別の窓口が担当していました。**2025年の見積もりを2027年の条件と比較する場合は、担当会社が変わっている点を前提に置いてください**。 プログラムは各大会のホスト電力会社が形を決めます。ここが2027年の実質的な変更点です。 | 大会 | ホスト電力会社 | | --- | --- | | 2023年 | San Diego Gas & Electric | | 2025年 | San Diego Gas & Electric | | 2027年 | **PacifiCorp**(西部6州で210万件) | ホストが変わると議題が変わります。T&D World誌のNikki Chandler氏は2025年大会を現地取材し、ロサンゼルスとサンディエゴ郡で山火事が続くさなかの開催だったこと、ホストのSDG&E自身が自社供給区域の山火事に対応中だったことを書いています。同社CEOのCaroline Winn氏による開会基調講演も山火事と電力会社の対応が主題でした。2007年の火災で1,738戸が焼失し368,316エーカー超が焼けた経験から、SDG&Eが木柱18,000本超を鋼管柱に置き換えた話が会場で共有されています。 2027年のホストであるPacifiCorpは、ユタ、ワイオミング、アイダホ、オレゴン、カリフォルニア、ワシントンの6州にまたがる、長い農村配電線と新規の大口産業・データセンター負荷を抱えた事業者です。**2027年の会場は、2025年の議題ではなく、大口負荷の系統連系と西部の信頼性の話で埋まると読むのが自然です**。実際、2027年のスーパーセッション5本は、発電と系統信頼性の将来像、データセンターの電力需要、柔軟な負荷管理、系統運用へのAI適用、系統資産管理の5題で告知されています。 ## 誰が参加し、誰が出展しているのか 主催者が2027年の出展募集ページに挙げている来場者像は、次の6分類です。 - 電力会社の経営層、計画部門、技術者 - データセンターおよびAIインフラの開発事業者 - DER事業者とインテグレータ - グリッドエッジ技術のイノベーター - 規制当局と政策立案者 - コンサルタント、EPC、大口需要家 **職位別・業種別の来場者内訳は、どの大会についても公表されていません**。米国の同規模展示会が通常は出展募集資料に載せている属性表が、この大会には存在しません。出展社向けのプロスペクタスPDF自体が公開されていないためです。判断材料としてこの欠落は正直に受け止めてください。 代わりに、主催者が買い手側をどう集めているかは価格から読めます。Utility Saverという電力会社向けパッケージは、10名分の登録を早期$2,500で売っています。1人あたり$250です。IEEE PES会員の通常料金$710、非会員$1,065と比べれば、**主催者が費用を負担して電力会社の人間を部屋に入れている**構図がはっきりします。ちなみに2023年の同パッケージは10名$1,000でしたので、この枠自体は2.5倍に値上がりしています。 出展側の顔ぶれは、2023年の支援企業ロゴから分野別に整理できます。 | 分野 | 企業 | | --- | --- | | 系統機器・重電 | GE、Eaton、Honeywell、Mitsubishi(法人名は特定できず)、S&C、G&W Electric、Trench、Sieyuan | | 計量・DER・系統ソフトウェア | Landis+Gyr、OATI、Trilliant、Anterix、XENDEE、SAS | | エンジニアリング・EPC | Black & Veatch、Burns & McDonnell、Quanta | | 研究機関 | EPRI | | 蓄電 | Dragonfly Energy | 2025年大会については完全な出展社名簿がどこにも残っていません。フロアプランを載せていたExpoCADのページは削除済みで、アーカイブにも名簿本体は残っていませんでした。以下は各社自身の告知から1社ずつ確認できた分です。 | 企業 | 小間番号 | 分野 | | --- | --- | --- | | **住友電気工業** | 619 | バナジウムレドックスフロー電池 | | Enercon | 724 | 電力機器 | | Accuenergy | 830 | 計量・電力監視 | | OATI Grid Edge Technology Pavilion | 1047 | 電力会社向けソフトウェア(パビリオン主催) | | Ampacimon | 1237 | 動的送電容量(DLR) | | IFS | 未確認 | 業務システム | | Williams Form Engineering | 未確認 | 構造金物 | 確認できた最大の小間番号は1311です。**4桁の番号体系が実際に使われている以上、テーブルトップ展示の部屋ではなく、通常のフロアレイアウトを持つ展示会です**。2025年はサンディエゴ・コンベンションセンターのホールA・Bを使っていました。 ### 日本企業の実績は3大会で1社 正確に書きます。**確認できた日本企業の出展は、住友電気工業の2025年大会1件のみです**。619番小間でバナジウムレドックスフロー電池を展示し、ブースで技術相談に応じています。同社の告知ページは英語で、米国市場向けの案内として書かれており、**出展後の報告や成果に触れた記述はどこにもありません**。 周辺の状況も同じ方向を指しています。 | 項目 | 確認結果 | | --- | --- | | 2025年運営委員会(31名) | 日本所属はゼロ。全員が米国または欧州の所属 | | IEEE Japan Officeの日本語ページ | T&Dのページは存在し「800社以上の出展企業」と紹介。**Grid Edgeのページは存在しない** | | 日本語の参加・出展レポート | 検索した範囲で**1件も存在しない**。note、はてな、視察団の記録を含めて見つかりませんでした | | JETROパビリオン・県単位の共同出展 | いずれもなし。日本向けの補助スキームも確認できず | | 唯一の日本語ページ | 出展支援会社M Cross Internationalの案内。**2023年大会の情報のまま更新されていません** | 2023年の支援企業ロゴに「Mitsubishi」の表記がありますが、ロゴファイル名以上の情報がなく、三菱電機、三菱重工、三菱パワー、三菱商事のいずれなのかは特定できませんでした。本記事ではこれを日本企業の出展実績には数えていません。 この状況は両方向に読めます。**日本の競合が隣の小間にいない**ことは、指名で会いたい相手がいる企業には有利です。同時に、**このフロアが日本のサプライヤにとって機能するかどうかを検証した先行事例が1つもない**ということでもあります。どちらの側面も、稟議書に書いておく価値があります。 ## 会場では実際に何が起きるのか まず日程の形を見てください。**4日間の会期のうち、展示フロアが開いているのは合計約11時間30分です**。 | 日 | 展示フロア | 同時に走るもの | | --- | --- | --- | | 4月19日(月) | **閉場** | チュートリアル8:00〜17:00、技術視察13:00〜17:00 | | 4月20日(火) | **閉場** | 基調講演、スーパーセッション4本、分科会13:00〜17:45、開会レセプション18:00〜20:00 | | 4月21日(水) | **10:00〜17:00** | 開場前にスーパーセッション2本。昼食、スタートアップピッチ、ポスターセッションはすべてフロア内 | | 4月22日(木) | **10:00〜14:30** | 開場前にスーパーセッション1本。昼食とピッチはフロア内。閉会セッション14:30〜15:00 | 同種の米国展示会は通常フロアを3日フル稼働させます。ここは前半2日にフロアがありません。その代わり主催者は、昼食もポスターセッションもスタートアップピッチもフロア内に置いて、人の流れを作りにいっています。2023年にはさらに徹底していて、公式ページにこう書かれていました。 > While the exhibit floor is open on April 12 and 13, ALL educational sessions will take place within the Expo Hall **教育セッションを全部フロアの中でやる、というのは、小さいフロアが自力で人を集めるための設計です**。PAC World誌が2025年大会について使った「dedicated exhibit floor time」という表現も、同じことを別の角度から言っています。プログラムから展示時間を守ってやらないと人が来ない構造なのです。 フロア上の常設企画も、商談ブースというより会議の延長です。5つのTechnology Stage(2023年の名称はGrid Modernization、Smart Cities、Grid Connectivity、Distributed Resources、Startups)、Startup Alley、Startup Showcase & Innovation Challenge、IEEE PES PhD Dissertation Challenge、ポスターセッションが並びます。2023年にはEmobility AlleyとHydrogen Alleyもありました。 来場者と出展社の実際の評価も見ておきます。まず主催者が選んで公開している出展社の声です。**主催者が選んだ声である以上、平均的な出展社の体験ではなく、主催者が言わせたいことの証拠として読んでください**。 > As an exhibitor, we had more qualified interactions with attendees than ever before. 注意深く読む価値のある一文です。褒めているのは**会話の質と相手の適格性であって、数ではありません**。何件あったかは一言も書かれていません。これは想定来場者2,000人という規模と矛盾なく整合します。 来場者側の声として主催者が公開した3本のうち、1本はこうです。 > Honestly, the exhibit hall was my favorite part. 「honestly」という語の置き方から、この人はセッションが目当てで来てフロアのほうが良かった、と読めます。主催者がこれを選んで公開しているのは、フロアを真面目に扱ってほしいという意思表示です。 一方で、期待値を上げすぎないための材料も並べます。2023年の初回大会を取材したPAC World誌は、出展社の顔ぶれを次のように評しています。 > The participation of manufacturers covering different aspects of the grid edge was quite impressive considering that this is a brand-new event. 「新しいイベントであることを考えれば」という条件つきの評価です。そして最も引用されている一文は、SDG&EのCOO兼最高安全責任者Kevin Geraghty氏が2025年大会の事前取材で語ったものです。 > I truly believe this conference can be the CES of the power and energy industry. これは目標であって描写ではありません。この発言の時点で大会は1回しか開かれておらず、来場者2,000人、出展社約150社でした。CESは13万人規模です。**主催側の語り口と実数の間にどれだけ距離があるかを測る材料として、この引用は有用です**。 最後に、公開されている足跡の小ささについても書いておきます。主催者のXアカウント@IEEEGridEdgeは、2026年8月23日時点でフォロワー10人、投稿への「いいね」は0〜1件です。技術的な中身の評価ではありませんが、**独立した参加レポートがほとんど存在しない理由**の説明にはなっています。 ## 参加・出展にいくらかかるのか 2027年の参加登録料は公開済みです。早期締切は2027年3月15日、それ以降は通常料金になります。 | 区分 | 早期 | 通常 | | --- | --- | --- | | IEEE PES会員 | $710 | $850 | | IEEE会員 | $820 | $990 | | **非会員** | **$1,065** | **$1,275** | | IEEE Life Member | $130 | $165 | | IEEE学部学生会員 | $130 | $165 | | IEEE大学院学生会員 | $330 | $360 | | プレス | 無料 | 無料 | 1日券と展示会のみのパスもあります。 | 区分 | 早期 | 通常 | | --- | --- | --- | | 1日券(会議+展示、IEEE PES会員) | $350 | $395 | | 1日券(会議+展示、非会員) | $495 | $590 | | 展示会のみ・1日 | $165 | $185 | | 展示会のみ・2日 | $275 | $295 | | Utility Saver 5名分 | $1,500 | $2,000 | | Utility Saver 10名分 | $2,500 | $3,000 | | チュートリアル・終日 | $450 | $575 | | チュートリアル・半日 | $300 | $370 | **無料の展示会パスは存在しません**。最も安い入場方法は$165の1日券です。同じIEEE系でも、[IEEE ITEC](/conf/2027/ieee-transportation-electrification-conference-expo)のように展示会入場を$0で開放している大会がありますので、下見の費用感を他大会から類推しないでください。展示フロアが開くのは水木の2日だけですから、両日見るなら$275です。キャンセルは2027年3月14日まで書面で受け付け、$35の手数料を引いて全額返金されます。Utility Saverの個別枠、展示会のみの1日券、Life Member登録、同伴者登録は返金対象外です。 出展費用は1平方フィートあたり$36です。過去の推移も並べます。 | 大会 | 単価 | 備考 | | --- | --- | --- | | 2023年 | $32 | 10×10で$3,200(バッジ4枚)、10×20で$6,400(7枚)、20×20で$12,800(9枚) | | 2025年 | $34(2024年7月26日まで)/$35 | 早期契約は50%、遅い契約は100%前払い。30日超過で5%の遅延料 | | **2027年** | **$36** | 小間申込書の受領から30日以内に契約と手付金 | バッジの付与枚数は2025年から2027年まで変わっていません。 | 小間面積 | 付属フル参加バッジ | | --- | --- | | 100平方フィート(10×10) | 4枚 | | 200平方フィート | 7枚 | | 300平方フィート | 8枚 | | 400平方フィート | 9枚 | | 400平方フィート超 | 9枚に加え、100平方フィートごとに1枚 | ここで価格構造を1つ指摘しておきます。**10×10の小間$3,600に付いてくるバッジ4枚は、単体で買えば$4,260です**(非会員早期$1,065の4名分)。つまり小間そのものは実質無料以下で、主催者は床を売っているのではなく、来るはずだった技術者に小間を持たせているのに近い価格設定です。出展料の絶対額が安いことを「割安な商談機会」と読むのは誤りで、**もともと参加するつもりだった企業向けの価格**と読むのが正確です。 小間代に含まれるのは、8フィートのバックドレープと3フィートのサイドレール、社名サイン、通路カーペット、公式サイトとアプリへの掲載、そして上記のバッジです。含まれないのは、造作壁、什器、小間内のカーペット(敷設は必須で自費)、電力です。総額の目安については、主催者自身が過去に公開していた内訳が使えます。 | 費目 | 総額に占める比率 | | --- | --- | | 小間代 | 30% | | 会場サービス(電力・什器など) | 19% | | 出展要員の人件費と渡航費 | 20% | | 小間の設計・造作 | 10% | | 輸送・搬入出 | 10% | | 販促 | 5% | | その他 | 5% | この比率をそのまま当てると、**$3,600の小間は総額約$12,000の出展予算を意味します**。日本からの国際輸送費はここに含まれていません。渡航が乗り継ぎ必須である点も、この20%の枠に効いてきます。 2027年のスポンサー枠については、価格も種別も公表されていません。公式サイトのSponsorsページは2026年8月23日時点でLorem ipsumのままです。同じく`/exhibit/`本体と2025年の実績ページもダミー文が残っており、出展社名簿、スポンサー一覧、ホテルブロック、スポンサー料金のいずれも未公開です。**開催8か月前でこの状態であることは、事業として不調の証拠ではありませんが、社内の予算確定スケジュールに対する実務リスクです**。年度予算を先に固める必要がある企業は、NTP Eventsに直接見積もりを求める前提で動いてください。 ## DISTRIBUTECHやT&Dとどう使い分けるか **規模でGrid Edgeを評価するのは筋違いです**。この大会は数を集めるために設計されていません。使い分けの軸は、貴社がフロアで何を持ち帰りたいかの1点です。 まずIEEE PES内部での役割分担です。T&Dは偶数年開催で、送電から配電までの全体を扱います。2026年シカゴ大会の実績は出展社933社、来場者18,000人超、89カ国でした。Grid Edgeは奇数年開催で、配電系統の需要家側だけを扱います。**同じ主催者が、対象範囲の違う2つの大会を交互に出しているのであって、大小2種類の同じ商品を出しているわけではありません**。送電機器や変電所の一次機器を売っているなら、行き先は最初からT&Dです。 DISTRIBUTECHとの関係については、主催者自身が答えを出しています。2023年のGrid Edge出展社向けサイトには「EXHIBITING AT DISTRIBUTECH? we make it easy TO DO BOTH!」と題したページがあり、DISTRIBUTECHの小間から資材をそのまま集荷してサンディエゴのFreeman倉庫へ運ぶキャラバン輸送が案内されていました。**立ち上げ当初から、想定出展社はすでにDISTRIBUTECHに出ている企業だと主催者は考えていた**ということです。 判断の目安を整理します。 | 状況 | 推奨 | | --- | --- | | 北米配電市場に初上陸し、まず数と認知が欲しい | DISTRIBUTECH | | 送電機器・変電所一次機器が主力 | IEEE PES T&D(偶数年) | | DER連系、監視・計測、保護、配電自動化が主力で、会いたい電力会社の技術者が具体的に決まっている | **Grid Edge** | | 技術論文や委員会を通じて名前を売りたい | Grid EdgeまたはT&Dの技術プログラム | | データセンターの大口負荷連系が事業テーマ | **Grid Edge**(2027年のスーパーセッション2本が該当) | 周期についても計画に織り込んでください。**Grid Edgeは奇数年開催なので、2027年を見送ると次は2029年です**。しかも2029年の会場は未定で、Salt Palaceは使えません。DISTRIBUTECHとT&Dは毎年どちらかが立つので、1年待つ判断のコストが違います。 ## 日本企業にとって行く価値はあるか 判断基準は1つです。**貴社が欲しいのは商談の件数ですか、それとも電力会社の技術者との具体的な会話ですか**。件数ならこの大会は外れます。会話なら、これだけ密度の高い場所は多くありません。 件数を求める場合の行き先は決まっています。3月アトランタの[DTECH](/conf/2027/dtech)が18,000人規模で、買い手の42%が電力会社です。買い手が電力協同組合であれば2月の[TechAdvantage](/conf/2027/techadvantage)、発電所側の部材であれば1月の[POWERGEN International](/conf/2027/powergen-international)になります。 **出展を検討してよい企業**は、次の条件に当てはまる場合です。第一に、DER連系、計量・監視・センシング、保護、配電自動化、ADMS/DERMSのいずれかが主力で、北米の電力会社の技術部門が直接の顧客である企業。2027年の公募トラック26本のうち2本がそのものずばりの領域で、展示分野にも分散型電源、計量・監視・計測機器、エネルギーマネジメントと蓄電が明示されています。 第二に、会いたい相手が名前で決まっている企業です。来場者2,000人という規模と、Utility Saverで補助された電力会社の参加者構成は、狙った相手に会える確率を上げます。2025年のスーパーセッションにはCAISO、NERC、Microsoft、米国エネルギー省、Landis+Gyr、Ameren、SDG&Eが登壇しました。**2,000人の部屋に意思決定者がこれだけいる密度は、2万人のフロアでは得られません**。 第三に、日本語圏で先行者になりたい企業です。この大会について日本語で書かれた情報は、3年前で更新の止まった出展支援会社の案内1件しかありません。IEEE Japan Officeにも日本語ページがありません。**日本の同業が誰も検証していない場所に最初に入ることの価値**を、貴社が評価できるのであれば、それはこの大会に固有の理由になります。 第四に、PacifiCorpの供給区域に事業機会がある企業です。長い農村配電線、山火事リスク、そして西部の新規大口負荷。ホスト電力会社がプログラムの重心を決める大会ですから、2027年はこのテーマが中心になります。 **出展を見送ってよい企業**も、はっきり書きます。まず、名刺の枚数や商談件数をKPIに置いている企業です。フロアが開くのは4日間で約11時間30分、想定来場者は2,000人。この条件で$12,000相当の出展予算を回収する筋書きは描きにくく、同じ予算はDISTRIBUTECHに回すほうが素直です。 次に、北米配電市場にこれから入る企業です。**認知がない状態でこのフロアに立つと、来場者はすでに知っている社を目指して歩いているだけになります**。順序としては、認知を取る場と、深い会話をする場は分けてください。 そして、規模を期待している企業です。2027年の想定値は2023年の実績とほぼ同じで、2025年大会の実測値は公表すらされていません。「伸びている新興イベントに早期参入する」という物語で稟議を書くと、現地で説明がつかなくなります。 **まず行くなら、参加から始めてください**。$165の1日券、あるいは水木2日で$275の展示会パスで、フロアと人の流れを自分の目で確認できます。技術セッションまで押さえるなら非会員早期$1,065、IEEE PES会員なら$710です。会員年会費との差額を考えれば、複数名で行くなら入会したほうが安く済みます。**日本からは乗り継ぎ必須で往復に丸2日かかりますので、初回は1名の視察に絞り、判断を2029年の出展に持ち越す**のが、この大会の規模に見合った投資順序です。 実務メモを4点。1つ目、月曜と火曜はフロアが開かないので、出展のみが目的なら水木の到着でも間に合いますが、火曜夜の開会レセプションは人に会える数少ない場です。2つ目、10×10の小間に付くバッジ4枚は単体で$4,260相当なので、社内では小間代ではなく参加費として説明したほうが実態に近くなります。3つ目、公式ホテルブロックもスポンサー料金も未発表です。4つ目、会場は2027年秋に閉館して建て替えに入るため、この建物での開催は今回が最後になります。搬入出条件が読めないと困る場合は、契約前に主催者へご確認ください。 貴社の製品と狙う電力会社を踏まえた出展・参加の判断は、下記からご相談ください。 ## よくあるご質問 ### IEEE PES Grid Edge 2027はいつ・どこで開催されますか? 2027年4月19日(月)〜22日(木)、ユタ州ソルトレイクシティのCalvin L. Rampton Salt Palace Convention Centerで開催されます。ホスト電力会社は西部6州で210万件を供給するPacifiCorpです。サンディエゴ以外での開催は今回が初めてです。 ### ブース出展にいくらかかりますか? 1平方フィートあたり$36です。10フィート×10フィートの最小小間で$3,600、フル参加バッジ4枚が付きます。ただし主催者自身の内訳では小間代は総額の30%なので、什器・電力・輸送・渡航を含めた実額は約$12,000とお考えください。国際輸送費は別途です。 ### 来場者は何人ですか? 主催者の2027年想定は2,000人です。実測値が公表されているのは2023年の初回大会のみで、来場者2,000人、出展社約150社でした。2025年大会の事後数値は公表されていません。よく引用される「3,000人超」は2024年6月時点の事前予測で、実績ではありません。 ### 日本企業も出展していますか? 確認できたのは1社だけです。住友電気工業が2025年大会に619番小間でバナジウムレドックスフロー電池を出展しました。3大会を通じて日本企業の出展はこの1件のみで、運営委員会31名にも日本所属はいません。日本語の参加・出展レポートも存在しません。 ### 出展費用の補助を受けられる制度はありますか? この会議向けの公的な枠は確認できていません。都内中小企業であれば東京都中小企業振興公社の展示会出展助成事業が海外展示会にも使え、助成限度額150万円、助成対象経費の3分の2以内です。ただし同事業は申請に出展小間料の計上を求めており、ブースを取らずに聴講と発表だけで参加する場合は、そもそも申請の対象になりません。登録料と渡航費は自己負担として見積もってください。 ### DISTRIBUTECHとどちらに出展すべきですか? 北米配電市場で数を集めたい場合はDISTRIBUTECHです。Grid Edgeは4日間の会期中に展示フロアが開くのが約11時間30分だけで、来場者2,000人想定の場です。会いたい電力会社の技術者が具体的に決まっている場合に限り、Grid Edgeが有利になります。 ### 展示フロアは何時間開いていますか? 4日間の会期で合計約11時間30分です。水曜10:00〜17:00と木曜10:00〜14:30のみで、月曜と火曜はフロア自体が開きません。主催者は昼食、ポスターセッション、スタートアップピッチをフロア内に移して人の流れを作っています。 ### 日本からソルトレイクシティへはどう行きますか? 直行便はありません。ロサンゼルス、ポートランド、サンフランシスコ、ホノルルのいずれかで乗り継ぎます。総所要時間は乗り継ぎ待ちを除いて11時間12分〜25時間31分です。空港から会場まではTRAXグリーンラインで20〜24分、片道$2.50です。