# Black Hat登壇応募:BriefingsとArsenalの提出物・審査の違い URL:https://www.withexpa.ai/conf/2027/black-hat-usa/cfp 開催:Black Hat USA(ラスベガス) 完全ガイド:https://www.withexpa.ai/conf/2027/black-hat-usa 最終更新:2026-09-11 Black Hatの登壇枠は2つあり、応募先も提出物も審査基準も別です。Briefingsは査読付きの研究発表で、独立したReview Boardが研究を見ます。Arsenalはオープンソースツールのデモで、審査対象はコードと英語のドキュメントです。2026年のUSAでは締切も別で、Briefingsが1月27日〜3月20日、Arsenalが1月16日〜3月16日でした。渡航費が出るのはBriefingsだけです。イベント全体の位置づけは[Black Hat USA 2027完全ガイド](/conf/2027/black-hat-usa)にあります。 ![青空の下、ラスベガス大通りの交差点越しに見える金色のMandalay Bayの2棟のタワーとヤシの木](https://www.withexpa.ai/conf/2027/black-hat-usa/mandalay-bay.jpg) ## 2つの窓口は、何を審査するかが違う 以下は2026年のUSAの実績です。2027年向けの募集はまだ開いていません。 | 項目 | Briefings | Arsenal | | --- | --- | --- | | 審査対象 | 研究の新規性と技術的な妥当性 | ツール本体と公開ドキュメント | | 必須の提出物 | 抄録75〜300語、詳細なアウトライン、英語登壇の動画 | 公開リポジトリへのリンク、英語3ページ以上のドキュメント | | 発表の形 | 単独のセッション。申込時に30分か40分を選択 | Business Hall内のデモ。両日在席が条件 | | 登壇者数 | 最大2名。3人目以降はcontributor扱い | 記載なし | | 2026年USAの募集 | 1月27日〜3月20日 | 1月16日〜3月16日(延長後) | | 採否の通知 | 5月22日まで | 4月15日 | | 謝礼・渡航費 | 謝礼$1,000、国際線最大$1,500、宿泊3泊 | なし | | 付与されるパス | 登壇者ごとにBriefings Pass 1枚 | Briefings/Business Hallパス1枚 | 分岐は公式資料が決めてくれます。New Toolsの欄に、**ツール中心の発表はArsenalへ出すよう明記**されているからです。脆弱性や攻撃手法そのものが成果ならBriefings、動くツールが成果ならArsenalです。 ## Briefingsの提出フォームは、何を書かせるか USA 2026の提出準備資料は公開されており、審査で見られる項目が入力欄の名前として並んでいます。 - **Session Title**。 6〜10語が目安で、ダブルクォートとアンパサンドは受け付けません。 - **Format**。 30分か40分を選びます。採否には影響せず、最終的な長さは主催者が調整します。 - **Abstract**。 75〜300語で、問題、アプローチ、主要な発見、意義を述べます。採択されるとこの文章がそのまま公開されます。 - **Presentation Outline**。 主要トピック、小項目、結果、時間配分まで書く欄です。公式資料はここを「a common point of failure」と名指しし、詳しく書くほど提案は強くなるとしています。 - **Problem Statement と Audience Takeaways**。 解く問題と、聴衆が持ち帰る実行可能な3点を挙げます。 - **Research Novelty**。 先行研究との違いと、その前進がなぜ重要かを書きます。 - **Prior Release と Plans to Publish Elsewhere**。 過去の発表と、他所で先に公開する予定を申告します。新規部分の割合まで求められます。 - **New Vulnerabilities と Disclosure Status**。 新しい脆弱性なら、ベンダーへの通知日、現在の状況、パッチの有無を書きます。資料は協調的開示を強く支持すると明記しています。 - **Video Sample**。 過去の英語登壇の動画を出します。なければ研究の核心を説明する2〜3分の技術動画で代替できます。 - **Company/Employer Affiliation**。 勤務先が関連製品を持つ場合、ベンダー中立性をどう保つか説明させられます。 制限も明快です。1人が出せるのは5件まで、同じ内容を複数トラックに投稿すると失格、添付は.txtのみ、そして**LLMが生成した文章は認められません**。使ってよいのは著者が書いた文章の校正と、先行研究の調査補助までです。日本語で考えて英語に直す作業をどこまで機械に任せるか、ここに線があります。 即時公開に同意すると、2026年は4月7日から題名と抄録が公開される場合がありました。広報や特許の都合があるなら「No」を選びます。 ## Arsenalはコードとドキュメントで決まる Arsenalが見るのは、研究の書き方ではなくツールの状態です。オープンソースであること、リポジトリへのリンクを出すこと、そして**英語のドキュメントが3ページ以上**あることが求められます。有料製品の売り込みは一切禁止です。 コードが未公開でも、審査員が動作を確認できるリンクを示せば応募できます。採択されると会期の両日在席が条件になり、デモは講演ではなく会話です。NI&Cの山本仁一氏は2024年の参加報告で、Arsenalを「セキュリティアナリスト向けの武器庫(Arsenal)」と訳しました。 見返りはBriefings/Business Hallパス1枚だけで、渡航も宿泊も自己負担です。会社が「登壇するなら出張として認める」運用であれば、Arsenalは通しやすい枠です。 ## 採択されると、いくら支払われるか 登壇者特典は地域ごとに公開されています。 | 項目 | Black Hat USA | Asia・Europe | SecTor | | --- | --- | --- | --- | | Briefings Pass | 登壇者ごとに1枚(最大2名) | 同左 | 同左 | | 謝礼 | 1セッションにつき1名$1,000 | 1名$1,000 | 1名$500 | | 航空券 | 国内最大$1,000、国際最大$1,500 | 国内$1,000、国際$1,300 | 最大$900 | | 宿泊 | 1セッションにつき1名3泊 | 同左 | 同左 | | スピーカーコーチング | あり | あり | 記載なし | 日本から行く場合、**この特典で全額は賄えません**。国際線の上限$1,500に対し、8月のラスベガス行きは経由便で$1,800前後です。宿泊も3泊、会期は6日間です。2名で登壇しても謝礼と渡航費は1名分だけで、2人目はパスだけです。 それでも渡航費のおよそ8割と3泊分は出ます。自費で来ている聴衆が2万人いることを思えば、費用の構造は有利です。パスを買って行く総額は[参加費と出張予算](/conf/2027/black-hat-usa/pass-cost)にあります。 ## 日本から出すなら、いつ動き出せばいいか USAのCFPは1月下旬に開き、3月中旬に閉じます。つまり**8月に登壇するには、3月の時点で成果が形になっている**必要があります。準備期間は会期までの日数ではなく、締切までの日数で数えてください。 時間感覚は、FFRI Securityの松尾和輝氏の登壇報告が具体的です。研究は修士課程で生まれ、2023年8月から12月で一度止まりました。 > 本研究は、私が修士 2 年の 2023 年 8 月 ~ 2023 年 12 月の間で取り組んでいたのですが、実現できそうになく一度中断しました。 再開が2024年12月、投稿が2025年3月下旬、登壇が2025年8月です。再開から壇上まで約8か月、最初のアイデアからは2年でした。松尾氏は2024年と2025年の2年連続で登壇しています。 窓口は3つ目もあります。Call for Trainingsという別の募集で、講師として4日間のコースを持つ道です。IIJの鈴木博志氏は2018年にこの枠で日本人初のTraining講師に選ばれ、コースには33名が集まりました。インシデント対応やフォレンジックのように国内で実務経験が厚い領域なら、論文より現実的な入口です。 Asiaを先に狙う手もあります。Asia 2027のCFPは2026年9月4日に開き、10月20日締切、通知は2027年1月5日までです。Briefingsは2027年3月2日〜3日、会場はMarina Bay Sandsになります。NTTデータの社員論文はBlack Hat Asia 2026のBriefingsに採択されています。 採択率の数字はここでは出しません。公式のCall for Briefingsページにも提出準備資料にも記載がないためです。二次情報で社内を説得すると、根拠を聞かれたときに崩れます。 ## 率直な判断 **Briefingsに出すべき組織**。 未公表の脆弱性、新しい攻撃手法、既存の防御を破る実証を持つ研究部門です。スポンサー枠から登壇する経路がないので、営業予算で米国大手に負けていても研究の中身で並べます。準備はPresentation Outlineに時間を使ってください。公式資料が落ちやすい欄と名指ししているのはここだけです。 **Arsenalのほうが向く組織**。 すでにGitHubでツールを公開し、英語のドキュメントを書いている開発者です。論文の体裁を整える手間がなく、審査対象は動くコードです。ただしパス1枚しか出ないので、渡航費を会社が持つ合意を先に取ってください。 **今年は見送るべき組織**。 研究テーマが固まっていない、あるいは公開済みの内容を再構成しようとしている場合です。Prior Releaseの欄で新規部分の割合を申告させられるので、焼き直しは隠せません。Asia 2027の10月20日締切に間に合わせるか、翌年のUSAに1年かけるほうが確実です。 **登壇そのものを目的にしないでください**。 松尾氏が研究を一度中断したのは、原理的に無理だと判断しかけたからでした。通す価値のある研究があるかどうかが先で、CFPの締切はそのあとの話です。 ## よくあるご質問 ### Black Hatの登壇応募はいつ受け付けていますか? USAは例年1月下旬から3月中旬です。2026年はBriefingsが1月27日から3月20日まで、Arsenalが1月16日から3月16日までで、通知はそれぞれ5月22日までと4月15日でした。2027年のUSA向け募集は2026年9月11日時点でまだ開いていません。 ### BriefingsとArsenalはどちらに出すべきですか? オープンソースツールを公開しているならArsenalです。公式の提出準備資料は、ツール中心の発表はArsenalへ回すよう明記しています。新しい脆弱性や攻撃手法そのものが成果であればBriefingsです。両方の性質を持つ研究は、論文をBriefings、実装をArsenalに分けて出す形になります。 ### 採択されると渡航費は出ますか? Briefingsは出ます。1セッションにつき1名を対象に、国際線で最大$1,500、宿泊3泊、謝礼$1,000が公式に提示されています。登壇者ごとにBriefings Passが1枚付き、上限は2名です。Arsenalはパス1枚のみで、渡航費と宿泊費は自己負担です。 ### Briefingsの応募で落ちやすいのはどこですか? 公式の提出準備資料はPresentation Outlineを「a common point of failure」と名指ししています。主要トピック、小項目、結果、時間配分まで書くよう求められます。抄録は75〜300語で、採択されればそのまま公開されます。LLMが生成した文章は認められていません。 ### Black Hat Asiaのほうが応募しやすいですか? 日程が早く、募集も先に開きます。Asia 2027のCFPは2026年9月4日に開き、10月20日締切、通知は2027年1月5日までです。NTTデータの社員論文はBlack Hat Asia 2026のBriefingsに採択されています。採択率は公表されていないため、難易度の比較はできません。